山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

権現岳から三ツ頭を経て観音平へ 平成29年9月9日ー10日 (2日目)

2017年09月13日 | 山梨百名山
 権現岳小屋に宿泊した9日の夜は星空が見えず、8時半には就眠した。この時間に寝るのであれば目覚まし時計をセットせずとも未明3時には目が覚めるはずだ。実際に目が覚めたのは未明2時過ぎだった。窓の外を見ると霧で真っ白、星も町灯りも何も見えない。3時半ごろに外に出てみるとうっすらと月明かりが雲を透かして見えてきた。このまま朝まで横になっているのももったいないので、ダメなのを承知で荷物を全部持って早朝4時に小屋を出る。すると、先ほどまで見えなかった編笠山や町灯りが見えるようになってきた。


    権現岳小屋の上から見るギボシと編笠山。編笠山山頂を目指す明かりが見える。


    展望地まで行ってみると月光に照らされた赤岳と阿弥陀岳も姿を現していた。しかし空には雲がかかって星は見えず。


    権現岳と甲府盆地の明かり。富士山は霞の中にチラリと見えるだけ。


    霧が湧き上がる。雲海は広がったが富士山は霞んでいまひとつ。


    雲の間から朝日が現れた。ほとんど焼けず。


    霧の巻く赤岳と阿弥陀岳


    朝日が差し込んだが霞が多くて空気の透明度がいまひとつ。朝の景色はここまでだ。

 雲に巻かれた赤岳と阿弥陀岳を狙って再三シャッターを切ったが、霞が多くて残念ながら劇的な朝の写真にはならなかった。日が昇ったところで山の撮影は止める。権現岳小屋に戻って水を1本購入し、小屋番さんに挨拶をして三ツ頭目指して出発する。権現岳山頂付近は高山植物の宝庫であるが、残念ながらどの花も少し時期が遅く、目的の花だったアザミの仲間ももうほとんど終わっていた。


    赤紫色の総苞、何本かに分かれて咲く花、これはタカネヒゴタイ。もうほとんど終わっていた。


    ウメバチソウも半分くらい散っている。


    見ごろのはずなのだが花を開いてくれないトウヤクリンドウ。


    オヤマリンドウはまだ蕾。


    咲き残りのタカネシュロソウ


    ヤツタカネアザミ


    三ツ頭から振り返って見る権現岳、阿弥陀岳、赤岳。


    ここに来て富士山が少し見えるようになってきた。もう少し早く回復してくれれば絵になったかも知れない。

 時間がまだ早かったので色気を出して前三ツ頭方面へも花探しに下りてみたのだが、これが後まで尾を引くことになってしまう。


    三ツ頭あたりまで来るとヤハズヒゴタイのようだ。


    タカネマツムシソウ。背が低いが一部鹿に食われているようだ。


    ミヤマダイモンジソウ。茎に毛が無い(ように見える)。


    こちらは茎と苞に毛が生えている。ビランジ。オオビランジよりもこちらのほうがあまりお目にかかれない。


    そしてこちらの樹林帯の中にも、もう枯れそうだが深山・フタバラン。

 気温が上がりかなり汗をかいてしまい、登り返しで大幅に体力を消耗してしまった。しかも、持っていた水が1リットル少々だったのだが下山途中でほとんど無くなってしまう事態となってしまう。途中に延命水という水場があるので、そこで水を汲もうと立ち寄るのだが・・・ショック!


    来年は三ツ頭から八ヶ岳神社に至るこの尾根の草地を調べてみたいと思っている。この尾根は山梨県だ。


    草むらを覗き込みながら歩いていると花の終わったツレサギソウ属の花あり。環境から見てタカネサギソウだろう。来年が楽しみだ。


    木戸口公園。展望無し。


    その下のヘリポートで展望が開ける。ここで12時、昼食をとる。水は残り200mlほどとなってしまう。


    延命水分岐。看板には飲用に不適と書いてあるがそんなのはお構い無し。二口ほど水を残して汲みに行く。


    水場の周りにはクリンソウの葉。


    しかし・・・無情にも水は出ていない。延命水では無く絶命水!

 残った二口の水を大切に使いながら、残り1時間少々の行程をテクテクと歩いて観音平に戻った。それほど歩いたわけでは無いが、ものすごく疲れた山行となってしまった。


    八ヶ岳遊歩道分岐


    キバナアキギリ


    何じゃこりゃ?


