◆緊張の尖閣諸島
日中関係ですが海軍が出ている訳でもなし、公務執行妨害の船長釈放後も状況が好転しないことから、突沸状態というのではなく、徐々に緊張状態が上昇と緩和を続け、長期化する様相を見せています。
中国側の圧力は謝罪と賠償の要求をだんだんエスカレートしてきているのですが、12月には九州と南西諸島において島嶼部防衛に関する自衛隊演習が実施されますので、一定の抑止力となり得るのかな、と。加えてアメリカも尖閣諸島の領有権について日本を支持する発言を政府高官が続けていますし、軍事的事態に突発展開するのではなく、政治問題として長期化しそうな様相を呈しているわけです。
沖縄県はこれまで無防備すぎました。ホークミサイルを中心とした高射特科部隊主体の第1混成団を陸上防衛の要としていた編成を昨年度まで続けていまして、ようやく旅団へ改編されて普通科部隊が増強されたのですが、これも本島だけ、広大な南西諸島は無防備な状態にある訳ですね。こうしたなかで生じたのが今回の漁船公務執行妨害事案、これを踏まえて沖縄県知事が南西諸島の警備強化を政府に要望する考えを示しました。
尖閣諸島を視察へ=沖縄知事、早ければ10月中にも・・・ 沖縄県の仲井真弘多知事は27日夜、海上保安庁巡視船と中国漁船との衝突事件をきっかけに日中間で緊張が高まっている同県・尖閣諸島について、「ぜひ行きたいと思っている」と述べ、早ければ10月中にも現地視察する考えを明らかにした。県庁内で記者団に語った。仲井真氏が現地を訪れれば知事就任後、初めてとなる。同諸島の周辺海域では中国の漁業監視船が活動していることも明らかになっており、中国側がさらに態度を硬化することも予想される。
仲井真氏は「(尖閣諸島は)日本固有の領土。しかも、沖縄県の県域にあり、領土問題はないと思っている」と強調。日本の漁業者による今後の安全な操業と航行を確保するため、警備強化などを日本政府に近く要請する考えも示した。 (2010/09/27-21:15)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2010092700795◆
この文面を見ますと海上保安庁の強化を求めているのか、南西諸島全般の防衛警備能力の向上を求めているのか、判然としませんがしかし、今回の事案の背景には日本政府の領土防衛への決心に譲歩の余地がある、という事を示してしまった事もあり、知事が求める警備、つまり領土保全を行うとするならば、自衛隊の増強ということにも理解の余地がある事を示しているともいえます。
特に領土問題では主権行使の齟齬が続けば、中国が常々行っているように軍隊を出してくる事になりますから、海上治安組織である海上保安庁が任務を維持するためにも、自衛隊の支援と言いますか、後ろに控えていて抑止力を行使できるような体制を維持することが重要になってくる訳ですから、ね。
南西諸島ですが、広大な地域を防衛するには長距離打撃力や空中機動能力が不可欠なのですけれども、那覇駐屯地の第15旅団には特科部隊はありませんし、空中機動部隊もあるにはあるのですが、離島の救難搬送など災害派遣を主眼としたものですから規模も戦闘能力にも限界があります。
沖縄防衛に関しては那覇駐屯地など、中枢駐屯地に空中機動部隊と長距離打撃力の拠点を構築して、一方で離島部分には沿岸監視隊を展開させて情報収集にあたるという方法が有効と考えるのですが、これには駐屯地の強化や増設と分屯地の増強が不可欠となり、地元といいますか、沖縄県の行政からの協力が不可欠です。今回の仲井間知事の発言は、この命題に勇気を与えてくれるもの、と言えるでしょう。
しかし、なんにしても海上保安庁の強化と自衛隊の充実という選択肢は解決への手段でしかなく、これらを統括して判断するのは政治の問題です。今月30日にも衆議院予算会議で与野党が集中審議を行うとのことですが、明確な決意を示して、その手段として具体的な政策を行うべき、と言えるでしょうね。
HARUNA
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