平成22年3月13日
数日間不順な天候が続き、前日は一時回復したもののこの日は再び暗い雲が空をおおっていた。1ヶ月前に中山で見た樹氷の情景が頭から離れず、あの樹氷の森の上に昇る星空を撮りたいとずっと思っていた。今シーズンは今回が最後のチャンスとなるかもしれない。行き先は北八ヶ岳と決めていたが、どこに行くか・・・天候が心配だ。
車を奥蓼科温泉渋の湯に向けて走らせるが、八ヶ岳中央高原あたりから見上げる八ヶ岳は暗い雲におおわれ、さらに雨が降り出した。テントを張るには最悪の状況、かつ、山の上は風が吹き荒れていることだろう。ならば、行き先を変更、ピラタス蓼科ロープウェイに向かい、北横岳に行くことにした。ロープウェイ駅の下で北横岳ヒュッテに電話すると、この日は満室だが1人ならなんとかしてくれると、快く宿泊させてもらうことになった。ここでも天候は小雨。気温は3℃、おそらく上は雪だろう。テントとシュラフを置いて12時にロープウェイに乗り込み出発した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/4a/2c3d2f417f3e5bba91fb301bdd8d3f39.jpg)
ロープウェイ山頂駅を降りたところ。霧でまっ白。
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坪庭の途中。風が強く、岩も看板も凍りつく。
ロープウェイ駅を降りると、雨こそ降っていないものの、そこは真っ白な世界。雪だけではなくて霧だ。やや強い風も吹いている。北横岳を目指すグループが2~3グループ私の前を歩いていた。気温は-5度くらいだろうか。さほど寒くはないが、辺りの木や岩はみんな凍りついていた。登って行く人たちは皆アイゼン装着していたが、アイスバーンになっている様子は無かったので私はアイゼン装着せずに団体のいちばん後について歩き始めた。さほど急ぐ路ではなかったのだが、他のグループが休憩している間に追い抜いてしまい、先頭から2番目で歩くようになっていた。坪庭を通り過ぎると樹林帯の中のジグザグな道となるが、雪道にしては驚くほど整備され、かつ踏み固められていた。この山の人気の高さが伺える。三ツ岳、雨池峠方面への分岐を過ぎて進んで行くと、霧の向うに小屋が見えてきた。1時間とかからずにあっけなく北横岳ヒュッテに到着した。こんなに近いとは・・・ちょっと拍子抜けした。
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北横岳山頂。立っていられないほどの強風が吹き荒れ、機関銃のような雪のかけらが飛んでくる。すぐに撤退。
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下りながら7~8人の人たちとすれ違った。宿泊客ではなく、本日下山する人たちだった。悪天候で寒そう。
小屋に荷物を降ろして三脚と飲み物、おやつだけ持って、撮影場所を見ておくために山頂に向った。ここから15分ほどで山頂に到着するが、傾斜がかなり急になる。高度を上げるたびに風が強くなり、さらに山頂に抜けるとそこは・・・立っていられないほどの物凄い風が吹き付け、機関銃のような雪のかけら(木についた樹氷や積もった雪が風に舞って飛んでくる)が顔に吹き付ける。とても展望をみるどころの騒ぎではなく、三脚を立てようとするとあっという間にカメラとレンズに氷の膜が張ってしまい、写真にならない。早々に山頂から撤退して小屋に戻る。
北横岳ヒュッテのご主人さんは写真好きの人で、小屋の休憩室にはアルバムがたくさん置かれていた。フィルムのものが多いが最近の作品にはデジタルのものもあり、星空の写真もたくさん納められていた。今回私が狙っている八ヶ岳の上に出るさそり座と天の川、そして樹氷の森に登る星々の画像もあり、私が撮りたいと思っていた風景はほとんどそのアルバムの中に入っていた。若干違うのは、レンズF2.8開放で撮影する星の多さくらいだ。撮影場所、時期、撮影法などを詳細に聞き、明日の星空に思いを馳せる。しかし、天気予報では明日は晴れだが、この空模様で星は出てくれるのだろうか?不安も若干はあったが、何度もこのような天候の経験がある私は、きっと凄い星空になる、という何か確信めいたものを胸に抱いていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/3c/0d14315b745f20a53b34226813d65fc7.jpg)
北横岳ヒュッテの夕食は鱈と肉の鍋。山小屋でこんな食事にありつけるとは驚き。ちなみに夏場はすき焼きだそうです。一度は泊まる価値あり。
6時、夕食。食卓についてびっくり、何だ、この夕食は!鱈と肉の鍋だ。山小屋でこんな食事には出会ったことがない。常連さんたちがたくさん集うこのファミリアルな雰囲気もなかなか良かった。出汁の味も最高だったのだが、いかんせんこの日は運動量が少なすぎ、ほとんど腹が減らない。すぐにお腹がいっぱいになってしまった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/ea/03ddcd89424516f0460bc3da4411bb60.jpg)
