和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

語りだせば切りがなく。

2017-02-28 | 本棚並べ
司馬遼太郎著「人間の集団について」(中公文庫)を
本棚から取り出してくる。

この本を、私は読んでいなかったと思っていたのですが、
黄色い線を引いた箇所があるので、どうも読んだらしい(笑)。
どうせパラパラ読みだったのでしょう。

その線引きの一箇所を引用。

「人間の集団というのは、多くの場合、
敵によって成立している。敵を持ってしまった集団というのは、
じつは敵によって集団の理解と感情を作らされてゆくために、
『同じ民族じゃないか』という勝海舟的な発想は、
通用しなくなるものらしい。」(p150)


きれいに忘れていたので、
腰を据えて読んでいなかったのでしょう。

この中公文庫の解説は、桑原武夫。
その解説の最後を引用。


「私が感想を語り出せば切りがなく、
解説として失礼なこととなるであろう。
しかし、それほどこの本の快い知的刺激力はつよいのである。
私はつねづね日本に政治史や政治学説史の研究は盛んだが、
現実の政治評論は乏しいのではないかと思っていたが、
この名著がいまに至るまで一度も正面から取り上げて
評論されたことがないのを見て、その感をいよいよ深くする。
『坂の上の雲』について日本近代史の専門家が批評を回避
したのと同じ特色的な現象である。
『人間の集団について』は、著者が30年来の憧れの地を訪れて
記した私的感想であって、このうえなく面白い本と言うのにつきるが、
政治あるいは社会に関する学問に志す人間にとっては、
学術用語が出てこない自由型だけに、なんとも手ごわい本であるに違いない。
著者がさりげない手つきであちこちに仕掛けた、
人間、歴史、国家、文明などの基本問題を重く受けとめて、
批評、展開するのが生きた学問ということではなかろうか。
楽しく読めるこの本は、そうした扱いにも十分耐えるものである。」


うん。「なんとも手ごわい本」を
私としたことが、軽率に読んで、
そのまま本棚に寝せたらしい。
その眠りをさますタイミング。
いわでもがなですが、
私は、というと、
本を寝かしつけるまえに、
私が先に寝てしまいます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする