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《7月14日村上史好国対委員長代理衆議院予算委員会質問》
【質問テーマ】
『集団的自衛権の行使によるリスクを語ってこそ、議論にリアリティーが生まれる』
《7月16日鈴木克昌代表代行・幹事長》
【談話テーマ】
『原子力規制委員会による川内原発の安全性に関する審査結果について』
安倍晋三が7月16日、宮城県を視察した。安倍晋三の被災地入りは17回目で、うち宮城県は6回目だと「MSN産経」が伝えていた。安倍晋三は「被災地の心に寄り添う現場主義」を掲げている。であるなら、視察はその成果の程度を視察するものでなければならない。成果の確認ではない。どのくらいの成果を上げているのか、あるいは逆に上げていないのか、その程度の視察である。
その全体によって復興の進捗状況が把握できる。
もしその視察が自身が掲げる現場主義の自身による実践であるとしたら、単なる形式となる。あくまでも安部政権の現場主義の成果の程度を視察するものでなければならないはずだ。
だとしても、安倍晋三の被災地視察は自身が掲げる「積極的平和主義」に則った外国訪問にそっくりの構造となっている。
7月16日は宮城県七ケ浜町を訪れて、昨年10月に施設再建がなされ、今年9月に震災後初出荷を控えている漁業協同組合運営のノリ種苗生産施設を視察し、県特産品として今後ブランド化される焼きのりを試食したという。
安倍晋三「香りと甘みが口の中に広がってご飯が欲しくなる。宮城の名物になる」(時事ドットコム)
記事は、〈太鼓判を押した。〉と書いているが、グルメリポーター並みの簡潔な言葉で周囲に味を伝える名ゼリフとなっている。
そして宮城県東松島市の農業生産法人を視察して、地元産のキャベツを手に取って復興をアピールしたという。
午後になって東松島市の災害公営住宅を視察。これらの視察の内容は次の記事、《首相 被災者の心のケア充実を指示》(NHK NEWS WEB/2014年7月16日 15時41分)に拠る。
〈津波による被害を乗り越え、コメや野菜の生産を続けている〉農業生産法人では〈土から塩を取り除くなど農地の復旧への取り組みについて説明を受け、キャベツの箱詰め作業を体験〉した。
今年4月から入居開始の災害公営住宅では住民らと意見交換。
住民要望「1人暮らしの人も多く、孤立を防ぐ体制作りが必要だ」
安倍晋三「国としても新しい生活を応援したい」
視察後記者団に対して。
安倍晋三「1次産業が確実に復興しつつあると実感することができた。これからは被災された方々の体や心の健康のケアに力を入れていく必要を感じた。根本復興大臣に、相談員や復興支援員のより一層の充実、確保など、高齢者を含む住民の皆さんの健康管理、生活支援に向けた総合的な施策を策定するよう指示した」――
要するに安倍晋三は災害公営住宅にしても農業生産法人にしても復興が進んでいる状況にある場所を視察している。復興が進んでいない状況にある場所がある以上、進んでいる場所を選んで視察していることになる。進んでいる場所を視察して、復興をアピールしている。
法の支配、人権、民主主義といった価値観を同じくして、外交上の障害を何ら抱えていない外国を何カ国も訪問して、「積極的平和主義外交」だとアピールする。だが、価値観や領土問題、さらには歴史認識で対立し、険悪な関係にある外国とは絶縁状態にあり、そういった国に対しては「積極的平和主義外交」は何ら効力を上げ得ていない。
前者・後者、同じ構造を取っている。
災害公営住宅視察は、今年4月からの入居開始で復興が進んでいる状況にあることの象徴として選んだのだろうが、住民から問題点を指摘された。いわば物心両面の復興でなければ、真の復興ではないと指摘された。
対して安倍晋三は、「これからは被災された方々の体や心の健康のケアに力を入れていく必要を感じた」と言って、「これから」の課題だとした。これが安倍晋三が掲げている「被災地の心に寄り添う現場主義」というわけでである。
勿論、安部政権は「体や心の健康のケア」に一切手を打っていなかったわけではない。だから、「一層の充実、確保」と言ったのだろう。大震災3年目の2014年3月11日の前日3月10日の首相官邸記者会見でも心のケアについて触れている。
安倍晋三「インフラや住宅の復興が幾ら進んでも、被災者が心に受けた傷が癒されるわけではありません。震災から3年、長期にわたる避難生活が大きな精神的な負担ともなっています。人と人のつながりを守り、被災者が孤立することのないよう、地域の見守り体制をつくります。仮設住宅への保健師などの定期巡回を進め、被災者の心に寄り添った支援に重点を置いてまいります。
特に子供たちへのケアは欠かせません。従来から、カウンセラーの学校への派遣を行ってきましたが、仮設住宅への巡回訪問も実施することとし、子育て世帯も含めてバックアップしてまいります。さらに、仮設住宅の空き部屋を遊び場や、学習スペースとすることで、子供たちが安心して過ごせる場所をつくってまいります。これからは、ハード面の復興のみならず、心の復興に一層力を入れていきます」――
だが、記者会見から4カ月経過しても物質面の復興に精神面の復興が追いついていない状況を目の当たりにさせられ、安倍晋三はこれからの課題・これからの必要性とした。
このことを裏返すと、記者会見での「ハード面の復興のみならず、心の復興」はその場限りの口先だけの言葉で、物質面の復興(安倍晋三が言う「ハード面の復興」)のみに目を奪われていたことになる。
復興をアピールする手段として物理的に復興が進んでいる状況にある場所を選んで視察していたことは災害公営住宅工事の進捗率を見れば証明できる。
●宮城県の2014年6月30日現在の災害公営住宅の整備状況。
事業着手――21市町、216地区、11947戸
工事着工――20市町、123地区、6673戸
工事完了――10市町、28地区、1361戸
進捗率――11.4%
宮城県は当初、2015年度までにすべての災害公営住宅に入居できるようにする予定でいたそうだ。
●岩手県の2014年4月30日現在の災害公営住宅の整備状況。
建設予定戸数――5969戸
工事完成――608戸
進捗率――10.2%
進捗率10%~11%台の進捗率の中での今年4月入居開始の災害公営住宅を選んで視察したのである。どのような視察なのか、自ずと知ることができる。この進捗率はまた、「被災地の心に寄り添う現場主義」の成果の程度を示す一つでもあるはずである。
安倍晋三が災害公営住宅や農業法人、あるいは復興企業を視察すると、さも全体的に復興が急ピッチで進み、被災地住民の心も明るくなっているようにみえる。首相就任以来30何カ国も訪問していることで「積極平和主義外交」が進んでいるように見え、中韓を除いた東南アジア各国での安倍外交の評価は高くなっているそうだが、一カ国との険悪な関係が全ての「積極的平和主義外交」を壊してしまわない保証がないことは歴史が教えているはずである。
安倍晋三の場合、表面的なパフォーマンスが必ずしもそのまま実態を正直に物語りはしないことを学習しなければならない。
精神面の復興が置き去りにされていることを示す記事がある。《被災地からのDV相談 他地域の2倍近く》(NHK NEWS WEB/2014年7月4日 6時00分)
厚生労働省等からの支援を受けている24時間電話相談「よりそいホットライン」に2013年度全国から寄せられた相談件数は延べ1421万件余り(2012年度比+333万件)。
全体に占めるDVや性暴力の被害の相談割合。
被災3県――全体の8.3%。
被災3県以外――全体の4.8%
被災3県の方が2倍近くとなっている。いわばその他の地域と比較して2倍以上の心のケアを必要としていると同時に如何に精神面の復興が遅れているかを物語ることになる。
分析を行ったお茶の水女子大学の戒能民江名誉教授の話。
戒能民江名誉教授「被災地では、大震災を受けて家族の一体化が強調され、女性が性暴力やDVにあってもなかなか外に言えなかったが、震災から3年余りがたち、ようやく相談できるようになったのではないか」
