おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「L'Uomo che Guarda」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その44。)

2013-10-18 20:56:09 | Tinto Brass


 窃視することで性的快感を感じる青年教授をめぐるドラマ。

 美しい若妻の父親との背徳行為が明らかにされることで、少年期の性的記憶と重なって、より悩みを深めていく。

 1995年公開。



《ストーリー》
 ドド(フランチェスコ・カセール)は大学でフランス文学を教える青年教授。彼の妻シルヴィア(カタリーナ・ヴァシリッサ)とは別居中。
 同居している父アルベルト(フランコ・ブランチャローリ)はリハビリ中にもかかわらず、介護をしているメイドのファウスタ(クリスティーナ・ガラヴァグリア)にちょっかいを出すほど。それを快く思っていないドドは、二人のようすを覗き見する。


 大学での講義後、ドドに魅惑的な女子学生が接近してくる。

 彼女の裸体の写真がかざられた部屋を訪れ、写真を撮っているところへ、 彼女の友人の女性がやってきたことで、性的行為は中断させられるが、期せずして二人の緊密な行為(ドドが期待していた)を覗き見する。

 ドドはアルベルトが持つアパートの部屋の権利を譲渡してもらい、シルヴィアにそこで一緒に住もうと持ちかける。ところが彼女は自分には虐待的な肉体関係を結んでいる男がいると告白。ドドは彼の少年時代、父が娼婦相手のゆがんだ性行為を目撃した、という忌まわしい記憶がよみがえる。


 熱い日差しの中、ヌーディストビーチを歩くドド。男たちと性的快楽におぼれる女性たちの顔が、すべてシルヴィアの顔に。


 ファウスタから父の部屋に妻シルヴィアが出入りし、情事にふけっているのを見たと聞かされ、不安は現実に。

 ドドのアパートを訪れたシルヴィアは、自分の男とは義父アルベルトで、しかも二人の関係は結婚式の日からはじまっていたと告白する。夕焼けの差し込む部屋の中で、ドドとシルヴィアは激しい性行為。


 二人が部屋を後にして行く、その姿を覗き見する男の姿、・・・。



《スタッフ》
監督ティント・ブラス
脚本ティント・ブラス
撮影マッシモ・ディ・ヴェナンツォ

キャスト
フランチェスコ・カセールDodo(Edward)
カタリーナ・ヴァシリッサSylvia
フランコ・ブランチャローリArbert
クリスティーナ・ガラヴァグリアFausta

原題「L'Uomo che Guarda」(邦訳:見る人)英語「The Voyeur」(のぞき屋)。邦題「背徳小説」。

(資料参照:「株式会社キネマ旬報社」より)

 うーん!邦題の方が主人公の男女をめぐる話としては、適切かもしれない。が、主人公の男性の幼児期の性的体験(覗き)が後々まで影響していく、映画の中でも、ポラロイドカメラで撮ったり、他人の部屋を覗いて性的興奮を感じるシーン、またラストシーンなど、ストーリー的には英語の題名の方でよいのではないか。
 ま、それではストレートすぎるようですが。「背徳小説」まさに「物語」という内容ではなく、「背徳という小(さな)説(挿話)」くらいの意味でいいのかもしれません。

 ラストが凝っている。二人が部屋を去るとき、隙間から男らしき人物が(壁に描かれたような雰囲気)が覗いている。テロップもその画面を背景にして微妙に揺れている。かなりどきっとさせる演出。


 ただ作品を通じて感じることは、自由奔放に生きる女性達の描き方に比して、男性の描き方が今ひとつ。「カリギュラ」では俳優の独特の演技力もあって、その異常さ、狂気が描かれていたように思いましたが。
 この映画でも、主人公の葛藤がうまく表現されていない。ちょっとアンニュイな雰囲気は伝わってくるのですが。ただ、不断に見せる、原題に即したような「眼(まなざし)」が主人公の心の葛藤、ゆがみをうまく表現している。
 映像が性的、挑発的な描写に目を向けさせるあまり、主人公の人間的な存在感(屈折、疎外などにさいなまされる人間像)や妻、父親との人間関係の深み(追求)が中途半端に終わってしまった。
 奔放な女性(性)を描くことで一世を風靡した(している)監督、といってしまえばおしまいですが。
 それでも、けっこう魅力的な作品にはなっています。

 「垣間見」る、という行為、または「見る・見られる」関係が示す、文化(人類学)的意味、狭義における性的意味(あるいは性的に屈折した意味)を追求(残念ながら中途半端でしたが)した、おもしろさ。
 さらには大げさに言えば、人類史上におけるポルノという作品の持つ意味(意義)とは、をも合わせ持つ、そんな監督の挑戦的な姿勢を(シニカルな面を)感じました。



※「画像」は、すべて「You Tube」より。

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