2014年7月15日参院予算委で「集団的自衛権及び外交安全保障を巡る諸問題に関する集中審議」が行われ、主濱了(しゅはま りょう)生活の党副代表集が質問に立った。安倍晋三との質疑全文は生活の党から送られてきたメルマガがリンクしてあったPDF記事に拠った。
《2014年7月15日参院予算委主濱了生活の党副代表『憲法の明文に反するいかなる法律、閣議決定も無効である』》
主濱了生活の党副代表「生活の党の主濱了であります。
生活の党は、憲法第9条の解釈は、戦後から現在までの長年にわたる国会審議において、言わば国会と政府の共同作業によって築き上げられてきたものであります。国会審議を経ることなく一内閣の閣議決定によって軽々に変更が許されるものではないと、このように考えているのでございます。
さて、質問通告しておりますけれども、二つ飛ばしたいと思います。実は、大塚委員の方から質問がありました。一つは明白な危険について、もう一つは閣議決定のその実力を行使することと先制攻撃についての問題であります。
このことも踏まえまして、7月1日の総理の会見について、中心にお伺いをいたしたいと思います。これは福山委員の方からもう既にお話があったわけですが、重ねて質問をさせていただきます。
7月1日の会見で安倍総理は、外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるという誤解があるが、あり得ないと、このように強調をされております。しかし、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、閣議決定の文書では『我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、』とありますけれども、実力をもって阻止する権利であると、このように解されているところであります。
とすれば、日本と密接に関係ある外国が攻撃をされれば、日本は密接な関係にある外国を攻撃した国、相手国に対して実力行使、攻撃をせざるを得なくなる、攻撃をすることができることになるわけであります。日本から攻撃を受けた相手国は、その日本の攻撃に対して、個別的自衛権に基づいて防衛のため日本に対して武力行使をすることになると、こういうことになるわけであります。この時点で日本はまさに武力による報復攻撃応酬の当事国になると考えられます。すなわち、国民は戦争に巻き込まれることになります。
以上申し上げたとおり、安倍総理のお言葉とは全く逆に、集団的自衛権の行使は、日本が紛争の当事国になり、自衛隊はもとより国民を武力を行使する紛争に巻き込むことになると、こう考えられると、このように思います。
このことについて、改めて安倍総理の御所見を伺いたいと思います」
安倍晋三「今回のこの閣議決定の目的はただ一つでありまして、国民の命と幸せな生活を守るため、守り抜くためでありまして、万全の備えをつくっていく、こうした備えこそ万が一の事態の発生を防ぐ大きな力となると、このように思っております。
今委員がおっしゃった点でございますが、我が国と密接な関係にある他国、これは条件の中に入っておりますが、三要件の中に入っておりますが、しかしこれは、国の存立が脅かされ、国民の命、生命、そして自由、幸福を追求する権利が根底から脅かされるという明白な危険がない限り、これは対応することにはならないわけでありまして、今委員がおっしゃった例は、まさにいわゆる集団的自衛権の行使、これをフルで認めたときはそうなるわけでありますが、それではないわけでありまして、他国を守るために武力を行使することはないわけであります。他国を守ることを目的に武力を行使することはないわけでありまして、海外派兵は一般に許されないという従来からの原則も全く変わりません。
そして、自衛隊が、武力の行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからもないわけでございまして、よって、外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるというのは、これは誤解であるということは申し上げておきたいと思います」
主濱了生活の党副代表「その点については何回もお聞きしたところでありますが、いずれ、大きな違いは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、なくても行うと、ここが大きな私は分かれ目だというふうに思っております。
ですから、これは本当に今までの流れとは全く違う流れであると、こういうふうに思っているところでございます。
平和主義というのは日本国憲法の原則の一つであります。武力の行使、「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する。」などの明文の規定がはっきりあるわけであります。
この憲法の明文の規定に反するいかなる法律も、もちろん閣議決定も含めてでありますけれども……」
山崎力委員長「そろそろおまとめください」
主濱了生活の党副代表「この憲法の明文の規定に反するいかなる法律も閣議決定も違憲であり、私は無効であると、このように考えるものであります。
従って、たとえ数の力によって関係法律が成立したとしても、そもそも違憲でありますから、憲法81条、司法あるいは裁判所によって無効が確認されると、このように考えるものであります。
山崎力委員長「質疑をおまとめください」
主濱了生活の党副代表「以上申し上げて、質問を終わります。ありがとうございます」
山崎力委員長「以上で主濱了君の質疑は終了いたしました」(拍手)
散会――
主濱了生活の党副代表が「その点については何回もお聞きしたところでありますが」と言っているように安倍晋三は「自衛隊が、武力の行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからもない」とか、「外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるというのは、これは誤解である」等、安倍式集団的自衛権行使を以てしても戦争に巻き込まれることはないことの常套句として使っている。
