安倍晋三の能弁はウソつきが自分のウソを本当だ思わせるために自然と能弁になるのと重なる

2014-07-16 09:33:26 | Weblog

 安倍晋三は類稀な程の能弁家である。国会答弁に於いても、マスコミ記者の質問に対する返答に於いても、言葉に窮することなく滔々と述べ立てて、自己の正当性を証明する。

 なぜこれ程にも能弁なのか。7月15日の参院予算委員会NHK中継中、福山哲郎民主党議員と安倍晋三の質疑を聞いていて、その能弁の理由に気づいた。

 元々質問者の質問に直接答えずに関係のない事柄を長々と述べ立てて自分の正当性を証明するだけの答弁の多さには気づいていた。質問者が自分の質問時間がムダに費やされることに不満を抱いて、「総理、私の質問に直接お答えください。時間をムダにしないでください」といったことはよくあることで、珍しくもなかった。

 能弁であるにも関わらず、直接の答で埋めずに無関係な、既に何度でも繰返し言っている説明で埋めていく。ウソつきが自分のウソを相手に本当のことだと信じこませるために言葉を多く費やさなければならないからだろう、言葉の使い方が巧妙なまでに達者になるように安倍晋三も自身の政策を相手に正しい政策だと思わせようとするのはいいが、質問に直接関係ないことまで言葉を費やしていくうちに自然と能弁となったに違いない。

 だが、その能弁が質問に関係ないことを喋ることによって得た能弁であるなら、ウソつきの能弁さに重なる。

 その典型的例が福山哲郎議員の質問に対する安倍晋三の答弁に現れた。福山哲郎は下図にあるようなボードを示した。赤い矢印に関しては説明がないが、緊張関係にある国ということで、赤い色の矢印としたのだろう。

 その前にに「武力行使の新3要件」を掲げておく。

 ①我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃
  が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。

 ②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき

 ③必要最小限度の実力行使する
 福山哲郎はB国とC国が交戦状態になって、B国が日本に支援要請をし、日本が集団的自衛権を発動して支援に向かった場合、「戦争に巻き込まれるということではなく、戦争に参加するということではないのか」と質した。

 安倍晋三「今回の閣議決定に対してはですね、盛んに戦争に巻き込まれる、戦争をする国になる、そのように批判されているわけでわけでありますが、それはまさに日米安保条約を改定した際にもですね、えー、反対論の中心的な議論であったと、このように思うわけであります。

 えー、そこでですね、そこでですね、えー、今回の閣議決定の目的は唯一つ、であります。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増す中で、国民の命を平和な暮らしを守り抜くために万全な備えを作ること。

 ま、そうした備えこそが、万が一の事態の発生を防ぐ大きな力になるわけであります。

 えー、新3要件にあります、『我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由及び幸福追求の権利が、えー、根底から覆される明白な危険である』とは、他国に対する武力攻撃が発生した場合に於いてそのままでは済まなく、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ国民に対して我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻・重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをですね、いうものである、とこういうふうに考えているものであります。

 そして海外派兵については一貫して申し上げておりますが、一般に許されないという従来の原則も、これは全く変わっていない、わけであります。自衛隊が武力の行使を目的としてですね(ヤジ)、ヤジられるとですね(左手を上げて)なかなか答え――(口を閉じてヤジが収まるのを待つ。)大事なところだから、黙って聞いて頂きたいと思います。

 自衛隊が武力の行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはですね、新3要件にある必要最小限度の範囲を超えるものであり、えー、これからも決してない、ということであります。

 また、他国の防衛自体を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものではない。外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるというのは誤解であります。今回は様々な誤解があるわけでありますので、えー、明確に申し上げておきたいと思いますし、委員も冒頭、『巻き込まれる』、あるいは参加することを言われたわけでありますが、我々は集団的自衛権の一部が行使できる、つまり武力を行使できる、そういう3要件の中でのみできる、こういう考え方であります」

 福山哲郎「総理、私の質問に明確にお答えください。要は個別的自衛権の場合は日本は攻撃されたときだけ、その分に合わせて攻撃できるんです。それは国民の生命・財産、この国を守るためにという中で。

 この図を見て頂ければ、我が国に攻撃がないのにB国とC国は紛争中です。そこに対して武力攻撃するということは戦争に参加することですねと、聞いたんです。私の質問にお答を頂きたいと思います。

