おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「ナチズム・地獄と神々の黄昏」(エルンスト・ブロッホ)水声社

2011-07-22 22:15:33 | 読書無限
 著者のブロッホは、1885ー1977年。ドイツのユダヤ系家庭に生まれました。ヒットラーが首相に就任した1933年、ナチスの迫害を避けてチューリッヒに亡命、のちプラハへ移ります。さらに1938年身の危険を感じ、アメリカへ亡命、そこで、ドイツの敗戦を知ります。
 ナチズム・ファシズムの進行という現実の中で、同時代的に批判し、対決する評論を発表しました。内容としては、今で言う「時評」といった趣で、分かりやすい印象。ただ亡命した(ドイツ国内にいたらおそらく死ぬ運命にあった!)以降は間接的な関わりとなってしまったのは、いたしかたありません。
 当時のマルクス主義者にありがちだった、ソ連の政策(ファシズムに抗する闘いの後ろ盾になっているというような)へ過度な信頼と楽観的なとらえ方は、現時点からみれば批判されるべき内容・姿勢となります。しかし、当時のドイツあるいは亡命先において発表された、反ファシズムに立った具体的な政治・社会・文化論は、現時点でもる説得力を持っています。
 当時のドイツがあれよあれよという間にナチスによって牛耳られるようになっていったのか。成立したソ連(社会主義を標榜する国家)に対するヨーロッパ諸国の体制側の危機感・恐怖感(次は我が国に革命が入ってくる)・・・、その中で、ヒットラーが政権を奪い、隅々にまで張りめぐらされた暴力支配。ついには日独伊の三国による第二次世界大戦へと展開していく、それに対抗する言論も公にされないまま(弾圧の結果)全体主義国家として成立していく過程とそれへの抵抗が伝わってきます。
 ドイツ(国民)にとっての大きな転換点となったのが、「国会議事堂放火事件」をきっかけにした共産党への不当な裁判、弾圧だったと筆者は述べています。今の日本とは情勢が違いますが、今の経済不況や不安定な政治情勢を、その原因(敵)を外国に求めたり、内向けには国民の思想統制に向かっていったとき、ダイナミックに情勢が変化してしまうことにもなりかねません。そういった現代的な意味をも感じさせられて、かなりの大部の書ですが、けっこう面白く読み進められました。
コメント
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