『そうした「世論」に掉さしても、』とありましたが、読者の方から誤字・誤用とのご指摘をいただき、現在の形に訂正させていただきました。
政治家に求められるのは、場合によってはそうした「世論」に逆らっても、「にもかかわらず」と言い切る信念によって、決断することではないか。
民主党議員よ、官報複合体に作られた「世論」に惑わされることなかれ【週刊 上杉隆】
2010年9月9日(木)16:20
の記事です。
この記事自体は、霞ヶ関と記者クラブメディアで作られる「官報複合体」、そこに絡め取られた菅内閣のなりふり構わぬ戦いの様子が垣間見えてきた。とあるように、世論ファッショ(それも官、マスコミ一体となった世論操作)によって民主党の党首選がゆがめられているという論調のまとめ部分の表現です。ただし、誤用は分かりますが、誤字というのは「さお」に関してなのでしょうか。「棹」という漢字でも、正しいとは思いますが(竿でなくて)。
「流れに掉(さお)さす」は、誤用の例としては有名な?慣用句です。
文化庁の平成18年度「国語に関する世論調査」でも、本来の意味は「傾向に乗り事柄の勢いを増す行為をすること」にもかかわらず、これを選んだ人はわずか12.4%。正反対の意味である「傾向に逆らい、勢いを失わせる行為」を選んだ人が63.6%に上り、また、「分からない」も21.4%あった、ということで話題となりました。それがこうして今も堂々と(いったんは)誤用されてしまうようです。
その時の調査。「確信犯」も、正解の「政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」ではなくて、「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪」という誤答が、57.6%で、正答率は16.4%。
「閑話休題」は正解の「さて(話を脇道から本筋に戻す)」(23.8%)と、誤答の「さて(話を本筋から脇道に移す)」(27.0%)がほぼ同じ。4割以上が「分からない」と答えていました。
「役不足」は「本人の力量に比べて役目が軽すぎること」が本来の意味だが、正答率は27.6%。全く正反対の「本人の力量に比べて役目が重過ぎること」(62.8%)の半分にもいかなかったという。
「気が置けない」も本来の「相手に気配りや遠慮をしなくてよい」(44.6%)と、正反対の「相手に気配りや遠慮をしなくてはならない」(40.1%)とが大差なかった。
ところで、この「流に棹さす」という成句、夏目漱石の『草枕』の書き出しで知られています。
「山路を登りながら、かう考へた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」
の「情に棹させば流される」の部分です。
「棹(竿)」とは、岸辺や水底をついて舟を進ませる棒。流れに乗って下る舟で、その竿を操ってさらに勢いを加速させることを「流れに棹さす」という。
そこから転じて、物事を時流に乗せて順調に進行させる例えに用いられ、「彼は巧みに時流に棹さして今日の財を築き上げた」とか「あの企業はIT化の流れに棹さす形で急速に成長してきた」とかいった具合。
ところが、現在は、本来の意味とは逆に、流れのままに動く舟をとどめるために流れに逆らって棹をさす、すなわち時流や大勢、流行に逆らう意と誤解して使われる例が目立ちます。「時代の流れに棹さして世間から取り残される」という用例はその一例。
先ほどの調査で、「その発言は流れに竿さすものだ」の一文を例示し、どの意味で使っているか尋ねたところ、傾向に逆らって、勢いを失わせる行為をすることとした人が6割以上を占めたわけです。「流れに抗する」、「逆行する」という意味で使うのは、全く正反対になってしまいます。うっかり誤用しているという状況でもないようで、例文自体も、そういう誤解を与えてしまうような印象です。
また、「さす」ということばには「水をさす」「魔がさす」など余計なものを差し入れるという意味のことばにも使われます。そこで「棹さす」も流れをせき止めたり、勢いをとめるという感じがする、という指摘もありますが。
果たして、上杉さんの発言。今度の党首選で、世間、世論に棹をさす結果になるでしょうか? こっちもつい誤用してしまいました。
