パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「決算!忠臣蔵」を見に行った

2019年11月30日 14時52分08秒 | 見てきた、聴いてきた(展示会・映画と音楽)

母方の祖母は自分の娘(叔母)に「生まれたのは討ち入りの日」
と、ことある事に話していた(らしい)
最近ではあまり騒がれなくなったが、一時期「忠臣」の鑑として
あまり良くない方向に利用された感のある「忠臣蔵」
個人的には歌舞伎のストーリーは上手くできているというものの
仕返しのような内容は、関係ない人(吉良さんを守ってる人)も傷つけることになるので
共感しかねるものだった

最近読んだ江戸時代の歴史書には、赤穂事件のきっかけとなった松の廊下の刃傷沙汰の原因は
浅野内匠頭の家系の病気とか切れやすい性格だったとか、吉良さんが悪いばかりでもなさそうな
一次資料が存在するらしい

映画「決算!忠臣蔵」を見に行った
原作の「忠臣蔵の決算書」は何年か前に読んだ
例のごとくあまり覚えていないが、かすかに覚えているのは江戸までの交通費・宿泊費が
事細かに書かれていたこと
藩の取り潰しの際の退職金は下に厚くなるような気配りがされていたこと
京都での遊興は大石内蔵助の自腹で行ったこと
瑤泉院にキチンと会計報告をして、この会計報告が忠臣蔵を研究する人たちの貴重な資料となっていること
などだ

最後のキチンと会計報告をしているところなどは、大石内蔵助は単なる「忠臣」だけでなく
実務的な行政マンなのだな、、と実感したものだった

映画はいろんな見方ができる
吉本興業のスタッフがメインなのでお笑いの視点はもちろんのこと
番方(武官の系統)の勝手なお金の使い方は役方(文官・事務の系統)にとって
理解できない乱費で、これを怒る様子は現在の騒ぎになっている「桜を見る会」の
身内に甘い浪費を連想させる
まさか吉本興業はそこまで考えていなかっただろうが、結果的には皮肉な作品として
見ることができる

岡村隆史の登場シーンに「ないない!」
とあったのは、少し笑えた

番方と役方、平和な時代になって番型の役割は低下していき、徐々に役方が実権を持つようになる
その実態にイライラする番型は、感情的な勢いだけで「討ち入り」を目指す
ところが財政的な裏付けが全然ない
ここで登場するのが大石内蔵助と友人の下級武士で役方の岡村隆史の演ずる役
何かのために!とへそくりとか財政調整基金みたいなものを溜め込んでおき
当時の常識となっていた吉良さんへの賄賂(みたいなもの)も用意していた

こうした現実的な思考が役方の大事なところだが、ここで不意に思い出したのは
先の戦争のときの軍部と文官の認識の違い
戦争を始める前から戦力の差は歴然としていた
この映画に出てきた山鹿流の戦術(1対1で戦うのではなく、1対多の状況を作る)は
既にその当時でも発表されていたランチェスターの法則にとそっくりで
それほど難しく考えなくても常識的にも戦力が多いほうが有利なのはわかる
その戦力を支えるのが経済で、それをよく考えていたかといえば、、、

時には清水の舞台から飛び降りることも必要だ、、とか、
日本人は精神力が優れていうるので戦力差のハンディはなんとかなると
無責任な言動で戦いに導いた人物
そしてその結果は、、、
不安なのは、それと似通った人たちが今もいるような気がしている

このような視点から見ると、この映画はエンタメでありながら極めて政治色の強いものとなる
でも、残念ながらそう思う人は少ないだろうな
(自分が感じたのだから何人かは同じ様に感じるだろう)

※安倍さんが吉本興業に各種補助金を出しているようだが
 その吉本興業がこのような皮肉が効いた映画を作るところは
 さすが関西!と褒めておこう


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする