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桜と絵本と豆乳と

みんな悩んで、つながればいい

2019年02月21日 | 読書
 「」と「」はつくりが同じでその部分は頭骨(また脳味噌そのもの)を表している。そうすると、それに「心」を添えて「悩」としたのは、結局人がそもそも思い悩む存在であると示している。悩みがない人を羨ましく思ったりするが、もし本当にゼロだったら怖い…あれ、そう想うのは何故か。悩んでしまう。


2019読了19
 『悩みいろいろ』(金子 勝  岩波新書)



 雑誌やSNSで著者の存在は知っていたが、本は読んだことがなかった。経済書は苦手なので、柔らかそうなもの…と「人生に効く物語50」という副題に惹かれて注文したら、なんといわゆる人生相談の類であった。しかしそこは「闘う経済学者」であり一味違った展開になっている。一つのブックガイドでもあった。


 「孤立と不安」「予想と後悔」といった章付けはあるが、相談内容は似通っていて、環境の異なる様々な人たちが今を生きる苦悩を曝け出している。十代から九十過ぎまで相談が寄せられ、高齢者の方が多い。いくつになっても個の悩みが尽きないのは自然か。当然とはいえ、ある面で社会が作りだした悩みだと気づく。


 情報化、グローバル化が進行している裏面で、現代社会は個々の「つながり」が断ち切られるような様相が濃くなっている。政治の方向性もあるし、個別消費にどっぷり浸かったツケがきているようにも思う。家族、職場等の人間関係に限らず自分の行く末を想う時、あらゆる場で語られるのは「孤立の怖れ」である。


 著者は処方箋を渡す形でなく、悩みに沿った形で小説などを紹介する。また落語も多い。やはり自力解決と俯瞰的な思考の奨めがあるように思った。著者の結論に共通項があるとすれば「自分がしてきたことを否定せず、もう一つ別の視点を持ち合わせる」「次の世代へ向けて自分が何をできるかを問う」ではないか。