20世紀のヨーロッパには2度の世界大戦があり、お互いに数百万人の国民を殺し合ったのです。ロシアでは2000万人以上の人々が殺されたのです。20世紀に欧米人は気が狂ったのです。人類の歴史上に無い大量殺戮がヨーロッパ大陸で起きたのです。決して尊敬出来ない人々です。
しかし、そんな人々から、日本は科学文明を早急に輸入してきたのです。近代科学とその応用技術です。蒸気機関、ガソリン・エンジンなどの技術の導入によって鉄道や自働車が普及しました。
日本人と比較すると、欧米人の長所は科学的合理主義を根気よく追求するという性質にあります。そしてその追求の仕方が実験による実証を積み重ねて行くという方法をとります。
帆船は追い風を受けて走るのだから風上には走れない! 本当にそうであろうか? 帆の形を色々変えて実験をしてみたところ、風上に走った! もっと早く風上へ走る船の形と帆の形はどう改良すればよいか? 改良を重ねる度に実験をする。そうして西暦1500年ころに3本マストの外洋航海用の帆船が完璧に出来上がったのです。
人間は鳥でないから空を飛べない! そんなことは無い!と思ったライト兄弟は飛行機を作り、何度も実験を繰り返し、ついに飛行機を発明したのです。
東洋人にはその様な発想も無ければ、実験実証主義的な考え方が無いようです。これこそが東洋人と西洋人の重大な相違と思います。
クルーザーヨットを趣味にすると、その部品一つ一つの使用目的に合致した完璧性に感動します。船全体の構造の無駄の無さ、絶対に転覆しないキールの重さ、などなどを体感的に理解出来ます。欧米人の合理主義の極地が理解できます。これこそヨーロッパ文化の神髄と、クルーザーに乗る度に感動するのです。
下の写真をご覧下さい。船の長さ以上に高いマストに、大きな三角形の帆が2枚上がっています。
こんなに大きな帆へ横風が当たれば船は簡単に横倒しになります。それを防ぐために船底に船体の重量と同じくらいの重さの鉄板製のキールがぶら下がっているのです。このキールは横流れも防ぎ、船の直進性を保証します。
2枚の帆の形にも工夫が凝らされています。上になるほど細くなっていて風が船を押し倒す力を小さくしています。帆の形は飛行機の主翼を2枚立てたような形で膨らんでいます。飛行機の揚力の発生と同じ原理で、船が風上に吸いつけられるのです。そのために風上に向かって45度の角度まで登れるのです。
船の中は2部屋や3部屋のキャビンになっていますが、その出入り口の形と位置に工夫があって、船が万一横倒しになっても絶対に水の入らないように設計されています。
その他、帆を引っ張る大きな力は滑車を使い人間の手で簡単に巻き上げられます。それに梃子の原理を使った手動ウインチがあちこちに設置してあって帆綱を巻き上げやすく設計してあります。とにかく一人の人間の力で全ての操作が出来るように巧妙に設計されているのです。
ヨーロッパから輸入された科学や技術を使用する色々な分野の職業で働いている日本人は多いと思います。そいう人々がクルーザーヨットの趣味をもつと、その構造の合理的な完璧性に必ずや感動すると思います。科学的合理性の追求の根気の良さに心底から感激すると思います。単に楽しい、心地よい、というような表面的な楽しみの趣味ではなく、ヨーロッパ文化を楽しむ趣味なのです。
昨年、横浜の、みなとみらい岸壁に係留してある日本丸のデッキの上で、大型帆船の船長をしていた大西典一船長と上のような話をしました。大西船長も大型帆船こそヨーロッパ文化の神髄です。ヨーロッパ文化を知る一番良い方法です。と言っていました。何十年も日本の運輸省(国土交通省)所管の大型帆船に乗っていた大西船長も賛成してくれたので私も確信するようになりました。クルーザーヨットこそヨーロッパ文化の神髄なのです。ヨットの趣味の奥深さを感じながら、楽しんでいます。皆様の趣味はどのようなものでしょうか?
今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。藤山杜人