すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

永遠解きたい君は、永遠説く

2019年02月03日 | 読書
 久しぶりに歌集を買った。

2019読了12
 『えーえんとくちから』(笹井宏之 ちくま文庫)


 この書名を一目見て、頭の中で変換したのは「永遠と口から」だった。
 しかし、この書名が使われているのは、この歌である。

 えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい


 「永遠解く力」だったのか。

 解説を書いている穂村弘は、最初「口から飛び出した泣き声とも見えた」と記す。つまり「エーエンと口から」だろう。

 ひらがな表記の意味付けに重層的なイメージがあるとすれば、穂村の見え方も自分の読み方も、まんざら重ならないわけではない。


 ちょっと難しく感じた。ちょうどこの歌が示すイメージか。

 「ねえ、気づいたら暗喩ばかりの中庭でなわとびをとびつづけているの」

 ただ、和歌や大御所的な歌人の作品よりは、親しめた気がする。
 イメージを浮かべて遊ぼうと誘い掛けてくるような歌もいくつかあった。

 それは、若い頃の実践として「伏字クッキング」と名付けて詩の授業構想に取り組んだ時を思い出させるようだった。


 少しだけ、拾い上げれば

 ①ひかりふる音楽室でシンバルを磨いて眠る【    】

 ②【     】のひとがゆっくりと砲丸投げの姿勢にはいる

 ③こころにも手や足がありねむるまえしずかに【   】をする



 君なら【    】にどんな言葉を入れるか。

 これはクイズではなくて、一つの創作活動になるのは間違いない。
 中学生なら文句なく面白いだろう。
 思い浮かんだ言葉でその世界を語り合う。
 その後に歌人の言葉と出逢わせ、話を広げてみたい。


 さて、作者は二十代で夭折した歌人。
 穂村が語るように、病床にある「永遠」を解きたかったに違いない。

 しかし読者からみれば、そのひとつひとつの歌が「永遠」を示しているように思える。

 その意味では「永遠説く力」に溢れている。


 ちなみに、伏字は ①一寸法師②美しい名前③屈伸運動