◆緊急援助は短期集中が重要!
パキスタン水害ですが、国土の二割水没という大水害に対して日本国内の報道はあまり為されていませんが、更に自衛隊のパキスタンでの活動についても殆ど報じられていません。
こうした中で、朝雲新聞がパキスタンにおける人道支援任務の状況を報じていましたので、本日はこちらから引用です。写真は今津駐屯地で撮影した第3飛行隊、第4飛行隊の写真が無いので代用です。9/9日付 ニュース トップ :パキスタン派遣隊 食料や医薬品空輸・・・ 陸自UH1ヘリから救援物資を降ろすパキスタン兵ら(9月4日、ムルタン南西100数十キロの物資集積所で)
パキスタンの洪水災害救援に派遣された陸自「パキスタン国際緊急航空援助隊」(石崎敦士隊長以下約200人)は8月31日から、同国中部パンジャブ州ムルタンのパキスタン陸軍飛行場を拠点に任務運航を開始、陸自UH1多用途ヘリ3機で1日1~2便の割合でムルタンから南西約百数十キロの物資集積所などの間で人員や水、食糧などの救援物資、医薬品の輸送を行っている。
一方、UH1ヘリとともに物資空輸に使用される陸自CH47JA大型輸送ヘリ3機のうち、1機を載せた露ボルガ・ドニエプル航空のアントノフ124大型輸送機が4日、仙台空港を出発、翌5日にパキスタン東部のラホールに到着した。CH47はラホールで組み立てと試験飛行の後、自衛隊が拠点としているムルタンのパキスタン陸軍飛行場に移動してUH1ヘリとともに輸送任務に就く。
残る2機のCH47を積んで8月26日に横須賀を出発した海自輸送艦「しもきた」は9月18日にもパキスタンのカラチ港に到着する見込みで、9月下旬からUH1ヘリと合わせて全6機体制が整う。http://www.asagumo-news.com/news.html 朝雲新聞からの引用は以上です。
日本でも募金などは行われているのですが、どれだけ募金を集めても救援物資は空港に積まれていてもヘリコプターで空輸しなければ孤立地帯に届かない、という厳しい事態が続いていて、そこに自衛隊が派遣され、孤立地域への物資輸送を実施しています。この実情が日本ではあまり報じられていないのですよね。
今回の災害派遣は九州福岡駐屯地の第4師団を中心に200名で編成され、第4広報支援連隊の石崎連隊長が指揮を執り、第4飛行隊の多用途ヘリコプターによる派遣部隊が最初に3機、航空自衛隊のC-130H輸送機で高遊原駐屯地に隣接する熊本空港を出発、到着し既に任務に当たっています。
今回の記事は、この多用途ヘリコプター部隊に加えてロシアの大型輸送機により木更津駐屯地の第1ヘリコプター団に所属するCH-47輸送ヘリコプターがパキスタンに到着したという報道で、UH-1よりもエンジン出力が大きい同機による高山部での支援には期待が集まります。
パキスタンはアフガニスタンと高山部の国境を経て隣接しており、現在、災害派遣が遅れたことによる無政府状態に乗じてアフガニスタンから武装勢力が浸透を始めている状態です。こうした状況を抑止するにはパキスタン政府の災害復旧支援活動を国際社会が支援するほか無いのですが、ヘリコプターの活動さえも難しい高山部と寸断された道路、という状況が立ちはだかってます。
ここにエンジン出力の大きな陸上自衛隊のCH-47JAが加わるという事なのですが、もともとこの機体はアメリカ政府から自民党政権時代にアフガニスタンへ派遣を要請されるほど、米軍でさえ不足気味の機体で、米軍は前述の状況からアフガニスタン情勢との関連からも大型ヘリコプターの人道援助派遣を行っているものの、やはり足りない、という状況です。
既に浸透した武装勢力による政府機関への襲撃事案等も生じており、自衛隊の任務は今までの国際緊急援助隊派遣の実績と比べても活動地域によっては安全とは言いにくいのが実情です。しかし、NATO加盟国の多くがアフガニスタン派遣で手一杯、という状況にあるので、自衛隊の活動には責任も大きいです。
今後、オバマ政権はアフガニスタンからの米軍撤退を決定しているのですから、パキスタンはテロとの戦いの最前線となる可能性がありまして、いわばアフガニスタンへイスラム原理主義過激派組織を封じ込める最前線としてアメリカがパキスタンを最重要視するという構図になるわけです。
するとあまり長期間とどまっていた場合、多用途ヘリコプターや輸送ヘリコプター以外もアメリカから日本に対して派遣要請が、という事も考えられない訳ではありません。緊急人道援助ならば短期集中で行われるべきで、次の要請が来る以前に復旧を達成することが何よりも重要です。このあたりの見極めを政治は慎重に判断するべきでしょう。
HARUNA
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