和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

困ったな呆れたな。

2020-01-04 | テレビ
昨年後半、私はユーチューブにはまっておりました。
虎の門ニュース・文化人放送局・怒れるスリーメン・・・。
はい、篠原常一郎・石田温・・・。

この面白さって、いったい何だろうと思うわけです。
ということで、本棚から取り出したのは
「新・わたしの知的生産の技術」(講談社・昭和57年)
そのはじまりは、桑原武夫氏の文からでした。
題は「独創は情報の交錯から生まれる」。
適宜引用していきます。

「知的生産ということを考えてみます。・・・・
生産とすれば、生産のためのネタ、材料が必要です。
知的生産の材料とは何でしょうか。
それはいうまでもなく情報です。
情報を全然もたないで知的生産はできない。・・・・
日本の管理社会の中では情報の多くは
マスコミュニケーションによるものでしょう。」(p11)

以下に、これを書かれた当時の具体的な指摘があります。

「マスコミだけで情報が確実で十分かというとそうではない。
中国の華国鋒首相が日本に来た時、どの新聞も首相は
にこやかに笑みを浮かべて飛行機のタラップをおりて来た
と書いた。しかし、あの炯々(けいけい)として人を殺しかねない
鋭い眼付はなぜか書かれていない。なるほど、中国と大いに
仲良くしようとしう時期に、こう書いてはいかにもまずいかもしれない。
しかしこのことひとつをとってみてもマスコミは駄目で不十分ですね。
人間描写としては50点以下である。一般の人がマスコミから
与えられている情報は現実の50点以下であるということです。

もっと露骨な例でいえば、
田中角栄の金脈問題をどの新聞が書きましたか。
『文藝春秋』が書くまで、どの大新聞社も書こうとしなかった。
もちろん知っていたと思います。しかし、まず、
小資本のところにやらせておいて、見極めがついてから、
それに乗ろうという算段でしょう。
・・・NHK、資本の支配下にある民放もこういう情報は遠慮する。
新聞にもテレビにも載らないことがいっぱいある。」

はい。「新聞にもテレビにも載らないことがいっぱいある。」
ということを気づかせてくれたのが、ユーチューブでした。

「知的生産をしようとする場合、
特別の情報を持とうと努力しなければ
独創的な考えは出てきません。
他人(ひと)さまに聞いた話をくり返して
いるだけでは知的生産にはなりません。」

「知的生産ということは何らかのもつれあい、
あるいは矛盾からでなければ出てこないと思います。」
(~p13)

うん。あと一カ所引用させてください。

「言葉にだまされてはいけません。
いつでも言葉より現実を尊重するように
しなければ知的生産にはなりません。

例えば、ネール首相の生きていたころ、
日本の新聞はインドを『平和国家』といっていましたが、
これはおかしいのです。
国家予算の33パーセントも軍事費に使っている国を
平和国家というのは言葉の矛盾です。
軍事国家といわなければならない。ネールさんが
インドは平和国家だと宣伝するのは自由ですが、
それに外国人が乗ってしまうなら阿呆ですね。
阿呆は知的生産に適しません。

私は一ヶ月ほど、インドを歩いて
インドが平和国家ではないことを確認しました。
アジアで航空母艦を持っていたのはインドだけです。
そしてこれを活字にしたのは日本人では私が初めてです。

ネール首相が世界に向って他国への軍隊の駐留を
やめよと演説して大喝采を博したのですが、
この時インドはネパールとブータンに
軍隊を駐屯させていたはずです。
言葉だけを信用してはいけません。」(~p16)

たしか、これを読んだときには
だからといって『特別の情報を持とうと努力』
する方法までは気がつきませんでした。
相変わらず、テレビや新聞を読んでいたわけです。
それが、昨年ユーチューブを見るようになって
見方が変わりました(笑)。

せっかくなので、
桑原武夫氏の文の最後も引用しておきます。

「現実を正確にみること、
困ったな呆れたなと思うだけなく、
そこに問題を設定して、考えることによって
頭に血が流れ頭も良くなるわけです。
毎日、同じ問題を一回は考えること、
一つの問題をいつでも考えていると
頭の訓練になると言われた先生もおられます。」


コメント (2)
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