夜8時頃の空はまだ雲が多く、時折星が見える程度だった。しかし・・・
食事を終え、談話室でご主人さんや常連の人たちと山談義や写真談義にふけり、あっという間に夜8時を回る。外に出て空を見上げると、時々雲間から星が見え隠れし、昼間に比べるとずいぶんと天候は回復してきていた。明日は3時起床の予定なので、9時には寝ようと思い、8時半に睡眠薬を内服した。約30分で効果が出てくるはずなので、その間に数カット撮ろうと、三脚とカメラを持って外に出て星が出るのを待つ。すると、しだいに雲が晴れ始め、オリオン座や冬の大三角形が見えるようになってきた。そして小屋の消灯時間を過ぎた9時過ぎ、空一面に凄い星空が広がった。オリオン座と冬の大三角形が小屋の上に沈んで行く。東には春の大三角形の一角、アルクトゥールスが明るく輝く。睡眠薬の眠気が吹き飛んでしまい、結局9時45分ごろまで1人小屋の周りをうろうろ、撮影に熱中してしまった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/be/246a11a41de80f7116a61c9e775cc590.jpg)
樹氷の上に昇るオリオン座と冬の大三角形 夜9時ごろから雲が飛び、満天の星空が広がる。眠るのが惜しい夜空になってしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/5c/3dd068895046e64abfd5d9884c5bc542.jpg)
ヒュッテの空に傾くオリオン座と冬の大三角形
眠らないと翌日に応えるので、寝るのが惜しい気持ちを抑えつつ、自室に戻って眠りに着いた。明日の星空を思いつつ、目覚まし時計は3時15分にセットした。
数日間不順な天候が続き、前日は一時回復したもののこの日は再び暗い雲が空をおおっていた。1ヶ月前に中山で見た樹氷の情景が頭から離れず、あの樹氷の森の上に昇る星空を撮りたいとずっと思っていた。今シーズンは今回が最後のチャンスとなるかもしれない。行き先は北八ヶ岳と決めていたが、どこに行くか・・・天候が心配だ。
車を奥蓼科温泉渋の湯に向けて走らせるが、八ヶ岳中央高原あたりから見上げる八ヶ岳は暗い雲におおわれ、さらに雨が降り出した。テントを張るには最悪の状況、かつ、山の上は風が吹き荒れていることだろう。ならば、行き先を変更、ピラタス蓼科ロープウェイに向かい、北横岳に行くことにした。ロープウェイ駅の下で北横岳ヒュッテに電話すると、この日は満室だが1人ならなんとかしてくれると、快く宿泊させてもらうことになった。ここでも天候は小雨。気温は3℃、おそらく上は雪だろう。テントとシュラフを置いて12時にロープウェイに乗り込み出発した。
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ロープウェイ山頂駅を降りたところ。霧でまっ白。
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坪庭の途中。風が強く、岩も看板も凍りつく。
ロープウェイ駅を降りると、雨こそ降っていないものの、そこは真っ白な世界。雪だけではなくて霧だ。やや強い風も吹いている。北横岳を目指すグループが2~3グループ私の前を歩いていた。気温は-5度くらいだろうか。さほど寒くはないが、辺りの木や岩はみんな凍りついていた。登って行く人たちは皆アイゼン装着していたが、アイスバーンになっている様子は無かったので私はアイゼン装着せずに団体のいちばん後について歩き始めた。さほど急ぐ路ではなかったのだが、他のグループが休憩している間に追い抜いてしまい、先頭から2番目で歩くようになっていた。坪庭を通り過ぎると樹林帯の中のジグザグな道となるが、雪道にしては驚くほど整備され、かつ踏み固められていた。この山の人気の高さが伺える。三ツ岳、雨池峠方面への分岐を過ぎて進んで行くと、霧の向うに小屋が見えてきた。1時間とかからずにあっけなく北横岳ヒュッテに到着した。こんなに近いとは・・・ちょっと拍子抜けした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/4f/8a778c103c08a61a5becb4dd9858bd50.jpg)
北横岳山頂。立っていられないほどの強風が吹き荒れ、機関銃のような雪のかけらが飛んでくる。すぐに撤退。
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下りながら7~8人の人たちとすれ違った。宿泊客ではなく、本日下山する人たちだった。悪天候で寒そう。
