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猛吹雪に思い浮かんでくる顔

2014年01月30日 | 雑記帳
 あれは確か1月30日。山間部の小中併設の学校勤務で、冬期間は教員住宅に住んでいた頃だ。その日、朝はさほどではなかったが、昼過ぎから暴風雪が強まり、車通勤の方々は揃って退勤した方がいいのか、それとも学校に泊まるべきか、悩んでいた。私はわずか百Mほどの坂道を歩いて下るのに、15分かかった。


 結局その日他の職員がどうしたのか、もはや記憶にない。しかし、入口が山向きにある住宅の中へ、さんざん難儀して入ったことは覚えている。たぶん屋根の縁につかまりながら滑り込むようにしただろう。その時ばかりの印象ではないが、部屋の強い冷気と雪に覆われた薄暗さの感覚は、目の奥にしっかり蘇る。



 三十年前当時であっても、地域の除雪体制は結構よかったのだと思う。出勤時の雪による遅れなどはあまり記憶がない。それでも夏場の車通勤を止め、三年間住宅に入ったことは、今となっては得難い経験だ。住宅で一緒に暮らした教頭先生、朝夕の食事を世話していただいた隣家のご主人…今はもう鬼籍に入られた。


 本当に多くのことを教えられた。数え上げられないのは承知の上で、それでも今少し振り返ってみたい気がするのは、当時のそのお二人の年齢を越えたからかもしれない。ちょっと格好つけた言い方をすれば、自分も背中で語れるかといったニュアンスである。歩んだ道に差がありすぎるから、無理な話だけれど。



 自分が影響を受けた人を思い浮かべるとき、イメージできるのはやはり眼差し、声色や語気…そんな気がする。もちろん個々の特徴は歩き方や服装などにも表れるが、共通できるのはやはり顔から発するものが中心か。外敵に揺るがない表情だ。きっとあの1月30日の猛吹雪の中でも、二人は微笑んでいた気がする。