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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

全日空、成田⇔関空を5000円で結ぶLCCの傘下設立を検討

2010-09-10 22:27:26 | コラム

◆LCC新会社による低価格路線は歓迎、しかし・・・

 大阪と東京はJR在来線で8510円、新幹線自由席で新幹線特急料金4730円が加算されます。その東京と大阪を全日空が5000円で結ぶ計画を立てているとのことが報じられました。

Img_1212  関空-成田5000円、全日空が格安航空会社新設で検討  全日本空輸が、傘下に設立する格安航空会社(LCC)で、関西国際空港と首都圏の空港を結ぶ路線の運賃を5000円前後とする方向で検討していることが8日、わかった。東海道・山陽新幹線「のぞみ」の通常料金(東京―新大阪間)の3分の1程度に抑え、競合する鉄道や高速バスの顧客を奪いたい考えだ。 全日空は近くLCCの設立を正式に発表する。関空を拠点に2011年度中に国内線と国際線の運航を始める計画だ。具体的な路線は今後決めるが、国内線では、関空―成田便や関空―福岡便などを5000円前後、関空―那覇便を8000円前後で運航する案が有力とみられる。

Img_8870  国際線は中国や韓国を結ぶ路線が中心になる見通しで、運賃は大手の半額以下を目指す。 LCCはANAとは別ブランドとし、別の給与体系で新たに従業員や外国人のパイロットを採用するなど、大幅なコスト低減を図る。全日空が筆頭株主となるが、国内の旅行会社や流通業界などの異業種や海外のファンドなどからも出資を募る。副社長クラスに海外のLCCでの経営経験者を迎え入れることも検討している。 全日空は、関空会社に利用料が安いLCC向けの旅客ターミナルビル建設を求めて交渉しており、近く合意する見通しだ。(2010年9月8日  読売新聞http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100908-OYO1T00825.htm?from=top

Img_1123  JR東海ではリニア新幹線の建設計画を進めているのですが、自民党時代の緊急経済対策で行われた高速道路休日割引制度により乗客の一部が高速道路利用に流れてしまい、続いて高速道路無料化を掲げた民主党政権が成立した事により、その建設計画そのものは維持されるものの、開業時期については遅れる見通しと伝えられています。5000円という安く関空から成田まで移動でき、往復割引切符が頑張る山陽新幹線の新大阪博多間にも対抗できる関空から福岡までの5000円、そして鉄道では行くことが出来ないのですが、関空から那覇まで8000円、という価格は魅力なのですけれども、過当競争となって新幹線とLCCが共倒れになる事はないのか、運賃は5000円×200名でも100万円なので採算性は大丈夫なのか、そして安全性にも不安は残るのですが、ね。

Img_3171  日本ではスカイマークエアラインズがLCCとして頑張っていますが、全日空系列がLCCに参入する、という事は新幹線特急体系に対して価格競争やサービス向上という好影響をもたらすことになるかもしれません。前述の通り東海道新幹線、山陽新幹線の運賃は競合相手が無い状況で値下げは無く、一方で食堂車の廃止やビュッフェの廃止、コンパートメントの廃止、車内売店の廃止等簡素化が続いており、のぞみ増発による運行頻度の向上や車内無線LANの設置によるインターネット接続サービスなどに向かっています。一方で輸送能力は物凄く、東海道新幹線は全て1322席を確保している編成により運行されています。言い換えればスピードを重視してサービスを簡素化、ともとれる訳で、全日空系列のLCC,これが新幹線独占時代に対しての一石を投じる形になるのか興味は尽きません。

Img_2442  しかし、新幹線との競合を考えると格安航空という事なのでぜいたくは言えないかもしれませんが、国際空港として整備された二つの空港は中心部から離れているのが難点でしょうか。成田空港と関西国際空港ということで、羽田空港や伊丹空港と比べた場合、交通の利便性の低さが目に付きます。東京から名古屋まで一時間半、名古屋から大阪まで50分少々で結ぶ東海道新幹線は運行頻度も高く、航空機の場合特急を乗り継ぐように簡単に搭乗手続きが出来るわけではなく、手荷物検査や荷物預かりなどで時間がかかります。そしてそれ以上に成田空港からは京成電鉄のスカイライナーやJR東日本の特急成田エクスプレスでも時間的にも特急料金を含めた運賃の面でも羽田空港などとくらべ不利な気がします。伊丹空港も大阪モノレールをはじめ接続が便利ですが、関西国際空港となると南海電鉄の特急ラピート、JR西日本の空港特急はるか、などで移動したとしても時間がかかります。

Img_0241 京成電鉄の場合1200時に京成上野駅を出発した場合、スカイライナー29号で1200時発、空港線を利用して成田空港駅には1244時に到着して運賃は1200円と特急料金1200円を加え2400円。特急スカイライナーを利用しない場合、通勤車両を用いた京成本線を1207時に特急で出発し1348時に到着して所要時間は1時間21分、運賃は1000円です。スカイライナーと本線の通勤車両利用の特急では速度の差が如実に出ている、という事には驚きますが、一方で写真のスカイライナーに続いて登場した新型スカイライナーを利用しても、やはり遠い、というのが成田空港の印象でしょうか。

Img_1847 JR東日本を利用では、1233時に東京駅を出発した場合、成田エクスプレス25号で成田空港駅到着は1327時、所要時間が54分となっており、運賃は1280円に加え特急料金が1660円で2940円、グリーン車利用の場合は特急料金が3150円となります。特急を利用しない場合は1233時に京浜東北線か山手線で上野に1238時、1242時に常磐線快速で我孫子に1315時、成田線へ1316時出発で1358時に成田到着となり、所要時間は1時間25分で運賃が1110円となっています、乗り換えがある訳ですね。

