平成22年3月21-22日
毎年冬の恒例になりつつある金峰山。奥秩父随一といわれるこの山からの眺望は何度登っても飽きることがない。そしてその山頂に位置する五丈岩の圧倒される威容さ、長く山岳信仰の山として聳え、今でも山伏たちが修行に訪れるのも十分にうなずける。昨年4月、この山の山頂にテントを張った。狙ったのは五丈岩に傾くさそり座、そしてその尻尾のところにある天の川が富士山の上に流れ行く情景だ。しかし、この時は低空に大きな霞と雲が出て、とうとう富士山は姿を現さなかった。1年越しの思いを胸に、再び金峰山に登る。
3月21日は強風吹き荒れる悪天候、前日の天気予報でも再三にわたって強風・突風に注意との予報が流れていた。普通ならばこんな時に標高2,600m近くある山などには登らないもの、しかもその強風吹く山頂にテントを張ろうなどと誰が思うだろうか。しかし、写真家としての経験と勘だろうか、このような荒れた天候の後は空の霞が飛んで凄い星空になることがしばしばだ。山の神様が呼んでいる、天気予報を見ながらそんな気がしてならなかった。午後からは天候回復し、翌日は晴れるとの予報であり、遅めの10時過ぎに瑞牆山荘の駐車場から歩き始めた。空にはゴーゴーという風の音が響き渡る。1時間で富士見平小屋到着、いつもなら連休となれば数張りは張られているテントが、この日は一張もない。さらに1時間で大日岩小屋、ここにも宿泊客やテントの様子はない。誰も歩いていないのかと思いきや、2~3人の新しい足跡が雪の上に残されており、入山者がいることは確実だ。
大日岩 3月だというのにここに雪が無い。
大日岩手前の樹林帯から登山道はアイスバーンとなり、6本歯アイゼンを装着。最も酷いのは大日岩小屋から大日岩に登りつくまでの樹林帯の中だ。ツルツルのアイスバーン、しかも急斜面、アイゼンを思い切り蹴りこみながら登る。大日岩を過ぎた樹林帯の中で、下山してくる2人連れと出会う。強風のため山頂までは行かなかったらしく、千代の吹上から先は吹き飛ばされそうな風が吹いているという。さらに進むと、もう2人とすれ違い、さらに千代の吹上まであと少しというところで単独の若者と出会った。装備からしてテント泊、おそらくは金峰山荘泊りだろう。山上の様子を聞くと、朝は本当に立っていられないくらいの強風だったが、しだいに風が止んできて普通に歩けるようになってきたという。念のためピッケルを装備してきたが、どうやら使わずに済みそうだ。
千代の吹上から見上げる金峰山 風はなんとかなりそうだ。
岩峰の彼方の富士山 空が晴れ、うれしいことに富士山が見えるようになってきた。明日への期待が膨らむ。
途中で昼食をとり大休憩したこともあるが、千代の吹上には午後2時40分に到着した。確かに風は強いが、普通に歩くことができ、また三脚を立てることもできる。しかし、岩の先まで行くと谷から吹き上げてくる風は強烈、目が開けていられない。うれしいことに、朝はどんより雲がかかっていた空はしだいに晴れてきて、富士山が見えるようになってきた。思わず微笑がこぼれる。千代の吹上から五丈岩までの稜線は金峰山の中で最も眺望の楽しめる場所だ。なんとか凌げそうな風だったので、ここからは三脚を担ぎながら、撮影を楽しみつつ歩く。
雪の向こうの富士山
眼前に近づく五丈岩 今年は雪が少なく、ハイマツが大きく露出しているばかりか、ハイマツの中の夏道までが露出していた。
山頂の五丈岩に到着したのは4時半。もちろんこの時間にはもう誰もいない。テントはこの岩の裏側に張ることを最初から決めていたので、そちらに移動する。そこには祠が祭られている。今回は特別な捧げものを持ってきていた。それは、私のブログファンの女性から頂いたドライフルーツ。写真を数枚送ってあげたところ、お礼にドライフルーツの詰め合わせセットをいただいた。甘い良い香りのするこの贈り物、香りだけ楽しんで山頂まで食べずに持ってきたのだ。そして真っ先に神様の祭られる祠にこの贈り物を捧げた。そしてテントを張るのだが、強風に煽られて何度となくテントがひっくり返ってしまう。大き目の石に固定紐を縛り付けてなんとか固定して寝られる状態になった。さらに、真黒な雲が迫ってきたかと思ったら今度は小雪が舞い出す。山の神様は捧げものが気に入らないのか?そして鳥居のある五丈岩山頂側に戻ってみると・・・鳥居の向うの岩にもうひとつ祠があった。こちらにも捧げものを捧げる。ただし、いちじくは1個しか持って来ていなかったので、神様と半分ずつ。いつも私を守ってくれる山の神様に感謝を捧げ、そしてこの贈り物をくださった方の健康と幸せを願いつつ、祈りを捧げる。