 それからもう一点、先程イラクや湾岸戦争されないと言うときに、総理は非常に微妙に新3要件に合致しないから行かないとおっしゃいました。こういうことは、ドイツは初めて集団的自衛権に参加をしてNATOから、議会から出ることを決めて、アフガンのときには実は戦闘に参加しておりません。治安部隊と復興支援部隊にドイツは出ました。と言うことは、新3要件に先程総理が言われたように合致すれば、戦闘行為のような状況にないなら、行かれる可能性があるということですね。

 先ず戦争に参加するかということを明確にお答えください。そうでないと国民は誤解を致します。なぜなら、総理、我が国の憲法第9条1項は国際紛争の解決の手段として武力の行使をそもそも禁止しております。

 このB国とC国は国際紛争をしています。そこに手段として我が国は武力攻撃していくことになります。限定であろうが、何であろうが、そのことに対して憲法上疑義があると思っていますし、だからこそ、我が国は今まで集団的自衛権を行使できないと、これは自民党政権がずっと決めてこられたことです。

 ですから、そのことと、いいですか、戦争に参加をすることだということについて、どうかお認めになって頂きたいと思います」

 安倍晋三「明確にお答をさせて頂きたいと思っておりますが、私が申し上げてきていることは一貫しているわけでございますよ。今回、なぜ根幹を変えていないかと言えば、自衛権の発動については憲法の前文、えー、国家としてのですね、平和の生存権、そして13条に於ける国民の命、そして自由、幸福追求の権利を守る、ためには自衛権を発動させることができるということであります。

 この論理の中に於いてですね、しかしそれは、とは言え、必要最小限度にとどまらなければならないという、これは(昭和)47年(政府)見解の根幹であります。しかしそれは、その中に於いて、えー、いわゆる集団的自衛権が行使できないという結論になっておりますが、そこをですね、当てはめに於いて、我々は状況が変わる中に於いては、集団的自衛権ついてですね、一部限定的に容認することができる、ということで、ありまして、(ヤジが起こり、声を強めて)今答えて、丁寧に答えているんですからね(笑いが起こる)、イエスかノーかで答えられるような単純な問題ではないんですよ。

 だから、少しは、少しは忍耐力を持って・・・・・・・。つまり、その中にも書いてあるように、そこで、つまり武力行使を目的として、武力行使を目的としてですね、イラク戦争や湾岸戦争のような戦争に参加することはないと、こう申し上げてきたわけでありますし、一般にですね、一般に、えー、一般にですね、えー、海外派兵はできない。

 ただ、その間、我々は、私もずっと申し上げておりますように、えー、機雷の掃海につきましてはですね、機雷の掃海につきましては、これは国際法的には武力行使として、えー、扱われていますが、しかし機雷掃海についてはですね、まさに国際海峡に対して違法に国際海峡を機雷で封鎖するものであって、その危険物を除去する上に於いて、武力行使と把えられますが、しかし、これはですね、放っておけば、日本のまさに安全に重大な影響を及ぼすという3要件の中に合致すれば、機雷掃海を行うことはあります。

 しかしこれは限定的、自動的なものであるということは言わざるを得ない、ということでございまして、自ずからですね、いわゆる、えー、海外に於ける武力行使とはですね、この武力行使と、いわゆる国際法的には整理されますが、これは差別されなければならないと、このように思います」

 午前中の時間切れがきて、午後に引き継がれるが、福山哲郎は、集団的自衛権発動からのB国支援は戦争に参加することではないのかという自身の質問に、「総理は一切お答えしませんでした。非常に残念だと思っています」で打ち切ってしまう。

 福山の質問で下線を引いいた部分は意味不明な上、余分でしかない。

 安倍晋三は「海外派兵はできない」と言っているが、「武力行使の新3要件」を全うするためには海外派兵は欠かすことのできない条件となる。

 いずれにしても安倍晋三は福山哲郎の質問には直接答えずに、お得意中のお得意である質問とは関係のない今まで繰返し言ってきたことを長々と能弁に言葉を費やしたに過ぎない。

 質問が尋ねている事実を自身の事実を以って肯定か否定かを解き明かすべきを、質問者の事実に無関係な自身がそうだとしている事実のみを並べ立てる能弁は、ウソつきが事実を語らずに自身がつくり上げたウソの事実を並べ立てる能弁さと否応もなしに重なる。

 安倍晋三が自身は的確な答弁を果していないのに、そのことに対してヤジが飛ぶと、答弁を止めてヤジを注意する遣り方はさも注意する方が正しいように見えるが、それも質疑で見せている質問とは関係ないことを長々と答弁して自己の政策を正当化する構造と同じであるはずだ。

 ウソつきが自身のウソに問題があることが気づかないように安倍晋三も自身の答弁に問題があることに気づいていない。

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