本日はシダの師匠と花仲間と私の3人で南部町の渓谷に生育するシダの探索である。ひとつめの渓谷の探索をお昼前に終えて次の渓谷に移動する。今度の場所も以前に探索したことがある渓谷であるが、その際に白い縞模様の入った奇怪なシダに遭遇した。その時はオオバノハチジョウシダの幼体であろうと思ったのだが、最近になってオオバノアマクサシダというシダが山梨県で発見され、これもひょっとしてオオバノアマクサシダではないかと疑いを持つようになった。既に私が博士と仰ぐ花仲間が調査に歩いてくれており、報告書をいただいている。おそらくはオオバノアマクサシダと見て間違い無さそうである。今回はその確認を含めて、シダの宝庫であるその渓谷を探索に行ってみる。

本日2ヶ所目はこのシダが生い茂るジャングルのような渓谷。ヤマヒルが出ないこの季節は歩き易い。

ナガバノイタチシダ。南方系のこのシダは山梨県では南部町界隈に生育している。

これが今年の早い時期に見かけた白い縞模様が入ったシダ。その時はオオバノハチジョウシダの幼体だと思ったのだが・・・。

少し大きくなったのがこれ。まだ葉の先のほうに少し白い縞模様が残っており、周辺には幼体が生えている。

さて、これはオオバノハチジョウシダなのか、それともオオバノアマクサシダなのか?

さらに成長した個体を発見したがソーラスは付いておらず、成熟した個体では無いようである。

羽片のいちばん近位部の下向き小羽片が著しく長い。形から見てオオバノアマクサシダでほぼ間違い無さそうである。
オオバノハチジョウシダは山梨県絶滅危惧Ⅱ類のシダで山梨県に生育していることが確認されているがオオバノアマクサシダはまだ報告されていないシダである。おそらくは地球温暖化とともに山梨県に新たに入り込んできたシダなのではないかと思われる。
他にもこの渓谷には面白いシダが多数生育している。

シケチシダ。あまり珍しいものでは無いらしいが私がこのシダを見るのは2度目である。最下羽片が弧状に湾曲する形の特徴がある。

長楕円形のやや不規則なソーラスが付着する。

クリハランの群生

突起のある葉の形と独特の緑色をしたメヤブソテツ。

葉に突起がある。

最も特徴的なのが葉の辺縁の細かい棘のような鋸歯である。

虫がたくさん付着しているようにも見えるソーラス。

ヤブソテツの仲間でも特別に美しいメヤブソテツにすっかり魅せられた。

さらにピカピカしたツヤのある緑色鮮やかなシダを師匠に案内していただいた。

ナガバヤブソテツ。葉の辺縁は鋸歯状である。
白い縞模様が入った幼体のシダはおそらくはオオバノアマクサシダであろうということであるが、確定するにはもう少し観察が必用であろう。そこで、本物のオオバノハチジョウシダを見に行こうということになり私が以前に見たことがある場所に車で移動してみた。シダは大きく成長して青々と茂っていたがその成長した姿を見てビックリである。これはオオバノハチジョウシダでは無くて・・・!!

オオバノハチジョウシダだと思っていたシダ、大きく成長した姿を見てビックリ!

この独特の五角形の形、これはナチシダではないか。

小さいうちは最下羽片の下向き第一小羽片が短くてナチシダのようには見えない。

しかし成長するにつれて下向き第一小羽片が大きくなり、ナチシダの形になって行く。
驚きのナチシダの成長過程と群落を形成し始めていることにビックリ仰天である。ナチシダも南方系のシダで静岡県が北限とされていたが、数年前に山梨県の南部町で発見され、今回が2ヶ所目の生育地ということになるようだ。増殖力が強いうえに鹿が食べないのであっという間にこの界隈はナチシダジャングルに置き換わるのかも知れない。そしてまだ私は本物のオオバノハチジョウシダを見ていないということが分かった。驚きとともに少しガッカリである。さほど珍しいシダでは無いようなのでそのうち出会えるだろう。いろいろと驚くことばかりの本日2ヶ所目のシダ探索だった。もう少し時間があるのでもう1ヶ所立ち寄ってみる。