◆英上空航路に噴煙、北欧方面への影響可能性も
火山の国アイスランド、その南東部にあるグリームスボトン火山が噴火しました。この噴火に伴う火山灰の影響によりイギリス上空の航空航路が封鎖となり、今後の気象条件によっては北欧地域への影響も考えられるとのことです。AFP通信からの引用。
欧州で252便欠航、アイスランド火山噴火 航空管制機関 ・・・【5月24日 AFP】21日に噴火したアイスランドのグリームスボトン(Grimsvoetn)火山の噴煙がスコットランドと北アイルランド上空を覆った影響で、24日朝の欧州の空の交通は乱れ、252便が欠航した。 欧州の航空管制調整機関ユーロコントロール(Eurocontrol)のブライアン・フリン(Brian Flynn)氏がツイッター(Twitter)で明らかにした。これによると、噴煙は24日中に「スカンジナビアやデンマーク、ドイツ北部の一部にかかる可能性がある」という。
さらにフリン氏は、「噴煙はフランスやスペインに向けて南下する可能性もあるが、週末にかけての天気予報がまだ正確でないので、予測は難しい」と述べた上で、「この1年で2度目の欧州全域での大規模な航空交通の混乱になるかもしれない」との見解を示した。 2010年4月にアイスランド・エイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajokull)氷河の火山が噴火し、欧州の空の便は大きな影響を受けた。(c)AFP ttp://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2802353/7258648?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics
本日、全日空HPを見ましたらば欧州での火山活動における国際線への影響、という情報が出ていたため、随分前の話だなあと思っていたのですが、今の話とのこと、慌てて確認しましたらばアイスランド南東部のグリームボトン火山が噴火し、火山灰による航空航路への影響が出ている事を遅まきながら知りました。欧州国際航空航路への火山活動による影響は、昨年に同じアイスランドで発生しましたエイヤフイヤトラヤヨークトル火山噴火に伴う航空路への影響を思い出させるものです。南東部での噴火ですので火山灰はアイスランド国内ではなく近隣の北欧諸国へ拡散して影響を及ぼします。
火山活動と言えば、噴岩の直撃や建築物への破壊、火砕流や火砕サージによる地域の破壊や火山性ガスの影響等が思い浮かべられますが、実のところ火山噴火に伴う被害は火山灰によるものが最も大きかったりします。そういうのも、成層圏などに吹き上げられた火山灰は長期間に渡って日照量の減少などの被害を引き起こし、日照不足による農業への打撃や火山灰の降下地域では植物そのものが覆われる規模の場合呼吸が出来なくなり枯死、これが長期的には土石流の要因となるなどして長い期間被害を及ぼすわけです。このため、火山活動の大きさを示す火山爆発指数は噴出物の総量を示すほどですからね。
さて、この中で直接的に大きな被害を受けるのは、つまり即座の危険、知う意味で重大な影響を受けるのは航空機です。火山灰の灰雲は、モクモクと湧き上がる火山灰ならば航空機でも見えそうなものですがエアゾル化したものについては肉眼では薄雲と見分けがつかず、機上レーダーにも映りません、航空機に搭載されている前方赤外線監視装置や気象レーダーにも雲と明確な違いは分かりにくく、航空機が灰雲と知らないまま遭遇し、突入してしまった事により極めて重大な影響を受けてしまう事は過去に幾つか事例があります。
エアゾル化した火山灰へ航空機が飛びこみますと、まず細かい火山灰の粒子に航空機が高速で突入することによりガラス部分が研磨され、磨りガラス状になって操縦士の視界を奪います、続いて火山灰はエンジンに飛びこむとエンジン内の高熱により火山灰は溶岩と同じ液体に戻るのですが、エンジンを出た時点で急速に冷却され固体化しエンジンの通気を閉鎖してしまいエンジンのタービンブレードを回転不能の状態に追いやります。視界と動力を奪い、しばらくすると火山灰は速度などの情報を得るためのピトー管に詰まり、計器類をも操縦士から奪う訳です。
このため、火山灰の危険がある状況では旅客機単独の能力では火山灰を探知できないため回避できないことから航空機を運航させることが出来ず、今回のような状況となるわけです。もっとも、火山灰の影響による空港の閉鎖、というのは日本でも普通に起きた事があるのですけれども。現時点ではイギリス上空のスコットランド地域と北アイルランド上空に影響が出ているとのこと、今後の気象状況によってはドイツ北部やデンマーク、スカンジナビア半島にも影響が出る可能性があるとされており、今回のグリームボトン火山噴火は、エイヤフイヤトラヨークトル火山と並べられ報じられているのですけれども、火山活動はどの程度継続されるのか、また噴出量は火山爆発指数で計測した場合どの程度に至るのかは現時点で未知数、情報がないのですけれども、今後の動静は慎重に見守りたいですね。
HARUNA
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