映画の最後の踊りや独特の文化の表出で人気があるインド映画。インドでは、日本の2倍ぐらいの映画が製作され、数多くの国民が映画を楽しんでいるとか。
この作品も、圧倒的なおもしろさがある。ただ、ラストに歌って踊ることはないのだが、あらゆる場面でインド映画らしさが表現されている。
舞台はインドの田舎町。レスリングの元選手であるマハヴィルは、世界大会に出て金メダルをとることが夢だったが、生活のためにレスリングを諦めなければならなかった。そんな彼は、金メダルを自分の息子に取らせることが夢。だが、産まれきたのは女子ばかり4人。マハヴィルを落胆させる。
10数年後、長女のギータと次女のバビータが近所の男子をぼこぼこにし、その母親が乗り込んでくる。
マハヴィルは、娘たちに相手をどのようにぼこぼこにしたのかを聞きき、レスリングを教えることを思い付く。娘たちに、レスリングで金メダルを取らせる!
次の日から、ギータとバビータに厳しいトレーニングが課せられる。
女の子にレスリングをやらせるなんて、村の噂になると反対する母親のダーヤだったが、マハヴィルはそれは今だけと聞き入れることはなかった。
娘たちは娘たちで、あらゆる策で拒否姿勢を見せるのだが…。
環境の整わない田舎町でのトレーニングと父親の愛情に注目。しかも、父と子の話だけではなく、インドがかかえる人権的問題にも触れることができる。
世界的には小さいことでも、社会を動かすことはできると提示されているとも言える。
そして、ギータはナショナルチームでトレーニングすることになり、マハヴィルの下を旅立っていくが…。最後は絶対ああなるやろう、とわかっている。そうにしかならんやろ、と思う結末しかないけれど、泣くし、笑う。
羽目を外したギータとバビータに友人は言う。「あなたたちは、父親に愛されている。インドの娘は成長すると顔も知らない人に嫁にいって、子育てするだけ。子どもを産む道具にされるだけ。でも、あなたたちは違う。愛されている」と。インドでは女性の地位が低く、適齢期になると強制的に結婚させられる。そうではない道をマハヴィルは娘たちに示すのである。
ところで、父のマハヴィルは、やたらめったらと根拠のないトレーニングをしていたわけではない。父だから優れた指導をできているのではなく、その子の特性をみている。親子鷹がすべて成功するわけではないとうことは踏まえておきたい。
過去にギータは吉田沙保里と対戦し、負けている。また、妹のバビータは、川井梨沙子と対戦し、勝っている。映画のモデルとなったギータは吉田沙保里の大ファン。その声を聞き、吉田沙保里も川井梨沙子もこの映画を鑑賞している。
「ダンガル」とは、レスリングの意味。マハヴィルを演じているのは『きっと、うまくいく』のアミール・カーン。体重を増減して役作りすることで有名なカメレオン俳優の彼の作品にはずれはないということで。
蛇足、あたまの堅い日本相撲協会の関係者もこの映画を見てみては?なんか学べるかも。
(4月6日公開)