    調べてみるとカワミドリ(シソ科カワミドリ属)という花。名前は聞いたことがあるが初見。


    枯れた沢までグッと下りてまた登り返し。


    最後にミヤマモジズリが出迎えてくれた。


    観音平到着。もはやヒカリゴケを見に行く元気は無かった。

 車に到着して中に置いてあった水を一気に500ml飲んで少し元気回復した。水が足りなくなるのではないかという心配が下山し始めの時に少しあったのだが、寄り道したのが想定外に暑くて辛かったのが失敗だった。しかし、星は撮れなかったものの深山・双葉ランやシコタンハコベ(山梨県では絶滅危惧ⅠA類)にも出会うことが出来たし、来年の山岳レインジャー活動(植物調査)に向けての下見も出来た。それなりに有意義な山行だったと思う。
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観音平から権現岳へ 平成29年9月9日ー10日 (1日目後篇)

2017年09月13日 | 山梨百名山
 観音平を9時に出発して編笠山山頂到着が午後1時半、青年小屋で昼食をとって水を汲み、権現岳に向かって出発したのは午後2時半になってしまった。コースタイムでは権現岳まで1時間半だがとてもそんなに速く登れる気がしない。既に脚が相当疲れて来た。星撮り用の重い三脚のほかに間違ってもう1本持って来てしまったのも失敗だった。青年小屋から権現岳に至るギボシ側面を通過するルートはこのルートの核心部で、鎖の付いた急斜面を越えなければならない。小屋番さんには申し訳ないが、4時には到着できそうも無い。


    編笠山を眺めるように咲いているアザミ。


    このアザミは? 上部で分枝し、下向きに花を付ける。裂片は開いて先が尖り、総苞は粘っていない。ヤツタカネアザミと思われる。


    登山道脇の岩場に咲いていたヤマハハコ。


    コバノコゴメグサとギボシ


    背丈が小さいが、どうやらヒメシャジン。


    トリカブト


    のろし場に到着。ここまでは普通の登山道。この先に見えるギボシの登りと側面トラバースがこのルートの核心部。

 のろし場までは普通に歩ける登山道だが、核心部はその先だ。見上げるギボシの岩峰は目の前に立ちはだかっているかのように見える。そしてその岩場にはたくさんの高山植物が咲いていた。


    ギボシと阿弥陀岳


    立ちはだかった聳えるギボシ。


    しかし、そこには高山植物がたくさん。ウメバチソウのお花畑。


    ウメバチソウ


    トウヤクリンドウは花が開いていなかった。


    ミヤマオトコヨモギ


    タカネナデシコ


    総苞が赤紫色。ここまで来るとタカネヒゴタイ。


    7月に北岳で探したが見つからなかったこの花。


    ここで出会えるとは。シコタンハコベ。


    花がほとんど終わってしまっているのが残念。深山・フタバランとともに来年再訪してみたい。


    ちょっとスリルがあるギボシ鎖場。したは編笠山。


    ひと登りして権現岳が見えてきたが、さらにもうひとつピークがある。ここは側面をトラバースする鎖が付いている。


    通過して来た小ピークを振り返る。この岩場にもミヤマダイコンソウをはじめとする高山植物がたくさん付着している。下に見えるのは西岳。


    ギボシ側面のトラバース鎖


    さらにこの岩を登る。


    ようやく権現岳と権現小屋が目の前に近付く。


    雲湧きあがる赤岳と阿弥陀岳。権現岳小屋手前の稜線から見る景色が素晴らしい。


    やっと小屋に到着。午後4時半。

 権現岳はこんなに大変だっただろうかと思うくらいに疲れ果てて、午後4時半に小屋に到着した。受付けを済ませて荷物を寝床に片付けて着替えると、間もなく夕食となった。本日の宿泊客は8人で静かな山小屋泊まりとなった。この小屋は若い小屋番さん1人で切り盛りしていて、宿泊客は少ないもののかなり大変そうに見えた。独りのほうが気楽で良いと言っていたが、それにしても荷揚げや食事の準備、寝床の整備など、1日中休む暇など無いのではないだろうか。まだ若いのに大したものである。

 夕食後、夕映えの赤岳とその後の星空、うまくすれば低緯度オーロラを期待して宿泊客のほとんどの人たちと共に権現岳キレット側の展望台に出かける。残念ながら空は雲が多くて夕陽は見えず夕映えの赤岳も見られなかった。星が出るまで待とうと思ったのだが、雲が湧きあがって来たと思ったら今度は雷鳴が轟き始めた。次第に黒い雲が迫って来たのであきらめて小屋に戻ることにした。


    雲が多く夕映えの赤岳は拝めず。


    星も難しそうだ。雲が湧いて来たと思ったら今度は雷鳴。撤退する。


    8時近くまで小屋の前で空を見上げていたが、星が見えたのは頭の上に一時だけ。白鳥座デネブとうっすら天の川。

 8時ごろまで小屋の前で写真好きな人達と話をしながら空模様を伺っていたが、頭の上で一瞬星空が見えた後は霧が巻き始め何も見えなくなってしまった。さらに小雨が降り始める。明日の朝に期待して8時半には眠りについた。
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観音平から権現岳へ 平成29年9月9日-10日 (1日目前編)

2017年09月13日 | 山梨百名山
 黒戸尾根か、北岳か、赤岳か、それともこの権現岳か、散々迷った挙句、権現岳小屋泊まりで行くことに決め、当日の朝、小屋に電話を入れて予約を入れる。ひとつは7月に日帰りで訪れた際のアザミの仲間が何なのか確認しておきたかったこと、そして来年の植物調査のための下見、さらには前日撮影に失敗したオーロラがひょっとしたら見えるかも知れないと言う小さな期待もあった。権現岳から赤岳方面を見るとちょうど阿弥陀岳あたりが真北になり、その裾野が紫色に染まってくれるかもしれないと考えたが、前日よりも太陽風の条件が悪いので撮れる可能性はゼロに近い。

 午前8時半観音平に到着すると駐車場は車がいっぱいで路上までずらりと駐車されている。ところが、一番奥の駐車場まで乗り入れてみるとまだ10台近く止められるスペースが空いておりそこに車を止めて9時に出発する。このルートは平成17年の6月、まだ登山を始めて間もない頃に日帰りで周回したことがある。天気が悪く編笠山はパスして鎖場を必死で登って権現岳に到着したら、今度は雷鳴が轟いて休む間もなく三ツ頭のコルの樹林帯に逃げ込んだ。そのうえ日没が近付いて来たというのに3人で出掛けたのにヘッドライトが1個しか無く、かろうじて日没直前に観音平に到着したという、今にして思えば無謀な登山だった。その時に初めて見たチシマギキョウの濃い青紫色の花が強く印象に残っており、その時はその花の名前も知らなかった。12年にして登山レベルはそれほど上がったとは思えないが、花や星や山の知識はずいぶんと上がったように思う。今回は権現岳小屋泊まりなので時間は十分にある(はずだ)。編笠山を越えて行くことにする。


    ここを歩いたのは12年前。なつかしい感じがする。


    雲海展望台。木が伸びて眺望はいまひとつ。


    樹林帯の中で見かけたヤマホタルブクロ


    ミヤマモジズリ


    固まって咲いてはいないが、あちらこちらに点在。


    総苞が緑色。この標高だとヤハズヒゴタイ。


    咲き終えたキソチドリ

 花の写真を撮ろうとザックに取り付けた三脚を取り出そうとすると、星用の大きな三脚のほかにもう1本のサブ三脚が積まれていた。昨日の日向山に行った際に取り外すのを忘れてそのまま持って来たしまった。カメラは1台しか無いのに三脚が2本・・・今さら置いて行くわけにも行かず、そのまま担ぎ上げるしかない。

 苔の生えたツガ樹林帯の中でキソチドリが固まって生えているのを見つけた。ふとその横を見ると双葉のランがあった。回り込んでみるとそちら側には5~6本まばらに生えている。花はもう終わってしまっているが、毛の生えた紫色の茎とやや光沢のある双葉の葉っぱ、これは深山のフタバランではないか。コフタバランがあるのではないかと気をつけながら歩いて来たのだが、まさか、このフタバランに出会えるとは思っていなかった。嬉しい出会いである。


    キソチドリの群生。真ん中のところにキソチドリに並んで別のランが生えている。


    反対側から撮影。


    既に結実している。毛の生えた赤紫色の茎、やや光沢のある双葉。


    深山・フタバラン。ここで出会えるとは嬉しい。今度は花の咲いている時期に訪れてみたい。


    編笠山への急登。かなり辛く、時間もかかった。


    標高は2,400mくらいまで上がったが、これもどうやらヤハズヒゴタイ。


    もうすぐ編笠山山頂。既にヘロヘロ。


    山頂付近に咲いていたウメバチソウ。


    編笠山山頂。


    編笠山から見る八ヶ岳の山並み。一番右が権現岳。まだ結構遠い。

 編笠山の登りは急登できつく、ヘロヘロになって山頂に到着、既に時刻は午後1時だった。10人以上の登山者が休憩中だったのでそのまま休まずに青年小屋まで下りて休憩することにする。


    ゴゼンタチバナの赤い実。


    こんなところにも深山・フタバラン。


    青年小屋とこれから登るギボシ・権現岳。まだかなり遠く感じる。


    アカバナだが、何かおかしい。


    上部がちぎれている。どうやら鹿にやられているらしい。

 予定では2時までには青年小屋を出発するはずだったが到着が2時近くになってしまった。ここで昼食をとり、水場に水を汲みに行く。水場の「生水 煮沸して使って下さい」と書かれてる看板を正面から見ながらゴクゴクと水を飲んでいると、近くに居た大学生らしき女性が物言いたげに私の方をじっと見つめていたが、よほど怪しいおじさんに見えたのか何も言わずに立ち去って行った。


    青年小屋の水場、乙女の水。煮沸して使うように書かれているがそんなことお構いなしにゴクゴクと喉を潤す。


    水場の脇に咲いていたセリバオウレン。

 青年小屋出発は午後2時半になってしまった。コースタイムでは1時間半で権現岳小屋に到着できるはずだが、私の足では2時間くらいかかってしまうだろう。編笠山の登りでかなり足に疲れがたまってきている。もうひと踏ん張りだ。(1日目後篇に続く)
コメント (2)
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