それだけではあるまい。悪化した方向性の住宅環境や同じく悪化した方向性の就業環境が被災者に与える精神面でのストレスが苛立ちを誘って暴力的になる状況が背景にあるはずである。
「被災地の心に寄り添う現場主義」がその実質性を伴っていない典型的な事例を示す記事がある。
《原発のがれき撤去で水田汚染か》(NHK NEWS WEB/2014年7月14日 17時08分
「2014年7月14日」の記事でありながら、出来事は2013年8月となっている。
東京電力福島第一原子力発電所で去年8月瓦礫の撤去作業を行った。記事からでは検査日は分からないが、コメの収穫後だから、9月か10月なのか、福島第一原発から北に20キロ余り離れた南相馬市の14個所で収穫されたコメから国の基準の1キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウムが検出された。
コメは処分された。
〈農林水産省は、セシウムが穂の外側に付着していて外部から飛ばされてきたと考えられることや周辺のモニタリングポストのデータなどから、原因の1つとして去年8月に福島第一原発3号機で行われた瓦礫の撤去作業で放射性物質が飛び、風で運ばれた恐れがあるとして、東京電力に対策を求めた〉。
対して東京電力は瓦礫の撤去の際、粉塵の飛散を抑える薬剤の散布や飛散状況の監視を強化すると説明したという。
だが、農林水産省と東京電力は放射能付着の原因の可能性を南相馬市には伝えていなかった。
南相馬市「非常に驚いている。東京電力に瓦礫の処理のしかたについて要請しているのであれば地元にもっと早い段階で説明があるべきだ」――
南相馬市で50年余りに亘ってコメ作りを続けてきた小澤徳夫さん(76)
「放射性物質が飛んでいるならもっと早いうちから分かっていたはずだ。こういう危ない話は、われわれ農家に伝わるのが遅いので今後は早く情報を回してもらいたい」
同じコメ農家の南相馬市の村上靖一さん(72)。
「こっちまで風で飛んでくるとは思わず、びっくりした。4年も水田を休んだので、来年からは作付けと考えていたが、こんなことがたびたびあればやる気もなくなる。今後は放射性物質が飛ばないよう気をつけて作業してもらいたい」――
アスベスト(石綿)生産企業従業員や企業近辺の住民の何人かがガンの一種である悪性中皮腫に罹って死亡していたことが判明し問題になったことがある。原因は製造過程でアスベストの非常に細かい粒子が飛散、その吸引であった。
アスベストを建築材料としている建造物の解体時の飛散も問題となった。
農林水産省や東電のみならず、環境省にしても復興庁にしても瓦礫処理時の放射性物質の飛散を考えなかったのだろうか。
農林水産省「ほかにも周辺の土や森林などに積もっていたものが飛ばされてきた可能性が考えられ、原因を特定したうえで説明するつもりだった」――
「周辺の土や森林などに積もっていた」放射性物質は雨が降れば近辺に流される。例え風が吹いて、それが20キロ離れた場所にまで吹き飛ばされたとしても、どれ程の量となるだろうか。
東電は7月14日、同瓦礫処理時に放出された放射性物質量を1時間当たり1000億~1兆ベクレル、放出推定時間計4時間の4兆ベクレルと試算していたことを明らかにしたと「毎日jp」記事が伝えている。
但し、「かなり大づかみな計算」として公表せず、市にも伝えていなかった。
安倍晋三が宮城県七ケ浜町を訪れて、ノリ種苗生産施設を視察、ノリを試食して、その味を褒め、復興をアピールする。ハード面の完成だけを視野に入れて災害公営住宅を訪れる。
だが、一方で「被災地の心に寄り添う現場主義」が全く以って機能していない空虚な実態が多く存在する。
安倍晋三の被災地視察は復興の全体的な実態を反映していないということであり、「積極的平和主義外交」を掲げて30何カ国も訪問している外交にしても、安倍外交の実態を反映していない点に於いて前者と同じ構造となっている。
1ヶ月に約1回の被災地視察にしても、頻繁過ぎるくらいの外国訪問にしても、回数以外にどれ程に意味があるのだろうか。