第5 その他
1 基礎疾患を有する者についての考え方
器質的心疾患(先天性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎等)
を有する場合についても、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至ると
は考えられない場合であって、業務による明らかな過重負荷によって自然経過を
超えて著しく重篤な状態に至ったと認められる場合には、業務と発症との関連が
認められるものであること。
ここで、「著しく重篤な状態に至った」とは、対象疾病を発症したことをいう。
2 対象疾病以外の疾病の取扱い
(1) 動脈の閉塞又は解離
対象疾病以外の体循環系の各動脈の閉塞又は解離については、発生原因が
様々であるが、前記第1の基本的考え方により業務起因性の判断ができる場合
もあることから、これらの疾病については、基礎疾患の状況や業務の過重性等
を個別に検討し、対象疾病と同様の経過で発症し、業務が相対的に有力な原因
であると判断できる場合には、労働基準法施行規則別表第1の2第11号の「そ
の他業務に起因することの明らかな疾病」として取り扱うこと。
(2) 肺塞栓症
肺塞栓症やその原因となる深部静脈血栓症については、動脈硬化等を基礎と
する対象疾病とは発症機序が異なることから、本認定基準の対象疾病としてい
ない。
肺塞栓症等については、業務による座位等の状態及びその継続の程度等が、
深部静脈における血栓形成の有力な要因であったといえる場合に、労働基準法
施行規則別表第1の2第3号5の「その他身体に過度の負担のかかる作業態様
の業務に起因することの明らかな疾病」として取り扱うこと。
第6 複数業務要因災害
労働者災害補償保険法第7条第1項第2号に定める複数業務要因災害による
脳・心臓疾患に関しては、本認定基準における過重性の評価に係る「業務」を「二
以上の事業の業務」と、また、「業務起因性」を「二以上の事業の業務起因性」
と解した上で、本認定基準に基づき、認定要件を満たすか否かを判断する。
その上で、前記第4の2ないし4に関し以下に規定した部分については、これ
により判断すること。
1 二以上の事業の業務による「長期間の過重業務」及び「短期間の過重業務」の判断
前記第4の2の「長期間の過重業務」及び同3の「短期間の過重業務」に関し、
業務の過重性の検討に当たっては、異なる事業における労働時間を通算して評価
する。また、労働時間以外の負荷要因については、異なる事業における負荷を合
わせて評価する。
2 二以上の事業の業務による「異常な出来事」の判断
前記第4の4の「異常な出来事」に関し、これが認められる場合には、一の事
業における業務災害に該当すると考えられることから、一般的には、異なる事業
における負荷を合わせて評価することはないものと考えられる。
――コメント――
「基礎疾患を有する者についての考え方」及び「対象疾病以外の疾病の取扱い」に
ついて明確化されました。
なお、「基礎疾患を有する者についての考え方」については、平成7年2月1日付け
基発第38号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定
基準について」において示された考え方と同一である。
「複数業務要因災害」の記載内容については、実質的な変更はありません。