すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

その人へも「おいしい」と伝えたい

2019年02月02日 | 雑記帳
 連ドラ『まんぷく』で、開発しようとしているラーメンの名前を「即席ラーメン」と名付けた時、「即席」という言葉がずいぶん懐かしく思えた。「インスタント」という語が一般化しているために、あまり使う人はいないが意味自体は浸透しているだろう。「その場ですぐにすること」「てまのかからないこと」(広辞苑)


 ただ「即席」が有効で価値を持つためには、言うなればそれとは真逆の、手間のかかる、地道な努力に支えられることは誰しも想像できる。ドラマのモデルである安藤百福のラーメンづくりは、まさに象徴的と言える。三年前の六月に横浜のミュージアムを訪れた時のことを「『食足世平』を貫いた人」と残してあった。


 今週は盛んにあの研究小屋「即席ラーメン研究所」で頑張っている場面が続いていた。実際にその家族が過ごした大阪池田にも、横浜と同様「安藤百福発明記念館」があるようだ。現物の再現で伝えたい精神は「たとえ特別な設備がなくてもアイデアがあれば、ありふれた道具だけで世界的な発明が生み出せる」ことだ。


 今、様々な起業者たちが口にする「創造的思考・クリエイティブシンキング」は、穿った見方をすれば経済的な成功が最優先のように感じる。しかし安藤は違っていた。求めていたのは人々の幸せであり、だから諦めずに思考を駆り立てていく。楽しい、リラックスした雰囲気で生まれそうな思考だが、最後は執念か。


 昨日書いたことと照らし合わせれば、インスタント食品は「作り手の見えない食品」に該当するだろう。しかし、即席での美味しさを実現しようとした開発者、研究者は安藤を初め、数多く存在する。時々はそのことに思いを馳せて「おいしい」と呟いてもいい。ただ、そうであっても一人で食するのは少し寂しいなあ。