◆話題は韓国イージス艦二番艦引き渡し
POMERAで作成したHTML形式の文書を記事に使うのが一番安全と言えば安全なのですが、どうしても変換ミスが多々出てしまって、これはよく指摘されます。
するとどうしてもPCで作成するしかないのですが、一時間以上かけて作成した記事が飛んでしまうと、再度作成するのは非常に大変です。閉じてしまった資料をもう一度開いて並べなければなりませんし、写真も再度、決して速くないワイヤレス回線で一枚一枚UPしなければならないからです。しかし、再度作成して、今度は短めなのですがこれが飛んでしまうと、ちょっと、ね。今度は回線が勝手に切断してしまいました。同じ記事を三回連続で書く、というのは、流石にいやになりますので、少々はしょった記事になりますがご了承ください。日経新聞に掲載されていた、韓国海軍へのセジョンデワン級イージス艦二番艦引き渡しの記事です。記事には引き渡し、とありますがこれは就役ではなく公試実施のための海軍への引き渡しを意味しているようで、正式な竣工は2011年となるようです。
韓国海軍にイージス艦2番艦、大宇造船海洋が引き渡し 【ソウル=尾島島雄】韓国の大宇造船海洋は31日、韓国南部の巨済島にある造船所で建造していたイージス艦を韓国海軍に引き渡したと発表した。2008年末に就役したイージス艦に次ぐ2番艦となる。北朝鮮による攻撃を受け哨戒艦が沈没した韓国海軍は、新造艦の就役を機に国防力を再構築したい考えだ。艦名は「栗谷李珥(ユルゴクイイ)」。国防への備えを説いた朝鮮王朝時代の学者にちなんで命名された。7600トン級で最大速力は30ノット。120基以上の対艦、対空ミサイルや長距離タイプの対潜水艦魚雷などを搭載する。約1千個の標的を同時に探知し、そのうちの20の標的を同時に攻撃できる。http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE1E3E2E0948DE1E3E2EAE0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL
◆
韓国海軍は、冷戦時代、北朝鮮のミサイル艇や魚雷艇、潜水艦に対処するべく第二次大戦中のアメリカ製駆逐艦を艦隊旗艦として、2250㌧のウルサン級フリゲイト9隻、1200㌧のポーハン級コルベット24隻を建造してきましたが1998年から3000㌧以上の大型水上戦闘艦の整備を開始、現在は3800㌧のクワンゲドデワン級3隻、5500㌧のチュムンゴンイスンシン級6隻を整備していて、このうち二隻は昨年舞鶴基地を表敬訪問した際に撮影することが出来ました。海上自衛隊の護衛艦は、はつゆき型で4000㌧ありますし、むらさめ型は6200㌧、たかなみ型で6300㌧ありますから、あまり韓国艦は大型、という印象はないものの、セジョンデワン級イージス艦は10290㌧と、10000㌧の、あたご型よりも大きく、大型艦、という名に恥じないものとなっています。しかし、1998年から韓国海軍は今回の二番艦を含めて12年で11隻を建造してきましたが、旧式艦の除籍を補えない状況に陥っています。
平均艦齢、就役した艦一隻一隻の艦齢を総計して就役数で割った数を見てみたのですが、ウルサン級9隻は22.4年、ポーハン級23隻は22.58年となっていました。水上戦闘艦の寿命は24年とされ、海上自衛隊の、はつゆき型護衛艦は頑張ったのですが28年で除籍されました。みてゆくと、韓国海軍は、もう少し建造ペースを上げなければ水上戦闘艦勢力は、今後大きく減退してゆくことになる訳です。570㌧のユンヨンハ級ミサイル艇を40隻建造して、コルベットと92隻が就役しているドルフィン級高速哨戒艇の後継に充てる、という計画もあるのですが、このミサイル艇は潜水艦に対処することはできませんし、設計の不具合も指摘されていますので、将来的には韓国海軍はコルベットの建造を再検討しなくてはならなくなるかもしれません。
韓国は長大化するシーレーンを睨んで艦艇を大型化させたのはいいのですが、北朝鮮の沿岸での脅威に対処するには、大型水上戦闘艦というのは使いにくいのですね。日本のように距離がある場合は、航続距離に限界のある小型艦艇は進出が難しく、個艦防空能力が極めて低いことから多数が運用されても、能力は非常に限定的なのですが、韓国は沿岸が繋がっているためかなり大きな脅威となります。一方、装備体系を一旦一つの方向にシフトしてしまうと、用兵体系から運用基盤まで長期的な変化が生じてしまいますので、再転換は容易では無く、出来る限り先までを見通して装備体系というものは考えてゆかなければ、限られた国防費が無駄に使われてしまう、ということにもなりかねません。韓国では、黄海海戦の際に哨戒艇が撃沈されたことから取り急ぎミサイル艇の量産計画を発表しています。そして今年に入り北朝鮮によりコルベットが撃沈されると、沿岸哨戒能力の再構築を計画しているとのこと。
これらをみていますと、韓国海軍のイージス艦は、あたご型や、アーレイバーク級のような艦隊防空型ではなく、ノルウェーのフリチョフナンセン級のような中型のもので数を揃えるべきだったのでは、と思います、防空中枢とともに艦隊防空では無く僚艦防空程度の能力を持つ艦を日本海と黄海に常時一隻が稼働できる程度に、ということです。また、3000㌧クラスの汎用艦を毎年2隻程度は建造する方が優先度は高いのではないか、と思ったりしました。韓国の海上防衛力と北朝鮮への抑止力は、そのまま日本とも関係してきますので、対岸の出来事、と無関心でいる事は出来ないのですし、ね。
韓国海軍としては、ひゅうが型を始めとして独自の作戦能力を整備している海上自衛隊に代わり、米海軍空母機動部隊の護衛を考えているように、例えばリムパック等における運用をみていますと思えてくるのですけれども、一方で本来有していた沿岸海軍としての能力の重要性も優先度が高い点への認識が薄いように感じました。他方で、長期的な防衛に関する視点の欠如は、昨今の日本についても当てはまるので、何とも言えないようにも思うのですが、一旦、装備体系の舵を切ってしまうとどうしても優先度や予算配分に影響が出てしまいます。どういった脅威が想定され、どういう対応能力が必要なのか、という命題は慎重かつ大胆に数字を分析して導き出す必要があると思ったりした次第です。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)