昨年2013年8月19日、東電福島第1原発が3号機の瓦礫撤去作業を行った際、放射性粉塵が飛散して、20キロ余り離れた南相馬市の14個所で収穫されたコメから国の基準の1キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウムが検出されたことは7月17日の当ブログ記事で既に取り上げていたが、果して隠蔽してもいい情報なのかどうかに焦点を当てて、改めて記事にしてみる。
「asahi.com」記事によると、南相馬市のコメから国の基準値を超える放射能セシウムが検出されたのは10月以降と記している。
11月20日、南相馬市農業委員会は作付開始反対を表明。
12月13日、南相馬市の農業関係者会合で農水省から「基準以下のコメは政府備蓄米として買い取る。基準超は東電が賠償する」と説明され、作付再開受入れを決定。但し農林省はコメへの放射性セシウム付着が福島第1原発の瓦礫撤去作業による放射性物質飛散の可能性を説明しなかった。
いわば情報隠蔽を謀った。
今年2014年3月3日、農水省は東電に対して瓦礫撤去がコメ放射能汚染の可能性を伝えて、再発防止を要請。
7月14日、朝日新聞が瓦礫撤去が汚染原因の可能性を報道。
7月18日、農水省は瓦礫撤去が汚染原因の可能性を初めて地元に説明。
7月22日、林農水相が「不安を招いた。申し訳ない」と陳謝。
7月23日になって、各マスコミが瓦礫撤去作業で飛散した放射性物質は1兆ベクレルを超えるという推定結果を東電が発表したと報じた。最大で1兆1200億ベクレルの推定値だそうだ。
〈福島第一原発では、現在も1時間当たり平均で1000万ベクレルの放射性物質が放出されているとみられてい〉ると、「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。
以上のような経緯を新聞やテレビニュース、更にはテレビの各ワイドショー番組で突きつけられた場合、汚染場所が南相馬市限定、あるいは汚染農産物がコメ限定と考える人間がどれ程いるだろうか。
限定ではないと疑うのが人間としての自然な疑問であるはずだ。
場所に限って言うと、疑いが疑いで終わらずに事実であることを示す証拠となる記事がある。小泉昭夫京大教授(環境衛生学)の研究グループが福島県内で実施した調査のうち、住民の被曝量推計のために相馬市、南相馬市、福島県川内村の3カ所で大気中の粉塵を集めて放射性セシウム濃度を計測したところ、原発から北西48キロの相馬市玉野地区で集めた、東電3号機瓦礫処理の時期と重なる昨年8月15~22日分から、他の時期の6倍を超す1立方メートル当たり1.28ミリベクレルの放射能を検出したと、7月17日付「河北新報」記事が伝えている。
相馬市は原発から約50キロ離れているという。つまり第1原発から20キロ余り離れた南相馬市に限らず、さらに約30キロ離れた相馬市をも、汚染量は遥かに少ないものの、他の時期の6倍を超す量で汚染させていた。
また、人体への放射能汚染を疑う人々も出てくるに違いない。
だからと言って、隠してもいい事実であり、情報だったのだろうか。
林農水相がこれらの情報隠蔽に謝罪したという記者会見発言の中から、情報隠蔽の理由を話している個所のみを農水省のHPから転載してみる。
林農水相「はい。この間、申し上げたようにですね、その段階で分かったことをですね、申し上げるということについてですね、いろんな調査の結果について、白黒はっきりしないものについてはですね、現場の混乱を避けるという意味で申し上げなかったことがあったと、こういう報告を受けておりますが、今後は、こういう、この先方からですね、そういう御要請があったので、今後はですね、白黒はっきりしないことであってもですね、しっかりと共有をすると、こういうふうにいたしたいと、こういうふうに思っております」――
「白黒はっきりしないものは現場の混乱を避けるために申し上げなかった」が、「今後は白黒はっきりしないこともしっかりと情報共有する」と言っている。
いわば白黒はっきりしない事実の情報開示は現場の混乱が生じると言っているが、だからと言って、国民の生活や活動に関係していく情報を開示とは逆の方向の隠蔽を謀っていいものだろうか。
無能菅仮免政権も原発事故に関しては不必要な混乱を招かないためとか、不必要な不安を生じさせないためとかの理由をつけて情報隠蔽を犯してきた。
原発事故が発生して大量の放射漏洩が起きたとき、無能菅仮免政権は当初SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を用いた地域ごとの放射能物質拡散状況と地域ごとの放射能物質量の推定値を公表しなかった。
菅仮免は「所管する文部科学省などから説明がなく、事故から数日たってもその存在すら知らなかった」と言っている。
だが、無能菅は2010年10月20日に自身を原子力災害対策本部長とした浜岡原発事故想定の「平成22年度原子力総合防災訓練」をテレビ会議システムの使用も含めて行い、SPEEDIを用いて漏洩想定の放射能拡散予測を行っているのだから、存在を知らないでは済まない立場にいた。
当時の細野首相補佐官が2011年5月2日の記者会見で公表しなかった理由を述べている。
細野補佐官「(SPEEDIの予測結果を)公開することによって、社会全体にパニックが起きることを懸念したというのが実態であります」
公開・未公開の最終決定判断は細野にあるはずはなく、菅仮免にあるはずでだから、太々しい殺人犯が物的証拠を突きつけられながらしらばっくれるみたいにシラを切っていたということなのだろう。