甲府盆地側から見上げる五丈岩 この岩の根元に祠があり、その手前にテントを張れるスペースがある。
山の神様への捧げもの 香りの良いドライフルーツの頂き物。
五丈岩と富士山。明朝はこの位置からさそり座と天の川を狙う。この後、山頂には小雪が舞い始める。
一旦テントに戻って食事をとって休憩する。すっかり夜が暮れた7時頃、オリオン座と冬の大三角形が南中しているのがテントの換気窓から見える。見たかったカノープスは低空の霞と雲に隠れて見ることができない。富士山も同様だ。外に出てみると細い月が西の空に傾いていた。五丈岩を入れつつ月とオリオン座の撮影を試みるが、まだ位置が高くて17mmレンズの視野では入りきらない。オリオン座の上部が切れてしまうのだ。あと15分か20分待てばちょうど良い位置に来そうだ。寒い山頂の雪の中でじっと待つが・・・雲が湧いてその後月が姿を現すことはなかった。
月光照らす五丈岩 五丈岩の上のオリオン座は上部が切れてしまっている。もう少し待てば画角の中に入ってくるのだが・・・
五丈岩の上に輝くおおいぬ座のシリウス 雲が多くなり、そのまま回復せず。本日はここまでであきらめる。
8時、テントに戻り、寝る準備をする。再び小雪が舞い始め、あたりは真っ白になり、甲府盆地の明りすら見えなくなってしまう。明日の朝は果たして星は見えるのだろうか?しかし・・・きっと出る、良い景色が見られる、そんな確信めいたものを抱きつつ、8時半には眠りについた。(後編に続く。)
毎年冬の恒例になりつつある金峰山。奥秩父随一といわれるこの山からの眺望は何度登っても飽きることがない。そしてその山頂に位置する五丈岩の圧倒される威容さ、長く山岳信仰の山として聳え、今でも山伏たちが修行に訪れるのも十分にうなずける。昨年4月、この山の山頂にテントを張った。狙ったのは五丈岩に傾くさそり座、そしてその尻尾のところにある天の川が富士山の上に流れ行く情景だ。しかし、この時は低空に大きな霞と雲が出て、とうとう富士山は姿を現さなかった。1年越しの思いを胸に、再び金峰山に登る。
3月21日は強風吹き荒れる悪天候、前日の天気予報でも再三にわたって強風・突風に注意との予報が流れていた。普通ならばこんな時に標高2,600m近くある山などには登らないもの、しかもその強風吹く山頂にテントを張ろうなどと誰が思うだろうか。しかし、写真家としての経験と勘だろうか、このような荒れた天候の後は空の霞が飛んで凄い星空になることがしばしばだ。山の神様が呼んでいる、天気予報を見ながらそんな気がしてならなかった。午後からは天候回復し、翌日は晴れるとの予報であり、遅めの10時過ぎに瑞牆山荘の駐車場から歩き始めた。空にはゴーゴーという風の音が響き渡る。1時間で富士見平小屋到着、いつもなら連休となれば数張りは張られているテントが、この日は一張もない。さらに1時間で大日岩小屋、ここにも宿泊客やテントの様子はない。誰も歩いていないのかと思いきや、2~3人の新しい足跡が雪の上に残されており、入山者がいることは確実だ。
大日岩 3月だというのにここに雪が無い。
大日岩手前の樹林帯から登山道はアイスバーンとなり、6本歯アイゼンを装着。最も酷いのは大日岩小屋から大日岩に登りつくまでの樹林帯の中だ。ツルツルのアイスバーン、しかも急斜面、アイゼンを思い切り蹴りこみながら登る。大日岩を過ぎた樹林帯の中で、下山してくる2人連れと出会う。強風のため山頂までは行かなかったらしく、千代の吹上から先は吹き飛ばされそうな風が吹いているという。さらに進むと、もう2人とすれ違い、さらに千代の吹上まであと少しというところで単独の若者と出会った。装備からしてテント泊、おそらくは金峰山荘泊りだろう。山上の様子を聞くと、朝は本当に立っていられないくらいの強風だったが、しだいに風が止んできて普通に歩けるようになってきたという。念のためピッケルを装備してきたが、どうやら使わずに済みそうだ。