念の為に改めて安倍内閣が2014年7月1日閣議決定の集団的自衛権行使の3要件を取り上げておく。
①我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求
の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。
②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき
③必要最小限度の実力行使する――
安倍晋三は今回、集団的自衛権の行使には至らないかのような印象を与える尤もらしい言葉の操作を二度行っている。
一度目は、「我が国と密接な関係にある他国、これは条件の中に入っておりますが、三要件の中に入っておりますが、しかしこれは、国の存立が脅かされ、国民の命、生命、そして自由、幸福を追求する権利が根底から脅かされるという明白な危険がない限り、これは対応することにはならないわけでありまして」と答弁しているが、「明白な危険がない限り、これは対応することにはならない」と言うことで「明白な危険」がさも発生しないかのような印象を与る言葉の操作をしている。
だが、あくまでもそういった「明白な危険がない限り」の限定づきであって、その限定が絶対的なものであるなら、3要件で「明白な危険がある場合」と謳っていることと矛盾する。謳っている以上、集団的自衛権の行使もあり得ることになり、「これは対応することにはならないわけでありまして」と言っていることはまさに詭弁以外の何ものでもない。
二度目は、「今委員がおっしゃった例は、まさにいわゆる集団的自衛権の行使、これをフルで認めたときはそうなるわけでありますが、それではないわけでありまして」と答弁していることである。
主濱了生活の党副代表は3要件にあるように我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合の集団的自衛権行使は日本が武力攻撃が発生した国と戦うことを意味することになって、「日本はまさに武力による報復攻撃応酬の当事国になる」と追及した。
だが、安倍晋三は集団的自衛権の行使を「フルで認めたときはそうなるわけでありますが、それではないわけでありまして」と、どのような保証があって言っているのか、ここでも集団的自衛権行使を「フルで認め」るような事態は起きないかのような印象を与える言葉の操作を行って、「他国を守るために武力を行使することはない」と断言している。いわば集団的自衛権行使には至らないと。
もし事実、集団的自衛権行使を「フルで認め」るような事態が起きないことが絶対保証されるなら、3要件を閣議決定したことと矛盾する。
要するに詭弁を用いて主濱了副代表が言うような「報復攻撃応酬の当事国」にはならないと思わせたに過ぎない。
安倍晋三は「他国を守るために武力を行使することはない」と言い、「他国を守ることを目的に武力を行使することはない」と同じ趣旨の言葉を繰返しているが、新3要件を厳密に解釈するなら、確かに他国を守ることを直接の目的としていないものの、他国に対する武力攻撃が我が国の存立や国民の生命、自由及び幸福追求の権利を脅かす恐れが想定される場合、国の存立と国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守ることを直接の目的として、「他に適当な手段がないとき」という条件付きながら、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除するために、「必要最小限度」と謳ってはいるが、実際に戦闘が行われた場合どこまで「必要最小限度」を守らせてくれるか分からないが、集団的自衛権に基づいた武力の行使を認めるということを言っているはずである。
いわば新3要件が想定した集団的自衛権行使の場面は集団的自衛権行使に基づいた武力行使を手段として他国を守り通さなければ、我が国の存立と国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から脅かされることになり、他国を守り通すことによって我が国の存立と国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守ることができるが、逆に他国を守ることができなければ、我が国の存立と国民の生命、自由及び幸福追求の権利が深刻な状況に立たされるという、両者を切っても切れない関係に置いたことになる。
と言うことは、他国を守ることを直接の目的としてなくても、国の存立と国民の権利を守る目的と武力行使を用いて他国を守る目的を一致させなければならない。一致させなければ、両者共に共倒れの形で破綻することになる。
当然このような構図は安全保障上の国家危機管理から主濱了副代表が言う「報復攻撃応酬の当事国」となることをも想定しなければならない。
いわば戦争に巻き込まれ、戦争をする国となる場合もある集団的自衛権行使を意味していることになる。
だが、安倍晋三は「他国を守るために武力を行使することはないわけであります」と言い、「海外派兵は一般に許されないという従来からの原則も全く変わりません」と言い、「自衛隊が、武力の行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからもない」と言い、「外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるというのは、これは誤解である」と言っている。
もし安倍晋三が自身の解釈に間違いないと言うなら、新3要件がどのような構図を持たせた集団的自衛権行使となっているか、説明させるべきである。