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サイコパスはそこに姿を…

2019年02月06日 | 読書
 『相棒』を初め結構刑事ドラマ、警察モノが好きである。最近とは言えないが猟奇的殺人などを取り上げることも目立つ。犯罪者の異常人格についてサイコパスという用語は使われていたか定かでない。検索するとアニメ作品として「PSYCHO-PASS」があった。聞いたことはあるが、まだ馴染みはないと言えるか。


2019読了13
 『サイコパス』(中野信子  文春新書)


 読もうと思ったきっかけは、著者の対談記事を読んだからだ。その中に「(サイコパスが)大企業のCEOとか政治家に向いているという言い方もできる」という箇所があり、俄かに興味が湧いた。逮捕拘留されている某大企業の元トップの顔や誰とは言わぬが有名政治家の顔が浮かび、その可能性に少し心が揺れた。


 サイコパスには適切な訳語がなく、精神医学としての正式用語でもなく「反社会性パーソナリティ障害」という診断基準なのだという。定義づけることは難しいが、著者の文章において「サイコパスは尊大で、自己愛と欺瞞に満ちた対人関係を築き、共感的な感情が欠落し、衝動的で反社会的な存在」とまとめられる。


 「他人の痛みを感じない」ことが端的な特徴で、100人に1人の割合で存在する。特に関心を持ったのは「勝ち組サイコパス」という言葉だ。つまりサイコパスの中には、古くは部族から追放されたりした者や犯罪者になったりする者もいるが、そうでなく社会の成功者として支配する側に立つ者も珍しくないのである。


 堂々とふるまい果敢に行動する姿は人々に魅力的に映る。その惹きつける力によって他者を巧みに利用する。しかし意図的に隠された内面は「反省できない」「罰をおそれない」。その危険性を知らなければ、犯罪や抑圧から逃れられなくなるだろう。有名な人物に限らず、身の周りにも存在することを忘れてはならない。


 サイコパスの思考や行動は「本人の意思や努力で後天的に変えていくことは難しい」とされている。とすれば、社会がどう向き合うかが問題だ。研究はまだ途上であり、犯罪とつながる危険性は絶えず抱える。しかし、著者は機械的な排除の論理を危険視する。人種間の差異より困難であっても、共存を模索せねばならない。