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《『生活の党 機関紙15号』》
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◆小沢一郎代表 巻頭提言
野党再編の最大の目的は政権交代。その実現に向け、野党は非自民で連携し各選挙区で統一候補を出すことが重要
◆声明:集団的自衛権行使を容認する閣議決定を受けて 小沢一郎代表
2-3P
◆第186回国会活動報告
「改正国民投票法」成立、「歳入庁設置法案」、「死因究明等推進基本法案」、「公認心理師法案」他の国会提出
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◆OPINION :法政大学法学部教授 山口二郎
一強多弱を打破するために
◆訪米活動報告:市民の声を米国各層へ 玉城デニー幹事長代理
5月26~28日にスウェーデン・ストックホルムで開催した日朝政府間協議を「特別調査委員会」の組織実効性を問うために7月1日にも再度開催を予定していた中で、北朝鮮は6月29日午前5時頃、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。
同じ6月29日の昼前に岸田外相がカンボジア訪問のために羽田空港を出発している。待ち構えていたのだろう、記者たちが早速北朝鮮の弾道ミサイル発射を質問した。
岸田外相「今回のミサイルの発射は日朝ピョンヤン宣言や国連の安全保障理事会の決議などに違反しており、日本として大使館ルートで北朝鮮側に厳重に抗議した。アメリカや韓国など関係国と情報収集などで連携し、しっかり対応していかなければならないと考えている。
7月1日の日本と北朝鮮の政府間協議の開催に変更はない。政府間協議でも、この問題をしっかり取り上げたい。協議は拉致問題を扱う場所だが、今回はミサイルや核の問題を取り上げる大切な機会であるとも考えている。北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の決議などの順守を求めていかなければならないと考えている」(NHK NEWS WEB)
下線部分は解説文を会話体に直した。
北朝鮮が6月29日午前5時頃、日朝ピョンヤン宣言や国連の安全保障理事会の決議等に違反する弾道ミサイル2発を発射したにも関わらず、岸田外相は同日昼前に羽田空港で、「7月1日の日本と北朝鮮の政府間協議の開催に変更はない」と口にした。
岸田外相が自宅から羽田空港に向かったのか、首相官邸に立ち寄ってから羽田空港に向かったのか分からないが、安倍内閣は北朝鮮弾道ミサイル発射の6月29日午前5時頃から昼前近くの6時間前後の間に北朝鮮の弾道ミサイル発射が日朝ピョンヤン宣言と国連安保決議に違反する行為であるにも関わらず、7月1日の日朝政府間協議の開催に変更はないことを決めていたことになる。
いわば拉致解決に向けて進むことを優先させた。政府間協議で弾道ミサイル発射問題を取り上げるとは言っているが、北朝鮮は制裁によって経済的損失は伴っても、国連決議さえ無視しているのだから、日本の言葉での抗議や国連安保理決議遵守要求など、痛くも痒くもなく、北朝鮮の違反に目をつぶったことになる。
既知の事実となっているが、2012年11月15~16日に野田政権下で日朝政府間協議が行われたものの、12月1日北朝鮮がテポドン発射を予告、12月5日予定の2度目の協議を野田政権が延期を決めたのと正反対である。
いわば野田政権は拉致問題協議よりもテポドン発射が安保理決議違反となることへの抗議を優先させた。
この前例からすると、北朝鮮にとっては弾道ミサイル発射は、マスコミは習近平中国国家主席の訪韓を前にした中韓連携に対する牽制との見方を示しているものの、どの国にとっても重大な国連決議違反であることに変わりはないのだから、7月1日の日朝政府間協議に向けた賭けでもあったはずだ。
もし安倍政権が日朝協議を中止したり、延期したりしたなら、北朝鮮が望んでいる制裁解除をフイにすることになる。
だが、安倍政権はミサイル発射が日朝ピョンヤン宣言と国連安保決議に違反することよりも日朝協議を優先させた
もしこのミサイル発射が中韓連携への牽制ではなく、あるいは中韓連携への牽制を含めた安倍政権の国連決議違反を取るか、拉致解決を取るかの対北朝鮮姿勢を試すリトマス試験紙の役割も担わせていたとしたら、どうなるだろうか。
尤も担わせていなくても、明快な答を得た。もし担わせていたとしたら、賭けは自身にとっての肯定的な答を得るある程度の読みがなければ、その読みに裏切られることがあったとしても、できないために安倍政権が出す答をある程度読んでいたことになる。
読みの根拠は安倍晋三が拉致問題に関して機会あるごとに発言している「必ず安倍内閣で解決する」と期限を区切った言葉にあるはずだ。例え長期政権を築くことができたとしても、永遠に続くわけではない。区切った期限内に解決できなければ、政治能力を疑われ、言葉のメッキを剥がすことになる。時間があっと言う間に進んでしまうのに対して期限内の解決という制約を自らに課したのである。
拉致解決優先姿勢と弾道ミサイル発射に対する抗議が言葉だけのもので終わったことは7月1日の日朝協議での日本側代表である伊原外務省アジア大洋州局長と北朝鮮側代表である宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使の対応から見ることができる。
《日朝政府間協議 「特別調査委」を説明》(NHK NEWS WEB/2014年7月1日 14時08分)
記事題名にあるように、記事は北朝鮮側が北朝鮮設置の拉致問題等調査のための「特別調査委員会」の組織や構成、権限を説明したとしている。
伊原アジア大洋州局長「(北朝鮮の弾道ミサイル発射は)国連安全保障理事会の決議や日朝ピョンヤン宣言の趣旨に相いれず、極めて遺憾だ。厳重に抗議するとともに発射を繰り返さないよう強く求めたい」
ソン・イルホ日朝国交正常化担当大使「前回の合意を誠実に履行するため、それぞれが、自らの役割を責任を持って行うことが重要だ。我々が準備したことを午前中の協議で説明したい。
(弾道ミサイルの発射については)我々は国連の決議を認めていない」――
北朝鮮は国連決議であろうと、日朝ピョンヤン宣言であろうと、違反することを無視して発射を繰り返しているのであり、日本側もそのことを承知していなければならない事実なのだから、伊原アジア大洋州局長の言葉だけの抗議は儀式に過ぎなかった。
伊原局長のこの発言は協議が始まる前の報道陣がいるところで行ったと、次の記事、《【日朝局長級協議】北、ミサイル発射抗議にも過剰な反応せず 制裁解除に照準》(MSN産経/2014.7.1 22:20)が書いている。
伊原局長「本当に重要なのはこれからだ。日朝合意を着実に履行して実効性のあるものにしていく必要がある。(弾道ミサイル発射は)国連安全保障理事会の決議、日朝平壌宣言の趣旨と相いれない。二度と繰り返さないように強く求める」――
記事解説。〈報道陣の前で抗議したのは、日本が拉致問題の解決を優先し、核やミサイル問題を後回しにするのではないかという国際社会の懸念を払拭する狙いがあった。〉――
この記事は日本側抗議に対する宋大使の発言を伝えていない。伊原発言に対する宋大使の対応についてのみ伝えている。〈日本側の抗議に対し、宋氏は過剰な反応は示さず、すぐに北朝鮮が拉致被害者らを含む全ての日本人の再調査実施のために設置する「特別調査委員会」の話題に切り替えた。
北朝鮮の最大の関心は、再調査と引き換えの制裁解除だ。午後の会談の冒頭、宋氏がわざわざ、制裁解除に向けた日本側の準備状況について説明を求めたのもそのためだ。〉――
要するに拉致問題協議最優先であって、その最優先の前に弾道ミサイル発射をさしたる問題としなかったために単なる儀式で終わる言葉の抗議を行ったに過ぎなかった。
安部政権が北朝鮮の日朝平壌宣言違反は兎も角、国連安保理決議違反となる弾道ミサイル発射に対するそれ相応の対応を排除して拉致問題を優先させたことはそのまま北朝鮮の学習事実となったはずだ。
安部政権に対しては拉致問題が何よりも最有力の外交カードとなるという学習事実である。
もしこのような事実を学習したとすると、有効期限を長持ちさせるために拉致カードの全部を一度に吐き出すことはしないはずだ。
拉致カードの中でも、最も強力なカードを最後の最後まで残しておくかもしれない。
これも安倍晋三がミエを切ったからなのか、「必ず安倍内閣で解決する」と期限を区切ったことから始まった、その足元を見た拉致カードであるはずだ。
安部政権は7月1日の日朝政府間協議を受けて、北朝鮮設置の「特別調査委員会」を実効性ある組織と見做して一部制裁解除の方針だと今朝のテレビのニュースが伝えていたが、北朝鮮側が調査を開始しないうちからのエサよりも、成功報酬としなかったことは果たして正しかったことだったろうか。