◆ゴールデンウィーク最終日の軍港情景
呉基地と海軍の街呉、散策紀行を本日は掲載します。通常の連休最終日、一日でこれだけ回れるとは、思いませんでした、天気も良かったですし、ゴールデンウィーク最終日の一日です。
ゴールデンウィーク2011、護衛艦いせ&元護衛艦ひえい呉基地周辺を散策するか、東日本大震災災害派遣が一段落して北吸桟橋一般公開再開となった舞鶴基地へ新型特急287系で向かうか、GW&GWということでジョージワシントンが戻ってきた横須賀基地へ向かうか、入念に検討を重ねました。
ヘリコプター搭載護衛艦いせ、の様子を眺めてみよう、ということで足を運んだのは広島県呉、毎年ゴールデンウィークには山口県の岩国基地で岩国基地日米友好祭があり、その関係で広島観光、という流れになっています。今年は岩国基地日米友好祭中止でしたが、それならば今年は呉を満喫だ、という流れになったわけです。
練習艦隊呉基地出航の様子、日曜日には東京港へ入港するようですが、練習艦あさぎり、がバースを離れるところです。例年の練習艦隊出航はもう少し盛大に見送り行事が行われるとのことですが、現在は東日本大震災という有事の最中、見送り行事も控えめとのことです。手前左側には練習艦かしま、が見えますがこちらも続いて出航してゆきました。
練習艦かしま満載排水量5400㌧、今回の練習航海は候補生とともに横須賀を経て東京港、そして北米への遠洋航海へ向かうようですね。そういえば、昨年の近海練習航海では、かしま、がトラブルにあってしまい、護衛艦ひえい、が練習艦隊司令官乗艦の旗艦を担っていた事を思い出しました。
呉基地をアレイからすこじまより撮影。前日夜にも撮影しているのですが、やはり晴れた青空のもとで撮影すると全然違いますね。ちなみに昨年十二月にも呉を訪れた当方ですが、あの日は雨天でした、雨に曇る詩的情景、とか書いてみましたが、やっぱり晴れていた方がいい写真に仕上がります。
潜水艦桟橋、手前に最新鋭の、そうりゅう型潜水艦はくりゅう、その向こうに護衛艦とね、左端に護衛艦せとゆき、背後に見える大型の艦船は、三月に自衛艦旗を返納し除籍された元ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、の姿です。この写真、実は1000時より桟橋が一般公開されるという事で、その待ち時間に撮影。
呉基地係船堀艦艇一般公開、毎週日曜日に第一回が0940~1000、第二回が1240~1300、第三回が1440~1500時に受け付けが行われていて基地に立ち入ることが出来ます。入りますと、はるな型ひえい、除籍後の姿を拝見することが出来ました。手前に見える内火艇は護衛艦いせ搭載、沖留の、いせ、と結ぶ内火艇ですが、新旧DDH、思わぬ取り合わせでしたね。
呉基地一般公開、この日は練習艦隊が出航した事もあり、少々艦船は少なめではあったのですが、護衛艦うみぎり、護衛艦さみだれ、が並んでいました。うみぎり、は満載排水量4900㌧、さみだれ、は満載排水量6200㌧ですが、並ぶとやはり大きさの違いに驚きます。この日の見学艦は護衛艦さみだれ、ですが御天気は五月雨ではなく五月晴、良かった。
さみだれ乗艦、一礼して艦上へ。艦橋に海賊対処任務用の防弾板が追加されていますね。むらさめ型護衛艦九隻のうちの六番艦で、ガスタービン推進のヘリ搭載艦で対空対水上対潜水各誘導弾を搭載している汎用護衛艦の系譜にあって本型以降は様々な近代的な能力が盛り込まれています。
むらさめ型を含む汎用護衛艦は、イージス艦以降の護衛艦の特色として、NBC防御力強化、ステルス性強化、データリンク能力強化、自動化による省力化強化等など様々な面で海上自衛隊の近代化を推し進めたのが特色、続く五隻のが、たかなみ型、最新の、あきづき型が建造中。
さみだれ、ヘリコプター格納庫内部。格納庫に黒い座席のようなものが取り付けてありまして、聞いてみますと搭載するSH-60K哨戒ヘリコプター用とのこと。SH-60Kは対潜機材等を機内に搭載していますが、これは取り外しが可能となっていて、取り外してこの座席を置く事で輸送任務に使える、東日本大震災災害派遣に合わせて搭載しているとのことでした。
護衛艦うみぎり、特設機関銃座。艦の後部、シースパロー艦対空ミサイル八連装発射器の周囲には防弾板に囲まれた銃座、海賊対処任務に備えて搭載されたものです。ここに12.7㍉重機関銃M-2を搭載するようですが、ちょっともう少し形状はどうにかならなかったものかな、と思ってしまいました。
