
大阪へ出かけていた娘を迎えに行き、電車の到着時間より5分あまり早く駅に着いた。
タクシー降り場に停まって待つのは具合悪いので通り過ぎようとしたけれど、信号が赤になり、中途半端な位置に一時停止した。
そこに着く直前に、迎え待ち様子の若い娘(こ)がタクシー降り場に立っているのが見えた。
一瞬、ひと電車早いのに乗って娘が待っているのかと思って車を近づけたこともあって中途半端な位置に一時停止となった。
ところが、背格好が違うなと確認したのに、その若い娘が私の車に何のためらいもなく近づいてきて助手席のドアを開けた。
そうして私を確認するでもなく、乗り込もうとした。
アゴマスクの顔を彼女に向けて「間違ってない?」と声を掛けた。
そこでようやくマスクを着けた彼女は私をしっかり見たけれど、『どうして?』というような面持ち(マスクはしていても分かる)で、「アカネです」と言った。
迎えに来た私の娘ではないし、娘はアカネじゃないし、私は『違う違う』というジェスチャーの手を横に振った。
そうしたら、やっとドアを閉めてくれて、信号も青になり、事なきを得て通り過ぎ、路地に車を入れて、電車の到着時間を待った。
到着時間をわずかに過ぎてから駅前に行くと、さきほどの見知らぬ若い娘は居なくなっていて、私の娘は私の娘の姿で現れた。
娘が乗り込んで、帰る道々、寸前の不可解な出来事を話して聞かせた。
そうしたら、時間契約でデートするヒトではないかと、思いがけないことを言う。
『そうか、あのとき私が、自分の娘かどうかの確認動作をしたのが間違いだったのか』
私が娘と思い込み、その若い娘が乗り込み、そのまま発車してしまったら、どうなったのか。
「え?」「はい?」「え~?」「え?」というようなことになってから、年末ジャンボ宝くじのコマーシャルみたいに「あなた・・誰!?」ということになったのか。
それとも、瞬時に状況を理解(誤解)して、「アカネさん!?よろしく」などと言っていたら、どうなったのか。
クリスマス・イブにハプニングの贈り物。