Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

汗をかかない

2021年07月15日 06時30分52秒 | Weblog
偶像の薄明(角川文庫) 著者 ニーチェ
 「私は昨日ビゼーの傑作を聞いた―――貴方は本気にして下さるでせうか?ーーーこれで二十回目だ。
 「ビゼーの音楽は私には完全だと思はれる。この音楽は軽やかに、しなやかに、鄭重に出てくる。愛すべき音楽だ、汗をかくことはない。」(「ワーグネルの場合」p10~11)

 あるオペラ歌手の依頼者の方に、「初心者向けのオペラとしては、何がお薦めでしょうか?」と尋ねたところ、「カルメンとリゴレットでしょうね」という答えが返ってきた。
 いずれも殺人劇であり、カルメンに至っては舞台上で殺害行為が行われる。
 さすがに当初は物議を醸したらしく、コミック座支配人のド・ルーヴァンは初演前に辞任したそうである。
 初演後に「野蛮なオペラ」と酷評されたカルメンは、やがてチャイコフスキーなどから絶賛されるようになり、ニーチェに至っては20回も観た(聞いた)という(これは結構な散財だったのではないだろうか?)。
 ワーグナーの重々しい「楽劇」、とりわけ「パルジファル」や「ニーベルングの指環」に辟易していたと思われるニーチェ先生は、「汗をかかない」軽やかなビゼーのオペラは「完全」だという。
 意外なことに、ニーチェ先生はドン・ホセではなくカルメンに感情移入しているようで、なんだか微笑ましい。
 まあ、ドン・ホセは、冷静に見ればストーカー殺人犯だから、感情移入するのが難しいという意見も理解は出来る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする