すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

肌触り,息遣い,ごしごし磨く

2014年01月08日 | 読書
 「2014読了」4冊目 ★★★

 『ぽてんしゃる。』(糸井重里  東京糸井重里事務所)
  

 2007年から一冊ずつ発刊されている「小さいことば」シリーズ。昨年の分である。
 夏には手に入れていたのだが、ベッドの横に置いたままにしてあり、たまにぺらっとめくってみるだけだった。

 年が改まり、じっくりと手にとってみた。

 2013年版には当然その前年に書いたことが多く、糸井にとっておそらくかなり重要な「吉本隆明」について、何ページかが割かれている。

 二人のつながりについてはファンであれば、誰しも知っているわけだが、その深さを量るのはなかなか難しい。

 しかし糸井が書いたこの文章に驚くとともに、ある肌触りや息遣いが伝わってくるなあと思ったのだった。

 ぼくは、何年も前から
 吉本さんがこの世から亡くなることを惜しまないようにしようと、
 じぶんを慣らしていました。




 たぶん、見つめつづけ、寄り添いつづけ、求めつづけてきた者の独白だ。

 そして、この子どものような、おとなのような表現の仕方いやあり様といったらいいか、そんなところは、ほとんど詩集なのだと思う。

 メッセージは、対象の存在するありかを強く示していて、また吉本隆明を読んでみようと感じさせる。
 「戦争」のことも「原発」のことも、どこでつながっているか、新しい読みとりになるような気もする。



 さて、このシリーズは、とことん自分の理性や感情に向きあって、観念的にならず具体的であろうとしながら、世の中に放り出されている言葉を布でごしごし磨いていくような、そんな私の大好きな糸井の姿が見えるような構成になっている。

 今回の一冊では、かなり個人的な好みで、面白いなと思ったのはこの一行。

 汚れちまった悲しみにとは言わないよ。おとうさんだから。

 どんなふうに解釈すればいいのか、ちょっと迷っている。おとうさんだから。