友人の死後でも、SNS(交流サイト)上に痕跡が残っている。この不思議な感覚から生まれた
物語。
作・演出は加藤拓也。29歳。今年、讀賣演劇大賞で優秀演出賞、岸田國士戯曲賞を受賞し、
注目を集めている。
かつて、一緒に活動していた劇団仲間のもとに、一人の男が訪ねてくる。故郷に帰ると淡々と
話すが、その近況は思いがけないものだった。ステージ4のガン。そのこともあり親と暮らす、
と。その事実を聞いた仲間たちは、驚き、昔をなつかしむ。
舞台の背景は、白めの壁と長椅子の形式で台がしつらえられた一つの部屋。その椅子の下は開
閉ができるようになっており、小道具が出てくる。この小道具を出しながらあるいは直しなが
ら役者は演じる。机は、裏返しとなり、乳母車としても利用されていた。舞台転換はないが、
壁にも仕掛けがある。小劇場系の良さがあり、おもしろい。秀作だと感じながら観劇していた。
物語は、過去と現在を行き来するが、出演者の学生時代の格好や髪型も工夫されている。
この物語の主演は当初、窪田正孝だったが頸部のけがのために降板しており、平原テツに交代
している。劇団仲間には、夏帆、今井隆文、豊田エリー。地元の同級生は鈴木杏が演じている。
鈴木杏が出演する舞台は何度か観ているが、今回は制服姿を見せていて、これがまたスタイル
のいいこと!足が長い!細い!そして、学生姿で弾けていた。だが、バツ1子持ちの役という…
現在パートだった。
脚本家の役は橋本淳。冒頭は、客席を歩きながら、飴を観客に配るところから始まった。
当方は舞台「エヴァンゲリオン」以来、新たな窪田正孝を観るのを楽しみにしていたが、持ち
越し。この芝居でのセリフいっぱいの役も観たかった。
東京公演は10月1日までシアタートラムだったので、おそらくこの舞台は小劇場が似合う。
10月4日から9日まで公演だった大阪は、森ノ宮ピロティホール。ここは少し大きかったかも
しれない。
未知の世界です。