フェイスブックから2年前の、三遊亭円朝出演中の寄席の前を、円朝作〝牡丹燈籠〟の出演者お露とお米が行く。私が考えそうな調子である。その前は、円朝が立っていた。『鏑木清方作〝三遊亭円朝像〟へのオマージュ』がいきなり完成し、これからは陰影を一切取り去るぞ、と勢い込んだものの、寄席から漏れる光を円朝に当てたい。矛盾を受け入れられない私は悩んだ。さらにその後、つげ義春作品『ゲンセン館主人』では、行灯の光を半裸の女に当てたい。それはそうしたものであろう。しかし川瀬巴水の新版画の、モチーフによって陰影を描き分けているのを見て、同一画面に矛盾さえなければ良いのだと思った。 だがしかし。今回の室生犀星では、気が付いたら、人間の女性と、いかにも人形の犀星が腕を組んで歩いている。同一画面に矛盾だらけである。人形を被写体としながら、ある種のリアルさを追求してきた私が今回は〝だって人形だもの〟となった。これには娘が実は金魚であり、その多くでその実体である金魚を付き添わせて、もはや嘘も本当も人形も金魚も陰影もないだろうと考えたからである。私にとっては、〝思えば遠くに来たもんだ〟という心境である。ところで、円朝をどかしてお露とお米を配した作品。幽霊なら、寄席の灯りも当たらないだろう、実に真面目に考えていた2年前であった。
『我が肌に魚まつわれり』 (蜜のあはれより)
7月17日~8月4日本郷『金魚坂』にて。29日はお休みです。8月1日は犀星生誕130周年。
【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第15回『美容院には行かないで』
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『石塚公昭 幻想写真展 生き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界