すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

晩夏、文庫本で愉悦

2020年08月26日 | 読書
 8月下旬になって日中の暑さが「暑中」よりも上がっている。さすがに夜には虫の鳴き声が聞こえ、熱帯夜ではなくなってきていても、「晩夏」の雰囲気とは言えないような…。しかし先週から今週にかけては、ネットや古本屋で手に入れた文庫本を、朝の寝床で、また風呂につかりながら、三冊読了した。愉悦な時だ。


 『日本語 表と裏』(森本哲郎  新潮文庫)

 これは名著だと思う。私たちがふだんよく使う日常の言葉を取り上げて、そこに潜む日本人の特質、またこの国の歴史などについて説いている。昭和63年発刊(単行本は60年)だが、今読んでも古さを全然感じない。ということは30年以上経っても、不変なことがいかに多いかという証左だ。もう一度めくり直して、いくつかここにメモしておくつもりだ。


 『ちいさい旅 みーつけた』(俵万智  集英社be文庫)

 週刊誌のグラビア連載のセレクトらしい。北海道から沖縄までの訪問地の様子を、平地勲という写真家のショットとともに、俵の気取らないリポと結びの一首で構成されている。少し出歩けない日々が続いているので、「旅情」という感覚を渇望していることに気づく。ああ、日本中に行っていない場所、行くべき場所はまだまだ残っていたと思わされる。ちょっと悔しい。




 『100万分の1回のねこ』(江國香織、他  講談社文庫)

 絵本つながりで手にした。作家佐野洋子の追悼アンソロジー、小説家や詩人が短編を並べている。いわば『100万回生きたねこ』の読書感想創作集ということなのだろう。初読みの作家もいるが、様々な切り口で描くものだなと改めて感心する。一冊の本から受け取るインスピレーションの膨らませ方というのは無限大だ。読者側にある芯をスパークさせる作品が、名作と呼ばれるのか。