Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

生きるための「観念」

2007年09月19日 07時23分05秒 | Weblog
 贈る言葉 改版 (新潮文庫 し 10-1) (文庫) が新潮文庫の「人生で二度読む本」に選ばれたのは当然である。いわゆる70年安保の時代を生きた世代:団塊の世代の純粋さをよくあらわしている。
 主人公は、
「人は、観念なしに、意味ある生を持つことはできない」
と信じる田舎出の青年である。そして、その恋人は、「平凡な家庭の主婦」になることを忌み嫌い、外交官を目指し寸暇を惜しんで勉強する冴えない女学生である。その考えはある意味で一貫しており、彼女は主人公と肉体関係を持つことを頑強に拒み続ける。
 主人公は、「観念と性欲」を対立するものかのようにとらえる。それは、「観念なき意味なき生」と「観念によって意味を与えられた生」の対立と通ずるものがある。だが、私見ではここで既に誤りがある。どちらも人間の脳内の生成物に過ぎないからである。
 皮肉にも、最終的に主人公は「死んだ心で暮らしていく」はめになり、その元恋人も、外交官になる夢をアッサリ捨てて、商社マンの妻として平凡に暮らしていくこととなる。
 ・・・それにしても、「当時の人たちは純粋だなー、それに比べて・・・」と考えさせてしまう小説である。
コメント
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