Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

「私」による「公」の僭奪(5)

2022年10月02日 06時30分01秒 | Weblog
 「現状」の硬直化を招くのは、「族議員の力」などの外的な要因だけではない。
 システム内部の要因としては、情報の非対称性に起因する「専門性の壁」という問題が挙げられる。
 第一に、診療側の専門性という壁がある。
 例えば、薬剤の効能や原価などは素人にはおよそ分かりにくい事柄であるから、差し当たり診療側が開示する情報を基に判断を下さざるを得ないと考えられている。
 ところが、(支払側を含む)素人にはこの情報の信用性を判断することが難しいので、誤解や捏造などの余地が出てくるわけである。
 これは、医療過誤訴訟などで患者側弁護士がぶち当たる問題にも似ている(医療事故・医療過誤の裁判は何が難しいのか(医療訴訟の3つの壁))。
 第二に、行政の専門性という壁、よく使われる言葉で言うと「行政国家現象」の問題がある。
 複雑な医療制度全般についていちばん情報を有しているのはやはり行政(事務局)であるから、結局のところ行政が具体的な政策提言を行うしかないのだが、ここに外から見えにくいバイアス(族議員や業界団体からの圧力など)がかかり、既得権としての「現状」の硬直化を招く可能性がある。
 しかも、診療報酬の決定については「経済的インセンティヴ」の手法(診療報酬の点数及び算定要件の設定)がとられているところ、とりわけ点数の設定が複雑化してしまい、容易には変更できない状態が生じた。
 こうして「現状」という偽の均衡状態が硬直化してしまった。
 かつ、旧制度の下では、診療報酬の総額まで中医協が実質的に決めていたところ、高齢化に伴って医療費がどんどん膨張していったことは既に指摘したとおりである。
 それでは、医療費問題における「『現状』の維持又は打破を狙った外部勢力の援用」とはどういうものなのだろうか?
 これについては、中医協の公益委員と会長を務めていた森田朗先生の話が興味深い。
 
コメント
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