「万七肩に負う風呂敷包みより、例の金壺とり出し、
『父さん、金壺は返します。そのかわり、お舟さんをあきらめてくれますね』
と、いいつつ手渡せば、金左衛門、ひしと金壺抱きしめて、
『金壺よ、金壺を、もう決して離れまい、離れまいぞ』
と、京屋の口真似に、各々どっとうち笑う。」
誰もが金左衛門の行動を気味が悪いと思うだろう。
金左衛門の根本思想は、コッペリウス博士のそれと似ているのである(「主体」化、あるいはコッペリウスとプーチン)。
「・・・つまり実力による奪取が蓄蔵貨幣への amour の簒奪に置き換わる。もとよりヴァレールもまた amour に生きる。ヴァレールの amour はもちろんエリーズに対するものであるが、讒訴に対して amour を自白するヴァレールを前にして、同じ amour の世界を生きながら amour と実力支配を同義と捉える新種の人物アルパゴンにとって、蓄蔵貨幣への amour も非論理でも何でもない。」(p109)
井上ひさし氏は、「守銭奴」を換骨奪胎して、金左衛門=アルパゴンの気味の悪さを見事に表現した。
と同時に、日本風に、「イエを捨ててお舟と世帯を持とうとする万七」というポトラッチを設定し、このポトラッチが成功を収めたのである。
・・・ということで、「金壺親父恋達引」のポトラッチ・ポイントは、1.0(★)。