◆防災という受け入れやすい多国間協調
防衛力の充実と戦力投射能力の整備が結果的に次の大規模災害への対応能力を整備させる、と過去に記載しましたが、時事通信に以下のような記事がありました。防災という形で対応能力を高め、国内の災害に備えるとともに世界の安定に寄与する、という視点はあって良いのかな、と。
同盟深化で災害対応力向上=「アジア太平洋の安定に重要」-米高官 【ワシントン時事】米国防総省高官は3日、日米両国の同盟深化に関し、東日本大震災での自衛隊と米軍の協力の実績を踏まえ、両国がアジア太平洋地域の大災害に、より効果的に対処できるよう連携を深めていきたいとの考えを示した。 同高官は、日米がアジア太平洋地域で起きる災害への対応力を向上させることが「地域の安定に重要だ」と指摘。外務、防衛担当閣僚による次回の安全保障協議委員会(2プラス2)で改定する共通戦略目標の中に、人道支援と災害対処の分野で中心的な役割を果たすことが盛り込まれると示唆した。(2011/05/04-17:35)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011050400363
防災という観点から自衛隊を含む日本の展開能力を維持して、アジア太平洋地域における次の大規模災害に備える、この大規模災害は日本国内である可能性もあるのですが、こうした視点。同盟という呼称がつかわれているようにその主体は自衛隊という軍事機構と米軍という軍事機構を主体としたものになるのですが、アジア太平洋地域という広域を念頭にその対処能力を整備するという事で、結果的に自衛隊の展開能力が強化され、従来型有事を含む緊急事態に対応可能な能力が整備できる、という見方も出来ます。また、防災に軸を置くという事で軍事機構が関与する場合であっても諸外国に対して軍事的なもの以上に多国間協調を受け入れやすくする、レジームとしての有用性を高める期待が出来ます。
抑止力という観点から防災という能力向上には意義があります。日本に対する脅威は主たる脅威は現時点では大災害、という事になっていますがそれだけではありません。同時に他国からのわが国領域に対する脅威、同時にわが国海上通商路に対する脅威、同時にわが国の経済活動に必要な地域に対する安定の維持という問題、軍事的な問題だけでもこれだけの問題点が挙げられるわけで、防災という観点からでも展開能力を維持するということは結果的にこの問題への対応能力を維持することが出来るのですし、多任務対応能力に重点を置いた装備を調達することで両立が可能です。また、日米が安全保障問題、災害に対応する観点からでも一致した行動を行う決意という事は必然的に地域における抑止力としても機能するでしょう。
防衛という観点からは想定外の国内事態に対応できる能力を海外での運用という想定の水準をあらかじめ高くすることにより保持することが出来ます。偵察ポッドを搭載した戦闘機や無人機は今回の震災では情報収集に寄与しましたし、早期警戒機は航空管制の手段として運用、ヘリコプターや輸送機は重要な輸送手段として不可欠であり、浮橋から架橋装置までの各種重施設機材はもちろん、不整地突破能力の高い装甲車までもが今回の災害派遣では活躍、何故か政府は活用しませんでしたが護衛艦の指揮通信能力、護衛艦から小型艦艇に至るまで、その能力は如何なく発揮されました。場合によっては多国間関係の地域的枠組において防災という視点を強く盛り込んだ体制を構築することで、結果的に日本の安全保障に寄与させる、という視点は考えられても良いのかもしれません。
次の災害に行かに備えるか、という視点以外に、昨日掲載した原発からの脱却を国是とするならばエネルギーの安定供給を直接世界の不安定地域に展開して保持する必要が生じてくるのでは、という視点を提示したのですが予防外交と軍事力による戦争抑止という意味で昨日の提案ほど踏みこまない範囲内で選択肢を提示できるのではないか、ということ。そして余裕が無い事により今回の災害派遣が重大な問題を引き起こしたのですから、これを補う意味で意味があるだろう、と考え、補足的な意味で本日掲載してみました。
HARUNA
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