見学を終えて桟橋に戻ります。この桟橋、もう少し前の方に足を運びますと、まだ桟橋に、ひえい、という文字が残っていたりします。また、看板なども塗りつぶした後ではあっても薄らと、ひえい、の文字が見えたり、三月までは現役艦でした、そんなことを少し思い出してみたりも。
うみぎり、機関銃座。艦橋の真横に配置されています、ここに二門装備するようでして、この左右と先程の艦尾の銃座と併せ、六門の重機関銃を搭載するのですね。M-2は射程1000㍍、毎分600発を射撃可能、頑丈で信頼性の高い機関銃で海賊船を含む小型船舶の肉薄に有効に対処できる装備。
呉基地のバースは、浮桟橋となっているとのことですが、こうやってみてみると一目瞭然ですね。潮の干満差が激しい事による措置らしく、この関係で大型艦の接岸は難しいと言われてしまいました。いせ接岸に際しては世界の艦船誌をみますと反対からも曳船で押していまるようすが掲載。潜水艦桟橋は浮桟橋ではないようですけれどもね。
見学時間は1100時まで、とのことで見学を終えて正門へ戻りますがその途中でも一枚。掃海艇みやじま、あいしま、が停泊しているのが見えますね。両方とも、すがしま型掃海艇で満載排水量590㌧、ペルシャ湾機雷掃海任務の教訓から最新の機雷に対応するべくフランス製掃海器具を搭載したのが本型の特色、もう一つは真後ろが見えるように煙突を二本に分けて両舷に寄せたのが特色ですが、あまり見えなかったようです。
輸送艦くにさき、先日横須賀に行った時には吉倉桟橋に補給艦ましゅう、とならんで停泊していました、東日本大震災災害派遣から帰ってきていたのですね。満載排水量14000㌧、エアクッション揚陸艇二隻を収容する本艦含め、おおすみ型輸送艦三隻は災害派遣におけるもっとも重要な自衛艦の一つに挙げられます。
呉湾観光遊覧船より望見する江田島基地、海上自衛隊幹部候補生学校等がある教育の中枢。この遊覧船、運航しているのを当日現地で知りました。船は見晴らしのいい新型、毎週日曜日に運航、大和ミュージアム前に乗船券売り場があって、1110時、1225時、1340時に運行、気になるお値段大人一人1500円。運航はバンカーサプライという会社で70分に渡り海上自衛隊OBの方が解説をしてくれまして、もう見たいところが全て経路に入っています。
ヘリコプター搭載護衛艦いせ、沖留の護衛艦いせ、を洋上から撮影します。満載排水量19000㌧、全長197㍍、幅33㍍、ガスタービン四基の出力100000馬力により速力は30ノット、Mk41VLSに発展型シースパロー対空ミサイルとアスロック対潜誘導弾を搭載、砲は20㍉CIWSのみですがその分ヘリコプター約10機を運用可能な対潜中枢艦です。
いせ、遠景。この後遊覧船は速力20ノットという快速で音戸瀬戸を回り、平清盛に所縁ある場所などを巡ったのですが、なるほど来年のNHK大河ドラマが平清盛だったのですね、呉ではこの機会にと軍港の街という一点に歴史の街、という一点をより強調してみようとしているようでした。
はるしお型潜水艦。水中排水量3200㌧、全長77㍍の通常動力潜水艦で、複殻構造涙滴型形状を採用、長魚雷に加えて魚雷発射管からハープーン対艦ミサイルの運用が可能であるとともにTASS曳航式ソナーを搭載して索敵能力強化にも努めている。同型艦は1990年から7隻就役しているのだけれども、順次練習潜水艦へ種別変更を経て除籍中。
おやしお型潜水艦。1998年から2008年までに11隻が建造された海上自衛隊の主力潜水艦。水中排水量3500㌧、部分単殻構造葉巻型形状を採用している通常動力潜水艦で、平面アレイソナーの採用により索敵能力をさらに向上させているとともに船体に無音響タイルを装着して音響ステルス性能を高めているのが特色、艦橋の旗は潜水隊司令旗。
潜水艦救難艦ちはや、今月末に和歌山港で一般公開の予定。満載排水量6900㌧で船体内部に浮上できなくなった潜水艦を救助する深海救難艇DSRVと無人潜水装置ROVを搭載している。まずROVで潜水艦の位置と状況を把握してDSRVを投入する、という運用で任務状況は救難指揮所RICにより効率的に把握され指揮されるとのことです。病院船としての能力も高いとか。
そうりゅう型潜水艦はくりゅう、今年三月に就役したばかりの最新鋭艦。アナウンスで、はくりゅう、とはっきり言っていたのでつい最近まで艦番号を記載していたのかな。水中排水量4200㌧、AIP非大気依存方式の潜水艦で、従来の通常動力潜水艦ほどバッテリーを気にしなくてよくなったのが特色、最新鋭艦。