千代の吹上から見上げる金峰山 風はなんとかなりそうだ。
岩峰の彼方の富士山 空が晴れ、うれしいことに富士山が見えるようになってきた。明日への期待が膨らむ。
途中で昼食をとり大休憩したこともあるが、千代の吹上には午後2時40分に到着した。確かに風は強いが、普通に歩くことができ、また三脚を立てることもできる。しかし、岩の先まで行くと谷から吹き上げてくる風は強烈、目が開けていられない。うれしいことに、朝はどんより雲がかかっていた空はしだいに晴れてきて、富士山が見えるようになってきた。思わず微笑がこぼれる。千代の吹上から五丈岩までの稜線は金峰山の中で最も眺望の楽しめる場所だ。なんとか凌げそうな風だったので、ここからは三脚を担ぎながら、撮影を楽しみつつ歩く。
雪の向こうの富士山
眼前に近づく五丈岩 今年は雪が少なく、ハイマツが大きく露出しているばかりか、ハイマツの中の夏道までが露出していた。
山頂の五丈岩に到着したのは4時半。もちろんこの時間にはもう誰もいない。テントはこの岩の裏側に張ることを最初から決めていたので、そちらに移動する。そこには祠が祭られている。今回は特別な捧げものを持ってきていた。それは、私のブログファンの女性から頂いたドライフルーツ。写真を数枚送ってあげたところ、お礼にドライフルーツの詰め合わせセットをいただいた。甘い良い香りのするこの贈り物、香りだけ楽しんで山頂まで食べずに持ってきたのだ。そして真っ先に神様の祭られる祠にこの贈り物を捧げた。そしてテントを張るのだが、強風に煽られて何度となくテントがひっくり返ってしまう。大き目の石に固定紐を縛り付けてなんとか固定して寝られる状態になった。さらに、真黒な雲が迫ってきたかと思ったら今度は小雪が舞い出す。山の神様は捧げものが気に入らないのか?そして鳥居のある五丈岩山頂側に戻ってみると・・・鳥居の向うの岩にもうひとつ祠があった。こちらにも捧げものを捧げる。ただし、いちじくは1個しか持って来ていなかったので、神様と半分ずつ。いつも私を守ってくれる山の神様に感謝を捧げ、そしてこの贈り物をくださった方の健康と幸せを願いつつ、祈りを捧げる。
甲府盆地側から見上げる五丈岩 この岩の根元に祠があり、その手前にテントを張れるスペースがある。
山の神様への捧げもの 香りの良いドライフルーツの頂き物。
五丈岩と富士山。明朝はこの位置からさそり座と天の川を狙う。この後、山頂には小雪が舞い始める。
一旦テントに戻って食事をとって休憩する。すっかり夜が暮れた7時頃、オリオン座と冬の大三角形が南中しているのがテントの換気窓から見える。見たかったカノープスは低空の霞と雲に隠れて見ることができない。富士山も同様だ。外に出てみると細い月が西の空に傾いていた。五丈岩を入れつつ月とオリオン座の撮影を試みるが、まだ位置が高くて17mmレンズの視野では入りきらない。オリオン座の上部が切れてしまうのだ。あと15分か20分待てばちょうど良い位置に来そうだ。寒い山頂の雪の中でじっと待つが・・・雲が湧いてその後月が姿を現すことはなかった。
月光照らす五丈岩 五丈岩の上のオリオン座は上部が切れてしまっている。もう少し待てば画角の中に入ってくるのだが・・・
五丈岩の上に輝くおおいぬ座のシリウス 雲が多くなり、そのまま回復せず。本日はここまでであきらめる。
8時、テントに戻り、寝る準備をする。再び小雪が舞い始め、あたりは真っ白になり、甲府盆地の明りすら見えなくなってしまう。明日の朝は果たして星は見えるのだろうか?しかし・・・きっと出る、良い景色が見られる、そんな確信めいたものを抱きつつ、8時半には眠りについた。(後編に続く。)
それにしても、あの強風の日に金峰山でテント泊とは、すごいですね。
ようやく金峰山でしたね。
それも21日、、
それにしても雪が少ないです。
驚きました。
今日は、降っていることでしょうが、、。
Y-chan