すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

転職するなら,この商會へ

2012年09月10日 | 読書
 愉快な本である。

 自分の頬がこんなに緩みっぱなしなのは珍しい。
 今年初の五つ星ランク。自分の好みにぴったりはまった。

 『ないもの,あります』(クラフト・エヴィング商會  ちくま文庫)

 こんなふうに誘われる。

 よく耳にするけれど,一度としてその現物を見たことがない。そういうものがこの世にあります。たとえば<転ばぬ先の杖>。あるいは<堪忍袋の緒>

 もうだいたい想像がつくと思うが,要するに「比喩として使われる物体あるいは自然物などを,販売すると仮定して,その使用法,使用上の注意もしくは心得などを,真面目に?語った本」である。

 なんだかこの言い方は,「身も蓋もない話」だなあと思いつつ,この商會では,そんな話の載った本は売っていなかった。

 私が特に気に入ったのは,商品番号第3番の「左うちわ」。第7番の「地獄耳」。

 ああそれから三本セットとなっている「相槌」なんかも重宝だなと思った。

 「予備」として販売されている,第9番「自分を上げる棚」を買いに行きたいのだけれど,ここに書いてある通りにたしなめられるのだろうな。

 購入される前に,現在お持ちになっている,生まれもっての「棚」の大きさや,材質,使用頻度,使用年数,さらには使用理由などを,よく確認して下さい。

 はいっ,とすごすごと帰宅するしかないのである。

 でも,ああいい店だったなあとニンマリしてしまう。

 できれば,この商會で仕事をしたかった。