両親を交通事故で亡くした15歳の朝(早瀬憩)は、葬式の席で親戚たちに
「これから親戚を盥回し?」などの心無い言葉を投げかけられる。そんな時、
母の妹である槙生(新垣結衣)から「あなたを愛せるかどうかはわからない。
でも、わたしは決してあなたを踏みにじらない」と言い放つ。こうして、槙生
は誰も引き取ろうとしない朝を引き取ることに。ほぼ初対面のおばと姪の共同
生活が始まる。
槙生は人気作家だが人見知りで、掃除が苦手。導線以外は物で溢れる部屋に
住んでいた。朝は人懐っこくて素直な性格。そんな二人の生活はどこかぎこち
ない。朝にとって、槙生はこれまで会ったことのないタイプの大人だった。対
照的な二人の生活は、戸惑いの連続。だが、少しづつ距離は近づいていた。だ
がある日、槙生が朝に大事なことを隠していたことを知り、衝突してしまう。
年齢も生きてきた背景も性格も違う二人が、家族とも友人とも言えない不思
議な関係を築いていく…。家族の形はいろいろあっていい。一緒にいたい人と
いればいい。そう思える愛しい物語だ。
ヤマシタトモコの人気コミックを映像化。監督と脚本は『ジオラマボーイ・
パノラマガール』(20)など繊細な作品を手がけてきた瀬田なつきが務めた。
槙生の親友を演じたのは夏帆。この夏帆が、いやこの夏帆もやっぱりいい。出
番は少ないが、包容力があり、フラットな立場の人物を巧みに演じている。場
面がグッと閉まる。他にも瀬戸康史、染谷将太、銀粉蝶という実力派も出演
している。それぞれに、短い時間の登場だが個性を発揮している。
新垣結衣は、若いころは表情の動きが薄かったが、最近は表情の動きが豊か
になり表現の幅が増えたと思う。中堅どころの大切な俳優の一人。また、姪役
の早瀬憩はオーディションでこの役を得た。中学生から高校生となる思春期を
ハツラツと演じた。これからの作品を注目していきたい。