織田美保子、1945年生まれ、1984年、ガン全身転移で死す。享年39歳。中学1年の娘と小学4年の息子と夫を残して。
夫の織田寧人氏から遺稿集「風を愛したひと」(葦書房1985年6月初版)を送って頂く。・・・・・
このブログでは何回か書評を掲載してきました。しかし、この本を手にした時思わずウーンと唸ってしまいました。あまりにも苦しくて書評の構成が思いつかないのです。
家族を残して若くして突然ガンで死んだ女性です。そのあまりにも若くして死んだ彼女への同情を中心にした内容にすれば簡単です。しかし、それだけでは書評になりません。その上、「文章の書き方」を若いときから勉強していた彼女へ対して失礼です。
迷いながら読みはじめました。
織田美保子さんは何年も、同人誌「群雀」や毎日新聞へ随筆を投稿していました。読み進んで行くうちに彼女が書評の書き方を教えてくれました。感じたことや思ったことをすなおに分かり易く書けば良いと。その上、随筆にも「ミニ随筆」という分野があることを教えてくれました。短いながら鋭い、そして美しい文章で綴った随筆です。散文詩のようでもあります。
その教え通り、これから折々に断片的な感想を書き続けて行くことにしました。そうです。ミニ書評です。これで私はすっかり気楽になりました。
それでは「風を愛したひと」という本の感想を気楽に、素直に書きます。
まずこの本には分かり易い文章しか出て来ません。自分な感じたことを素直に書いています。感動したとか、悲しみに打ちひしがれたなどという大げさな表現がありません。漢語の熟語や気の利いたカタカナの外国語が出て来ません。生きる意味を考えるというような、何を言っているのか分からない抽象的な言葉が出て来ません。
純粋な日本語だけで書くと美しい文章になるのです。彼女の良い人柄、優しさがそのまま表れている文章です。
体が苦しい病床にありながら自分の運命を嘆いてはいません。淡々と苦しさだけは分かり易く書いています。泣いたことは書いていますが悲しさは書きません。
自分と周りの家族の様子を素直に見て、その様子を書いています。
その事実が読む人の心を揺さぶるのです。ガンの恐ろしさが分かるのです。
彼女は状況を分析したり、臆測をしません。素直に医者や看護師の言うことを信じています。夫や子供達を信じています。多くの友人が見舞いに来ます。さわやかに会話を楽しんで、後に見舞いへ対するお礼状を書いています。
性質の非常に良い女性です。多くの友人達が集まって来るのです。
今日のミニ書評はこれでお終いです。この本は「推薦したいブログ」の織田寧人@風工房 へお申込み下さい。贈呈本が送られてきます。下に夫の寧人さんが撮った蒸気機関車の写真を掲載します。彼女の思い出の作品であると想像しています。(続く)
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
藤山杜人