◆菅内閣は続投へ
民主党新総裁に菅直人氏が再選されました。当初は小沢一郎氏優位の話もあり、当方も参院選敗北の責任をとるものとばかり思っていたのですが、再選を果たしました。
昨年の観艦式に副総理として観閲官をつとめた菅氏、なんとか内閣総理大臣として本格的に政策を進めてゆくことができるようになりました。しかし、総裁選の最中に円高の進展は政府の無策を見越して進んでおり、景気の悪化により内需拡大の見通しが立たない中、製造業を中心に生き残りをかけて海外脱出、即ち生産拠点の海外移転を模索しています。雇用、雇用、と菅氏は繰り返していたのですが、氏が唱える林業や介護では民主党が必要とする財源を賄えるほどの税収には至りません。素早い円高対策と毅然とした介入を行うことが必要でしょう。日本には数百兆円の埋蔵金があります。
日本という国家の埋蔵金、それは勤勉な国民と優れた社会基盤が生み出す生産能力であり、国民とともに共存する国土、この二つが最大の埋蔵金です。これを理解せずに、あたかも埋没しているものを探すような行動は諦め、景気回復により税収を高める真摯な努力こそがもっとも求められているものだといえます。しかし、景気活性化政策を行わず、ただひたすらに歳出削減を景気の悪化という事態に際しても続けているのでしたらば、それは必然的に経済力の低下をもたらし、結果的に税収がさらに低下する、という悪循環に陥るのですが、この点はもっと認識されてしかるべきでしょう。
尖閣諸島、総裁選で完全に忘れられていたようですが、不法操業を行った中国漁船の拿捕を契機として日中は現在緊張状態に陥っています。南沙諸島では中国軍はヴェトナム領の島にコマンドー部隊を展開させて警備要員を殺害し、ヴェトナム海軍との間で90年代においても海戦を行っていますし、フィリピン領ミスチーフ環礁を米軍のフィリピン撤退後一方的に占領、フィリピン海軍は規模が小さく察知することさえできなかったため未だに紛争状態が続いています。領土問題は妥協すればそれで終わりです。
そして人命と財産が関わるこの事案、内閣総理大臣は国民全ての生命と財産に責任を持つ立場です、権限は逃避することはできるのですが責任だけは絶対に逃避できない、これが政治です。日中関係の悪化という事は出来れば避けたいところですが、領土問題というものが引き合いに出された場合は優先順位が違ってきます。しかし、ここぞという時への気構えとともに、危機が拡大しないように予防外交を展開する、という努力を怠っている現状では、意図せずして政治が戦争を誘発しかねない危険な状況にあるのだ、という事を認識する必要があるのではないでしょうか。
普天間基地移設問題、幸いにして白紙化を目指していた小沢氏は敗れたのですが、どういう工法でいつまでに代替設備を建設するのか、民主党が政権にいる間には妥結しないのではないのか、という危惧さえでていますが、在沖米軍の抑止力はアジア最大の空軍基地である嘉手納と、その航空優勢下で行動する海兵隊により維持されています。沖縄に掛かる軍事的圧力は東西冷戦の時代における北海道のそれに近づいており、一方で沖縄には自衛隊の部隊として一個旅団、一個航空群、一個航空隊のみが駐留しており、レーダーサイトをはじめ多くの設備がありますがかつての北海道の防衛体制と比較すれば充分ではありません。
もともと日米同盟の関係というものはアメリカが構成した自由貿易とドル体制に依拠した戦後秩序の維持が相互互恵となる観点から維持されました。この為にアジアを含めて世界の安定が必要であり、その為にアメリカと日本は協力しているのです。海兵隊は日本が憲法上対処できない朝鮮半島や台湾海峡での緊張に睨みを利かせており、この抑止力をどう考えるのか、ということは日米関係の一つの方向性を示すため、重要です。以上、思いついたものは多々あるのですが、そのなかの主立った三点について感想として提示してみました。
HARUNA
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