和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

楽しむ者。

2010-06-07 | 短文紹介
不如楽之者。


論語に、こうあるそうです。

「孔子さまがおっしゃるよう、『知る者よりも好む者が上、好む者よりも楽しむ者が上ぢや』」(穂積論語 雍也第六 137)

谷沢永一氏はこれについて語っております。
「われわれは長年学生を見てきましたので、身にしみて知っているのですが、『学ぶ』ということはこの一言に尽きます。・・・『楽しむ』というのは、まず飽きがこないし、楽しいのですから途中でやめたりもしない。楽しい以上、その人の心は広いし、温かい。そうすると、視野も広くなる。そのため、様々な人生の、あるいは様々な学問の分野のいろいろな部分を、できる限り洩れなく拾い上げるという態度になり、話題も豊富になります。楽しめば際限がないのです。・・・私などはこの一条を拳拳服膺しているのですが、学者仲間でも楽しんでいる人は信用できます。学者に限らず、われわれは皆、物学びする人間です。そして、これは物学びする人間に対する評価の唯一の基準ですね。」
   (谷沢永一・渡部昇一著「人生は論語に窮まる」(PHP)p102~104)


さてっと、なぜこんな個所を思い浮かべたのかというと、
ちょいと、それに関する事が、ひっかかってきたからなのでした。
ということで、3つの例。

ひとつめは。
竹内政明著「名文どろぼう」(文春新書)の「はじめに」で、

「新聞社に籍を置いて三十年、しゃれた言葉や気の利いた言い回し、味のある文章を、半分は仕事の必要から、半分は道楽で採集してきた。本書ではコレクションの一部をご覧いただく。・・・・書いていて楽しかった。日本語にまさる娯楽はないと思っている。」

ふたつめは。
対談での日垣隆氏の言葉。

「未知の領域で疑問に思ったことを現場で調べている時、これは何十時間でも没頭してしまいます。それから最近は毎日、就寝前にベッド上で十冊ほどの専門書に目を通し、いくつかの使えるアイデアや、自分では思いつかなかった根拠などをサササっとメモにとって、深い睡眠に入っていく時間の流れは非常に至福(笑)です。
私はどうも調べものをしているのが好きで、調べ出すと眠らない。モノを書き出す直前はとても辛いのですが、夜中に多彩な分野の本に目を通していく作業はとても楽しい。寝る前に一心不乱に付箋を貼っている姿を他人が見たら怖いと思いますが(笑)。」(p52「WILL」2008年2月号、渡部昇一・日垣隆対談)


みっつめは、うん思いつかないなあ、
まあ、どなたでもよいのでしょうが、たとえば清水幾太郎氏

「そうとは気づかなかったものの、何かを考える時、部屋の中をウロウロと歩き廻る私の癖、考えつくと、考えが逃げ出すのを恐れて、ソワソワとメモをとる私の癖、少しでも気にかかる点に出会うと、あの本、この本と、それを本気で読むというのでなく、忙しく開いてみる私の癖・・・そういう癖のある私にとって・・・」(「清水幾太郎著作集19・p95」


コメント
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