無能菅仮免政権ではSPEEDIのみならず、米エネルギー省が2011年3月17日から3月19日にかけて軍用機を使って福島上空の放射線量を測定した「福島上空放射線量測定データー地図」を文科省と保安院に伝えながら、官邸に報告もせず、公表もしなかった。
果たして官邸に伝えなかったというのは事実なのだろうか。原発事故から2ヶ月しか経過していない。SPEEDI同様に「社会全体にパニックが起きることを懸念」して官邸の指示で公表しなかったが、米エネルギー省からデータが渡っていたことが世間に知れて、官邸が情報隠蔽ということになったら支持率に響くから、文科省と保安院が揃いも揃って官邸に報告しなかったことにした怠慢の罪で片付けた疑いは捨てきれない。
確かに南相馬市のコメから国の基準1キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウム検出は福島原発3号機瓦礫撤去作業に伴う1兆ベクレル超放射能物質飛散の原因可能性の公表はなかなか払拭できない風評被害を一気に拡大方向に持っていきかねない危険性を抱えて、政府の責任を追及する声も上がるだろう。
安倍晋三も福島・岩手・宮城の被災3県をほぼ1ヶ月に1回視察し、そのうちの何回かは福島に訪れてイカやタコやシラスや、その他その他を試食して、風評被害払拭に努めている努力に冷水を浴びせかねず、支持率に影響が出かねない。何事もなかったと装うのが一番である。
いわば風評被害抑制や現場の混乱防止、あるいは人体への放射能汚染懸念回避を優先させて、一部分、安倍内閣の支持率低下を避けるために国民の知るべき情報ではないとした。
言い替えるなら、国民の生活や活動に不都合な情報は、一部安部政権に不都合な情報も含めて開示とは正反対の情報隠蔽を謀った。
確かに情報を隠すことによって風評被害の拡大防止には役立つかもしれない。だが、コメ生産の現場はコメの放射能汚染量が急に増えて、生産したコメを全部廃棄している。しかも原因が不明で、その得体の知れなさに今後の生産の見通しを含めて不安に陥れることはなかったろうか。
例え同じ廃棄するにしても、原因が分かっていることによって、将来の生産の見通しが立つ。
実際には作付を開始したものの、放射能に対する不安は原因不明なのだから、消えなかったはずだ。原因不明の病気にかかった患者の不安に似ているはずだ。不安を抱えたままコメを生産していくことになる。
人体への影響にしても、政府の情報隠蔽によって人体が汚染されていることを知らぬが仏で特に不安を感じていなくても、実際に影響が出てきたとき、現実にも甲状腺異常の子どもが増えているということを考えると、原因不明の不安は途轍もない空恐ろしさを与えるはずだ。
こういったことは一切ないと仮定したとしても、開示は不都合だからと言って、国民の生活や活動に混乱を招かないためにという理由で政府の判断で国民の知るべき情報ではないと選択して隠蔽を謀ってもいいだろうか。
それがいつ国民のためであるよりも政府のための選択に早変わりしない保証はない。政府のために国民の知るべき情報ではないとした場合、これ程の恐ろしいことはないはずだ。
大体が農水省が最低昨年2013年12月13日の時点以前にコメへの放射性セシウム付着が福島第1原発の瓦礫撤去作業による放射性物質飛散の可能性を把握していながら、東電に対して瓦その可能性を伝えて、再発防止を要請したのは約3カ月近く経過した12月13日である。
当初の情報隠蔽がそうさせた情報伝達の遅れであるはずである。いわば情報隠蔽がなかったら、情報伝達の遅れもなかったとすることができる。
1号機で瓦礫の撤去を行うために建屋を覆うカバーの解体が近く予定されているという。カバー内側にも大量の放射性物質が付着しているはずだ。
もし朝日新聞が報道していなかったら、例え農水省が対策を東電に要請したとしても、東電は情報隠蔽を前提に対策をカネをかけないためにいい加減なところで手を打ち、ある程度の放射能物質飛散は止むを得ないとカバー解体工事ばかりか、瓦礫処理そのものも強行しないとは限らない。
昨年8月、汚染水を貯留しておく組み立て式タンクから高濃度の放射性物質を含んだ汚染水約300トンが漏れた事態が発生したにも関わらず、昨年9月27日に衆院経済産業委員会で参考人として呼ばれた〈広瀬東電社長は組み立て式のタンクが溶接型に比べて漏洩の可能性が高いことを認めつつ、「組み立て式は圧倒的に施工のスピードが速いので、まず優先して造った」、「急いで造ったのは事実」〉と発言、実際にはその中に中古品が含まれていることに一切触れていなかったと2014年7月23日付の「毎日jp」が伝えている。
中古品の数は20~30基。溶接型に比べて漏洩の可能性が高い組み立て式タンクの中古品と言うことなら、なおさらに漏洩の危険性が高まることになる。だが、そういった危険性に対する危機管理もなく、経費も安価に済むことになり、数さえ揃えればいいとしたのだろう、いい加減なところで手を打った。
この前科は瓦礫処理でも発揮されかねない危険性の証明に十分になり得る。特に情報隠蔽の状況下にあったなら、前科は後ろ暗さもなく再犯されかねない。
だが、国民の生活や活動に混乱を招きかねないとする口実で情報隠蔽を謀らず、情報開示していれば、マスコミや国民の目が監視役を務めて、東電の元々からある杜撰な体質を反映させたいい加減なところで手を打つ遣り方の防止策となるはずである。
だが、こういったことを考えない農水省の情報隠蔽は、林農水相に伝達されていなかったとしたら、省の秘密体質はなおさらに問題となるが、安倍内閣成立・公布(施行は公布の2013年12月13日から1年以内)の特定秘密保護法との関連付けで言うと、何を秘密とされるか分からない恐ろしさを提示させていることになる。