和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

今度は問題を出すほう。

2021-12-24 | 本棚並べ
小林秀雄・岡潔対談「人間の建設」に、
今でも、忘れられない言葉があります。
まずは、その箇所から引用。

小林】 今度は問題を出すほうですね。

岡】  出すほうです。立場が変るのです。
    ・・・・・・

小林】 ベルグソンは若いころにこういうことを言ってます。
問題を出すということが一番大事なことだ。うまく出す。

問題をうまく出せば即ちそれが答えだと。
この考え方はたいへんおもしろいと思いましたね。

いま文化の問題でも、何の問題でもいいが、
物を考えている人がうまく問題を出そうとしませんね。
答えばかり出そうとあせっている。


つぎの引用は、
うん。粕谷一希座談『書物への愛』(藤原書店・2011年)。
そこにある。平川祐弘氏との対話のなかに
『試験で問題を出すべきなのは』という箇所がありました。

平川】 例えば、『国際関係論』や『日本近代史』
といった試験で問題として出すべきなのは、

『なぜ日本は台湾で評判がよく、朝鮮では評判が悪いのか』
といった類の問題提起が大切です。

先日の『JAPAN デビュー』といったNHKの番組を見ても、
『植民地主義は悪だ』という前提だけで論じているのがよく分かる。
あれでは、全くつまらない。

むしろ、なぜそういう台湾と朝鮮の差が生まれたのか、
ということを考えるのが、歴史であり、学問でしょう。
しかし、そう聞かれて、すぐに答えられる人は本当に少ない。
(p176)

うん。ことあとに、二人して答えているのですが、
ここでは、『問題提起の大切さ』なのでここまで。


最後は雑誌からの引用。
雑誌Hanada2022年2月号が出ております。
そこに、平川祐弘氏の連載があり、今回で40回目。
パラパラとひらくと、南山大学の入試問題に選ばれた、
平川祐弘氏の文章が引用されております。

「この入試問題は、私の文化史認識をとりあげ、
『次の文章は、〈源氏物語〉の英訳者、アーサー・ウェイリーに
ついて論じた書物の一節である。後の設問に答えなさい』とある。

一国文学史の狭い枠を脱した私の見方がこんな形で若い世代へ
伝わるとは忝(かたじけな)い。出題者に感謝する。」(p350)

はい。雑誌の3段活字で4ページが入試問題からの引用。
その文章から、わたしは、ここだけ引用してみます。

「・・・ちなみにチェンバレンは神道の宗教的価値を認めず、
琴、三味線は聞くに堪えないから火にくべて貧民に暖をとらせる
がよかろうといって、ラフカディオ・ハーンを怒らせた人である。

問題はこのチェンバレンとハーンの二人の対立が公然化した時、
西洋人の多くは、いや少なからぬ日本人も、チェンバレンの肩を持った、
いや今日でも持ち続けるということであろう。

だがチェンバレンより39年後、日本暦でいうと明治22年に
ユダヤ系英国人の家庭に生まれたアーサー・ウェイリーは、
チェンバレンとはおよそ違った。

彼は西洋キリスト教文明のみを普遍的価値があるとする見方に
与(くみ)しない。ウェイリーは・・・
日本についての最高権威と目されたチェンバレンの見解を
次々と手厳しく否定した。
第一次大戦後、和歌と能楽の英訳で日本学者としてデビュー
したウェイリーは『源氏物語』のテクストを読み、
平安朝文化の洗練に感嘆した人である。・・・・

ウェイリーの英訳『源氏物語』がおびただしい激賞を
浴びたことは知られている。・・・・
日本人には知られることが薄いが、そして
英米人にも必ずしもはっきりわかっているわけではないけれども、
もっとずっと大切な点は、この翻訳が両大戦間の『英語芸術作品』
として抜群の出来映えであるということであろう。
ウェイリー訳で読むと、源氏の世界が
思いもかけぬ新しい光を浴びて躍動する。・・・・」(p351~352)

うん。大学受験で真剣に、この問題を読み込んでいる
若い人たちを思い浮かべてしまいます。

ちなみに、この試験問題が引用されている雑誌掲載の
その題は、『源氏物語を日英両語で読む』とあるのでした。
それを読んでいった会「よみうりカルチャーの皆さん」の記念写真も
掲載されていて、その顔ぶれをみれば、受講者はほとんど高齢の方々。

うん。雑誌掲載のときは、一冊の本になったときよりも、
写真が多い。写真の『よみうりカルチャーの皆さん』の
顔ぶれを見ながら知らない人ながら、楽しめるのでした。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アマノジャクの練習問題。 | トップ | 知る人ぞ知る、事実だった。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本棚並べ」カテゴリの最新記事