3週間、ニホンミツバチの様子を見ることができなかった。
梅雨とはいうものの雨ばかりだったのが、猛暑日の続く夏になっていた。
着いてすぐに5群のミツバチの出入りを確認すると、一番古い群の巣門に蜂の姿がない。
確認してみると、巣箱の中はもぬけの殻というより、巣虫でびっしり。
巣虫というのは、ツヅリガという蛾の幼虫のことで、ニホンミツバチを飼う者にとっての憎っくき仇。
何が悪かったのかと、巣箱の下を見て私の大きな失敗に気づいた。
自分の病気にかまけて、暑くなる前に通風孔の蓋を外しておくべきだったのに付けっ放しにしていた。
暑さに体力消耗した上、巣虫の攻撃にさらされて、逃去を決断したに違いない。
ノゼマ病にかかっているかもしれない、黄色い糞も巣の周りにたくさん認められたから、群として弱り女王が死んでしまったのかも。
蜜は一滴も残っていなかったから、しっかり持ち出して、新天地を求めて放浪の旅に出たのかも。
いやいやそんなことはないだろう、しっかり次の営巣地を決めて、計画的に一気に逃去したはず。
わずか3週間で家の周りは草ぼうぼうになっていて、ニホンミツバチも1群逃去という憂き目に遭っている。
病弱な年寄りには大打撃ではあるけれど、そうは言っていられない。
病気を苦にしない人だと呆れられているメゲない男なのだから。
巣虫は細長い小さな尺取り虫程度のサイズしか見たことはなかったのだけれど、巣箱を分解してみると蜂の子のようなビッグサイズがゴロゴロいた。
ニホンミツバチの蜜蝋で作られた巣を食うやつなので、巣虫は食えるという文章を読んだことがある。
蜂の子のような見てくれと白さと、何と言ってもこの量だから食わない手はないだろうとは思う。
栗から出て来たクリシギゾウムシの幼虫も食った私なのだから、と思ったけれど、仇気分が強くても喰ひ殺すという気にはなれなかった。
食材として栄養価も高いはずだけれど、地面にぶちまけてアリの餌になれとアリが寄ってたかって攻撃するのをしばらく観察して溜飲を下げる。
後々、残念なことをしたなと、たぶん悔やむはず。