◆海上護衛任務は海賊増大を受け任務海域拡大
ソマリア沖アデン湾において跳梁跋扈する海賊に対して、海上自衛隊は現在、護衛艦を中心とした水上部隊を船団護衛に派遣しているのに加え、哨戒機を派遣して上空からの監視活動に当たっています。
現在、P-3C哨戒機による海賊対処航空隊は第四次派遣部隊がジプチを拠点として哨戒任務に当たっていますが、9月5日に任務飛行第300回を達成した、と防衛省が発表しました。船団護衛というかたちで確実な護衛実績を重ねているのが派遣水上艦部隊なのですが、アデン湾を航行する全ての船舶が船団に加わる事が出来ない一方、各国は艦船による哨戒に重点を置いていて、この隙を突いて海賊事案は発生するのです。
こうした状況を抑止するには上空に哨戒機を展開させて、海賊行為を行う可能性のある船舶を未然に発見し、行為に及ぶ前に対処するという事が重要で、艦艇よりも進出速度や哨戒範囲の大きい航空機の重要性が高くなるのですけれども、この種の航空機は取得費用も運用費用も大きく、各国ともに数の余裕はありません。ここで冷戦時代から対潜哨戒に重点を置き、この種の航空機の整備を行ってきた海上自衛隊の能力が期待され、派遣となった訳です。
ジプチを拠点として任務に当たることから、警備には陸上自衛隊の中央即応集団が軽装甲機動車を含め警備に展開していますし、予備部品等の輸送には航空自衛隊も協力しました。そしてジプチ政府の協力により海上自衛隊の整備施設を建設することが実現し、海上自衛隊はアフリカ大陸に航空基地機能を有するに至っています。
一方で海賊事案がアデン湾東方海域にも拡大した事を受けて防衛省は関係機関との調整の上で9月9日にモンスーン期間を除く全ての期間において海上護衛の航路を東方へ100海里延長する事を決定しています。これは派遣水上部隊に対して大きな負担となり、護衛を行う事の出来る回数も一ヶ月間あたりで見た場合減少してしまいます。しかし、護衛航路を出たとたんに海賊の襲撃を受けては目も当てられませんので、難しい決断だった、というべきでしょうか。
HARUNA
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