すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

登れる山、登れない山

2016年12月17日 | 読書
Volume31

 「世の中には、登れる山と登れない山があることがわからぬのか。」

 久しぶりにB面っぽいキニナルキ。

 これは、かの漫画『美味しんぼ』94集に収録されている「医食同源対決!!」で、私の尊敬する(笑)海原雄山が、究極のメニューの完成を目指すと広言した山岡に対して言い放った言葉である。

 これは、ごく単純に言えば「目標」と「志向」の違いを指していると言っていいかもしれない。

 そこで思い出したのが、NHKBSプレミアムで連続放送され、明日で最終回を迎える『山女日記』だ。



 湊かなえの原作だが、かなり脚色された形で描かれている。
 ドラマ用の副題として「女たちは頂を目指して」がつけられているが、今日のキニナルキと重ね合わせると、こんな問いかけとなろう。

 「頂」って何ですか。

 ドラマは、それぞれ何かを背負った者たちが登山を共にするなかで、ある時は苦悶し、ある時は激励され、次第に何かに気づく設定となっている。
 それは「登れる山」の頂を目指しつつ、「登れない山」道を歩く自分を強く意識することと言っていいだろう。

 深い精神性を孕む物事を目指す者にとって、完成や解決という頂は、実は歩いても歩いてもたどり着くことができない。

 それは、自らの心にイメージし、前進するエネルギーに昇華させるために、いつまでも遠くに臨む峰にある。