◆火力発電所・水力発電所増設か移転か?
本日夜のニュースで唐突に浜岡原子力発電所の全原子炉運行停止を首相が要請する会見の様子が報じられました。浜岡原発を止めろと聞いて東海地震警戒情報が出たか!、と驚きましたが、そうではなかったようで。
根拠は30年以内に80%の確率で起きるという東海地震の震源に近い事を挙げましたが、それならば冷温停止状態の原子炉維持費は政府が負担するのか電力会社経由で利用者に負担するのか、東海地震が発生したのちに稼働開始を行うのかそれとも原子炉を将来的に撤去するのか、撤去するならば費用は何処が出すのか、電力不足となる場合には電気周波数が同じ中部電力管内か関西電力管内、北陸電力管内に原発を増勢する可能性はあるのか、静岡県の震源域から離れた地域に移転するのか、いちばん重要な部分には触れられませんでした。
首相会見では中長期的な対策が為されるまで、という発言が口から出ているのですが、中長期的な対策、というのは耐震補強を行う、という意味で例えば一年程度で運転再開を行う事が出来るという意味なのか、それとも東海地震がやってくるまで待つのか、これを行うと東海地震が発生して安心して稼働開始した後で別の地震が発生して津波が来たらどうするのか、と思ったりもするのですが。しかし首相が充分な理解を得られるように説得、と言っているのですけれどもこれは政府が民間会社の社長を呼びつけて怒鳴り恫喝する、という意味にしか聞こえないのですよね。
電力が無ければその地域の工業生産は“計画的縮小”、そして他の地域への“計画的避難”を強いられることになります。浜岡原発は四基の原子炉があり、一号炉と二号炉は耐震強度補強との費用対効果から廃炉という決定が為され、現在は三号炉、四号炉、五号炉が維持されており、三号炉は定期点検中、四号炉と五号炉が稼働中であるほか、廃炉となった原子炉の後継となる六号炉の建設が決定しています。三基の原子炉による発電能力は370万kwで、五号炉に関しては2005年より運行が開始された国内最高出力の原子炉です。
五号炉の稼働開始と六号炉の建設は、現在点検中の三号炉直下に活断層の疑いがある地層が発見され、廃炉が決定した原子炉は70年代後半に稼働開始となった原子炉ですので、実のところ地層検査を強化して実施した原発でもあり、最大10000Galの揺れを想定、新潟中越地震の993Galにも対応するとされています。東海地震の直撃を受けるという大規模地震対策特別措置法と同時期に建設された原子力発電所でもあるので、地震対策は比較的進んでいる発電所でもあるようなのですが、運転停止要請が出されてしまいました。
そもそも聞いてみますと浜岡原発は東海地震を想定した事で他の原発と比べた場合かなり入念にボーリング調査が行われた事で活断層の存在が分かった、という実態があるようでして、浜岡原発には活断層がある、ということは事実なのですけれども、同時に他の全国の原発は、あるのかないのかもわからない、というのが実情とのこと。敷地内は調査していたとしても、付近はボーリング調査を行うにも今ある建物を全て排除して行う訳にもいかず部分的な調査しかできませんし、精度の高いという爆薬による人工地震調査も人口密集地域では不可能です。
また、廃止するならば他の電力確保と合わせて行われるべきです。実のところ例えば新名古屋火力発電所、ここはかつて東洋一の発電所といわれた規模だそうですがこの程度の火力発電所を複数建設して、浜岡原発の後継とする、というならばこれは納得できるのですが、民主党政権は水力発電に必要なダム建設を着工しているものを含め停止させ、加えて火力発電についてはCO2の25%削減を提示して必然的に原子力発電に頼らなければならない政策を強行しています。本来は、例えば今回の浜岡原発の停止要請と同時に全国にこれを補う水力発電所と火力発電所を増強するという発表はあってしかるべきでしょう。
原子力発電に頼らざるを得ない政策を行った現政権の原発停止命令、無計画に停止すればいい、というのはあまりに無責任ではないでしょうか。元々東海地震は、昭和東南海地震の発生兆候が観測されていたため、大きなプレート型地震である東海地震についても観測できるだろうとして監視が開始された巨大地震です。しかし、東南海地震や南海地震に対する予知が行われていないのと同様に、東海地震のほかにも危険な地域がある訳です、事実東北地方太平洋沖地震が発生しました。
脱原子力を国策として行うのならば結構、火力発電所はコンビナートに隣接している必要があり、ここが地震に揺られれば構造上長周期振動はタンクを破壊し、津波が油を後半にまき散らしてその地域は火の海です、ただちに危険な状況は生じます。水力発電所も結構ですがダムを更に増強する必要がありますし、ダムそのものも地震により破壊される可能性が考慮されるべきでしょう、巨大ダムの破壊は想定以上の被害をもたらし、こちらも直ちに危険です。地熱発電ですが、これがよく掲げられるのですけれども果たして言われているほどの電力を創出できるかが未知数、という難点があります、口で言うほど簡単ではない訳でして、それならば国策で地熱発電に関する研究予算をつけてはどうか、とも。全国一斉ボーリング調査を行えば毎年かなりの予算は必要になりますが、可能か不可能か未知数である物に頼るのは多分に投機的です。
とにかく、話が急すぎます。夏の電力不足には対応できるとか海江田経済産業大臣が行っていましたから、少なくとも夏までに停止させるつもりなのでしょう。浜岡原発停止の要請、と聞いて東海地震警戒情報が出たのかと焦ってしまいましたのは冒頭に記載しました通り。行きなり停止させろ、というのでは、たとえば、それならば代替火力発電所を建設した上で順次停止します、という選択肢もありますし、ね。ああ、これで静岡県や愛知県の工業生産が停滞するようになるのでしょうか、それともまた福井県あたりに原発を増やす政策でも採るのでしょうか、電力確保は国の責務の一つだと思うのですがね。
北大路機関