ところで、「情けは人のためならず」などは、今はどのように用いられているのでしょうか。
政治家に求められるのは、場合によってはそうした「世論」に逆らっても、「にもかかわらず」と言い切る信念によって、決断することではないか。
民主党議員よ、官報複合体に作られた「世論」に惑わされることなかれ【週刊 上杉隆】
2010年9月9日(木)16:20
の記事です。
この記事自体は、霞ヶ関と記者クラブメディアで作られる「官報複合体」、そこに絡め取られた菅内閣のなりふり構わぬ戦いの様子が垣間見えてきた。とあるように、世論ファッショ(それも官、マスコミ一体となった世論操作)によって民主党の党首選がゆがめられているという論調のまとめ部分の表現です。ただし、誤用は分かりますが、誤字というのは「さお」に関してなのでしょうか。「棹」という漢字でも、正しいとは思いますが(竿でなくて)。
「流れに掉(さお)さす」は、誤用の例としては有名な?慣用句です。
文化庁の平成18年度「国語に関する世論調査」でも、本来の意味は「傾向に乗り事柄の勢いを増す行為をすること」にもかかわらず、これを選んだ人はわずか12.4%。正反対の意味である「傾向に逆らい、勢いを失わせる行為」を選んだ人が63.6%に上り、また、「分からない」も21.4%あった、ということで話題となりました。それがこうして今も堂々と(いったんは)誤用されてしまうようです。
その時の調査。「確信犯」も、正解の「政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」ではなくて、「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪」という誤答が、57.6%で、正答率は16.4%。
「閑話休題」は正解の「さて(話を脇道から本筋に戻す)」(23.8%)と、誤答の「さて(話を本筋から脇道に移す)」(27.0%)がほぼ同じ。4割以上が「分からない」と答えていました。
「役不足」は「本人の力量に比べて役目が軽すぎること」が本来の意味だが、正答率は27.6%。全く正反対の「本人の力量に比べて役目が重過ぎること」(62.8%)の半分にもいかなかったという。
「気が置けない」も本来の「相手に気配りや遠慮をしなくてよい」(44.6%)と、正反対の「相手に気配りや遠慮をしなくてはならない」(40.1%)とが大差なかった。
ところで、この「流に棹さす」という成句、夏目漱石の『草枕』の書き出しで知られています。
「山路を登りながら、かう考へた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」
の「情に棹させば流される」の部分です。
「棹(竿)」とは、岸辺や水底をついて舟を進ませる棒。流れに乗って下る舟で、その竿を操ってさらに勢いを加速させることを「流れに棹さす」という。
そこから転じて、物事を時流に乗せて順調に進行させる例えに用いられ、「彼は巧みに時流に棹さして今日の財を築き上げた」とか「あの企業はIT化の流れに棹さす形で急速に成長してきた」とかいった具合。
ところが、現在は、本来の意味とは逆に、流れのままに動く舟をとどめるために流れに逆らって棹をさす、すなわち時流や大勢、流行に逆らう意と誤解して使われる例が目立ちます。「時代の流れに棹さして世間から取り残される」という用例はその一例。
先ほどの調査で、「その発言は流れに竿さすものだ」の一文を例示し、どの意味で使っているか尋ねたところ、傾向に逆らって、勢いを失わせる行為をすることとした人が6割以上を占めたわけです。「流れに抗する」、「逆行する」という意味で使うのは、全く正反対になってしまいます。うっかり誤用しているという状況でもないようで、例文自体も、そういう誤解を与えてしまうような印象です。
また、「さす」ということばには「水をさす」「魔がさす」など余計なものを差し入れるという意味のことばにも使われます。そこで「棹さす」も流れをせき止めたり、勢いをとめるという感じがする、という指摘もありますが。
果たして、上杉さんの発言。今度の党首選で、世間、世論に棹をさす結果になるでしょうか? こっちもつい誤用してしまいました。
ところで、「情けは人のためならず」などは、今はどのように用いられているのでしょうか。