小屋に荷物を降ろして三脚と飲み物、おやつだけ持って、撮影場所を見ておくために山頂に向った。ここから15分ほどで山頂に到着するが、傾斜がかなり急になる。高度を上げるたびに風が強くなり、さらに山頂に抜けるとそこは・・・立っていられないほどの物凄い風が吹き付け、機関銃のような雪のかけら(木についた樹氷や積もった雪が風に舞って飛んでくる)が顔に吹き付ける。とても展望をみるどころの騒ぎではなく、三脚を立てようとするとあっという間にカメラとレンズに氷の膜が張ってしまい、写真にならない。早々に山頂から撤退して小屋に戻る。
北横岳ヒュッテのご主人さんは写真好きの人で、小屋の休憩室にはアルバムがたくさん置かれていた。フィルムのものが多いが最近の作品にはデジタルのものもあり、星空の写真もたくさん納められていた。今回私が狙っている八ヶ岳の上に出るさそり座と天の川、そして樹氷の森に登る星々の画像もあり、私が撮りたいと思っていた風景はほとんどそのアルバムの中に入っていた。若干違うのは、レンズF2.8開放で撮影する星の多さくらいだ。撮影場所、時期、撮影法などを詳細に聞き、明日の星空に思いを馳せる。しかし、天気予報では明日は晴れだが、この空模様で星は出てくれるのだろうか?不安も若干はあったが、何度もこのような天候の経験がある私は、きっと凄い星空になる、という何か確信めいたものを胸に抱いていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/3c/0d14315b745f20a53b34226813d65fc7.jpg)
北横岳ヒュッテの夕食は鱈と肉の鍋。山小屋でこんな食事にありつけるとは驚き。ちなみに夏場はすき焼きだそうです。一度は泊まる価値あり。
6時、夕食。食卓についてびっくり、何だ、この夕食は!鱈と肉の鍋だ。山小屋でこんな食事には出会ったことがない。常連さんたちがたくさん集うこのファミリアルな雰囲気もなかなか良かった。出汁の味も最高だったのだが、いかんせんこの日は運動量が少なすぎ、ほとんど腹が減らない。すぐにお腹がいっぱいになってしまった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/ea/03ddcd89424516f0460bc3da4411bb60.jpg)
夜8時頃の空はまだ雲が多く、時折星が見える程度だった。しかし・・・
食事を終え、談話室でご主人さんや常連の人たちと山談義や写真談義にふけり、あっという間に夜8時を回る。外に出て空を見上げると、時々雲間から星が見え隠れし、昼間に比べるとずいぶんと天候は回復してきていた。明日は3時起床の予定なので、9時には寝ようと思い、8時半に睡眠薬を内服した。約30分で効果が出てくるはずなので、その間に数カット撮ろうと、三脚とカメラを持って外に出て星が出るのを待つ。すると、しだいに雲が晴れ始め、オリオン座や冬の大三角形が見えるようになってきた。そして小屋の消灯時間を過ぎた9時過ぎ、空一面に凄い星空が広がった。オリオン座と冬の大三角形が小屋の上に沈んで行く。東には春の大三角形の一角、アルクトゥールスが明るく輝く。睡眠薬の眠気が吹き飛んでしまい、結局9時45分ごろまで1人小屋の周りをうろうろ、撮影に熱中してしまった。
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樹氷の上に昇るオリオン座と冬の大三角形 夜9時ごろから雲が飛び、満天の星空が広がる。眠るのが惜しい夜空になってしまう。
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ヒュッテの空に傾くオリオン座と冬の大三角形
眠らないと翌日に応えるので、寝るのが惜しい気持ちを抑えつつ、自室に戻って眠りに着いた。明日の星空を思いつつ、目覚まし時計は3時15分にセットした。
大菩薩山系も9時頃まで強風と黒い雲でした。
takeさんは大菩薩でしたか。あちらも結構冷え込んだのでは?
星空が小屋を包む、いいですね~
明日紹介させて頂きますね。
ところで睡眠薬は効果ありますか?交代勤務をしているので、夜勤とかは寝れないので毎々困っています。
超ご無沙汰しております。が、ブログはROM
させてもらってます。すばらしい作品の数々
いつも楽しみに拝見しております。G/Wは
雲取山から瑞垣まで縦走予定です。
楽しいひと時を過ごすことができました。
満天の星空が撮れたようで何よりです。
またお会いできたらいいですね。
睡眠薬は、最近は睡眠導入薬といって短時間作用のものが主流になってきています。私が愛用しているのはマイスリーという薬です。4時間でほぼ切れますが、眠れなくて2錠飲んだ時は翌日の昼近くまで具合悪かったですね。それでも山は登りました(笑)。
同じ場所で撮影していたのに、できた写真はやはり全く違いますね。感性の違いと思います。だから写真は面白い!
連休は雲取山ですか。堀川さんのことだからテント持ちと思いますが、いちばん混雑する時期なので早めにテント場に到着することをおすすめします。私は5月連休の雲取山荘、寝る場所が確保できず、山頂で夜を明かしてしまいました。