護衛艦とね。桟橋を一つづつ遊覧船は回ってくれるのが嬉しい。あぶくま型護衛艦六隻の最終艦で沿岸警備用小型護衛艦として最後に建造された護衛艦、この艦以降は大型護衛艦の建造に一本化されている。満載排水量2900㌧、余り小さくないのは御愛敬。先ほどまで艦長交代行事を行っていたようなのですが、この後、福島県沖へ災害派遣に向かうとのことでした。
護衛艦せとゆき。はつゆき型護衛艦の11番艦として1986年に就役した汎用護衛艦。満載排水量4200㌧、はつゆき型は対空対水上対潜各誘導弾とヘリコプターを搭載しガスタービン推進方式を採用した初めての汎用護衛艦で、本型12隻の建造を以て護衛艦隊の能力を大きく向上させた護衛艦。
元ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、の周りも一周してくれました。まだまだ使えると思ったのですが、聞いてみますと蒸気タービン推進艦は多数の蒸気管を有していて、これが老朽化して破裂すると付近乗員の生命に危険を及ぼすほどの大事故になるそうです。はるな型最後の一隻、御苦労さまでした。できれば記念艦として陸で保存してほしかったですね。こうして永久の別れを告げます。
呉地方総監部第一庁舎一般公開。呉鎮守府が置かれた1906年建築、赤煉瓦の歴史的建造物です。最初の鎮守府庁舎は1886年に建設されたのですが1905年に芸予地震で倒壊、新しく建築したもので1945年には米軍機の空襲で損傷したのですが修理し戦後は占領期に英軍が使用、1954年から海上自衛隊が使用しているとのことです。
呉地方総監部から眺めた護衛艦とね出航の様子。福島県沖に派遣されると聞いたのですが、一緒に並んでいた護衛艦せとゆき、も間もなく災害派遣として出航を行うべく準備しているとのことでした。東日本大震災との戦い、ここは拠点であるとともに災害派遣の最前線なのだなあ、と思った瞬間。
海上自衛隊呉史料館、地方総監部に続いて足を運んだのはここです。通称鉄の鯨ミュージアム。潜水艦あきしお、が整備されそのまま陸上におかれている史料館、世界でも潜水艦を陸上においている博物館はそんなに多くないのでして、もちろん日本では唯一。運営は海上自衛隊なのですが、なんにしても実物の潜水艦の迫力に毎回度肝を抜かれますよ。
展示スペース、海上自衛隊の歴史や掃海任務について、また潜水艦における生活などを展示により知ることが出来ます。写真は掃海艇のスペース、ここではOBの方が解説をしてくれまして、なんと元自衛艦隊司令官も解説ボランティアとして分かりやすく解説してくれます。
潜水艦あきしお艦内。開館直後は余りにも多い来場者で、潜水艦内は狭い事もあり写真撮影は禁止だったのですが、現在は写真を撮る事が出来ます。潜望鏡を覗いてみたり、操舵装置に座ったり、気分は眼下の敵シュトルベック艦長か、はたまたレットオクトーバーのラミウス艦長か、はたまたイ57の河本艦長か、いや轟天の神宮司大佐か、一作を除きどれも古い作品なのは気のせいだ。
そんなこんなで、一日中呉を満喫して呉線で帰路につきました。練習艦隊出航→アレイからすこじま→呉基地一般公開→護衛艦さみだれ一般公開→呉湾観光遊覧船→呉地方総監部第一庁舎一般公開→呉史料館鉄のくじらミュージアム、一日でこれだけ回れたのですからね。
江田島基地も時間があれば行きたかったのですが、残念ながら一日でこれ以上は無理でした、また来よう、と思いつつ遠ざかる呉基地の艦艇を眺めていました。当日呉基地で御世話になりました皆様、ありがとうございました。呉基地のほか、舞鶴基地も週末桟橋一般公開が再開されたとのこと、皆様も興味のある方は足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
広島駅からは新幹線ひかりレールスター号、出来れば九州新幹線みずほ号か、さくら号、に乗りたかったのですが指定席の人気は凄い、そういうことで、ひかりレールスター号指定席がとれましたので、九州新幹線指定席と同じく2×2の快適な座席、こちらで山陽新幹線を帰途につきました。次回こそ江田島へ、次回こそ九州新幹線で、行きたいですね。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)