ネットの古本を注文するのですが、
この頃は、新刊同様の本を手にすることが多くなりました。
外山滋比古著「失敗談」(東京書籍・2013年)が、
きれいで帯付き200円。はい。外山氏の著作は好きなので、
手元になくって古本で安ければつい買います。
はい。私には好きな落語家の噺を聞いているような、
そんな気分を味わわせてくださる方なのでした。
ああ、これも以前聞いたことがあるなあ。
そんなことを思いながら、パラパラとめくる楽しみ。
同じ話を聞いているのに、またしても頷いてしまう。
はい。今回もありました。そんな箇所を引用します。
「つくづくよく忘れる。
書いたこともすぐ忘れる。
5分前に書いたことも忘れ、
思いつくと、新しい考えのように思ってまた書く。
くりかえすつもりはなくてくりかえしている。
そういう原稿を集めて、本にして出版したことがある。
それを意地の悪い匿名書評家がおもしろがってとり上げて、
ケチョンケチョンにやられた。
酔っ払いがクダをまいているみたい、
くだらぬことをくりかえして、読んでいると、
ハラが立つという痛快な書評である。・・・」
はい。それについて、すこし続けたあとに、
こうありました。
「記憶のいいひとは、年をとると、
頭がいっぱいになって、はたらかなくなる。
すくなくとも新しいことを考える力を失ってしまう。
頭のいい学者は40歳ぐらいで学者バカになることが多いのは、
忘却力が弱いからである。
あまり勉強しないで、しかも、どんどん忘れて頭の掃除をすれば、
40や50で半ボケになったりする心配はない。年をとるにつれて、
もの忘れが多くなるのは、自然が頭の老化を防いでくれている
ようなものだと考えると、人生はいつも新鮮である。」
はい。まったく勉強をしなかった私などは
『あまり勉強しないで』などと語られると、
これをきっかけにして、つい笑いだします。
まだ、つづきますので引用をつづけます。
「忘れっぽい人間は、若いときには、
まわりからバカにされるが、年をとると、
地力を発揮しはじめる。若いときには、
よけいな知識がじゃまして見えなかったことが、
見えてくる。新しい知識なんかいらない。
自分の頭で考えを生みだしたい。
ひとのこしらえたものを借りたり盗んで、
わがもの顔をするのは知的欺瞞ではないか、
とふそぶくことができる。」
はい。そうだそうだと『うそぶく』私がおります。
えい。最後まで引用しちゃいましょう。
「ひとのまねをするのは、記憶がよすぎるのである。
忘れっぽければ、まねるものがないから安心である。
労せずして、オリジナルになれる。
そう考えるのが忘却型人間である。
忘却型人間の強味は、年も忘れることである。
何歳になっても、青年のように溌剌としていることができる。
ひょっとすると、年も忘れ、死ぬことも忘れかねない。」
(p153~156)
うん。寄席など入ることはない私ですが。
ついつい笑って、この箇所を読んだことも忘れてしまう私がいて、
きっとまた、新鮮な気分で読み直すだろうなあと思う読後感あり。
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