Img_0005  南海電鉄利用では、もちろんこちらは成田空港ではなく関西国際空港まで、という事なのですけれども、難波駅を空港特急ラピートβ37号で1200時に出発、1237時に関西空港へ到着するので所要時間は37分、料金は運賃890円に特急料金500円が加わり合計1390円。特急を利用しない場合は1215時に出発する急行関西空港行きを利用した場合47分、特急サザン一般車を利用した場合1215時に出発し岸和田で急行乗り換え、関西空港へは1257時到着で所要時間は42分、運賃はともに890円です。難波までは大阪駅から若干地下鉄を利用しなくてはならないのですが、梅田と並び大阪の中心部です。

Img_3501  JR西日本利用では、空港特急が大阪駅ではなく、京都駅を出発して新大阪から空港方面に向かうので1215時に新大阪駅を特急はるか83号で出発、関西国際空港へは48分後の1303時に到着しまして、運賃は1320円に自由席特急料金が1150円、指定席の場合は1660円でこの場合の合計運賃は2980円、グリーン車利用の場合は特急料金が2390円。空港快速を利用した場合は大阪駅を1213時に出発して関西空港駅へは1318時に到着するので所要時間は1時間5分、運賃は1160円です。もともと神戸に建設する予定だった関西国際空港は和歌山県の泉佐野沖に建設されたため、やはり遠くなってしまっているのが難点です。

Img_8303  全日空が格安航空、関空 国内線充実へ弾み・・・専用施設整備で支援 全日本空輸が関西国際空港を拠点とする格安航空会社(LCC)設立を発表したことを受け、関西国際空港会社の福島伸一社長は9日、「専用ターミナルの整備を通じて、低運賃による新たな需要発掘の実現に協力したい」とのコメントを発表し、LCC専用ターミナルビルの建設を正式に表明した。関空会社は、減少が続いていた国内線の拡充や、増加が見込まれる中国人観光客らの取り込みにつながると期待している。  日本では現在、海外のLCC5社が12路線で運航している。

Img_7148  うち関空は国内で最多の5社7路線。首都圏より市場規模は小さいものの、発着枠に余裕があるためだ。だが、国内に本格的なLCCはなく、これまで国内線は飛んでいなかった。 関空の国内線は現在、経営破綻(はたん)した日本航空の減便などで、羽田や札幌など6路線だけ。1996年のピーク時(34路線)の6分の1近くにまで落ち込んでおり、国内路線網が充実することへの期待は大きい。関空会社幹部は「国内線が充実すれば国際線誘致の呼び水になり、国際ハブ(拠点)空港へと飛躍できる」と話す。さらに、アジア路線が増えれば、中国人観光客らの往来が増え、空港の需要も増す。 関空会社は、全日空が設立するLCCが2011年度後半の運航開始を目指しているのに合わせて、2期島に専用ターミナルの建設を進める方針だ。

Img_5622  運航便数は数年で1日40便程度になるとみられ、建設費は一般の旅客ターミナルよりも安い30億~40億円とされる。低コストで建設することで使用料を抑え、LCCの負担を軽くするのが狙いだ。 課題は、1兆円超に及ぶ有利子負債の金利負担で高額に設定せざるをえない着陸料だ。他の航空会社とのバランスから、LCCに限定して着陸料を割り引くことは難しい。専用ターミナルの使用料を安く抑えるだけで、LCCが安定的に運営できるかどうかは不透明で、新たな優遇策が求められる可能性もある。 利用者にとっては、LCCと既存の航空各社との価格競争が激しくなり、航空運賃が安くなることが期待できる。国内を長距離バス並みの料金で運航することになれば、新幹線など他の交通機関の料金の引き下げにもつながりそうだ。(2010年9月10日  読売新聞http://osaka.yomiuri.co.jp/eco/news/20100910-OYO8T00306.htm

Img_8537  こちらは本日10日の記事なので、LCC構想の続報、ということになります。関西国際空港の活性化に期待が寄せられる、という事なのですが、記事にある通り高額な空港使用料で折り合いがつくのか、という事に注視したいです。また、関西国際空港を起点とする、ということなので、いい方を変えれば格安航空会社の受け皿として期待されていた富士山静岡空港や茨城空港を始めとする地方空港、こちらは海外からの格安航空会社の乗り入れを期待しているので、一概に重なるとは言えないのですけれども、違った視点から競合となりそうです。国際線をみますと韓国のハブ空港であるインチョン空港とを結ぶ構想となるのか、観光客の旅客需要を見込んでいるのか、もし前者であれば、国土交通省の進める羽田空港のハブ空港化計画にも影響が出てくるかもしれません。

Img_6010  新幹線等の交通機関への割引、という点についてですが、今回提示された額は在来線料金とも競合するほどの低さです。ただ、ぷらっとこだま、前日までに予約が必要なのですけれども、こちらでは在来線料金に少し足した程度の料金ですし、山陽新幹線が高速道路料金値下げ対策で行った大幅な、こだま往復割引切符、では、在来線の往復料金と比べても割安感のある料金体系を構築していますので、東海道新幹線についても値上げ一辺倒だった運賃体系についても、割引切符などでは、大きな経営判断が行われるかもしれません。しかし、それ以上に、LCCが全日空系列とは言え開始された場合、既存の全日空や日本航空の航空路線にはどの程度影響が生じるのか、ということにも注目してゆきたいです。また、新会社がどういう機体を使い、どういう会社名になるのかも、興味がありますね。

HARUNA

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コメント (9)
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